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LNJ Logo 現地レポート(その2):大阪・関西万博の現場で起きていること
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「水がぬるぬる」ウォータープラザの水質安全性に疑問符

かわすみかずみ


万博公式ブログより/ウォータープラザ側遠景・拡大(撮影日:2025年3月7日)

 大阪市在住の方から、「ウォータープラザの水質が気になる」という声をいただいた。調べてみると、大阪市や参加企業のずさんな管理体制や隠ぺいが見えてきた。ウォータープラザの水質管理について報告する。

 大阪・関西万博は開幕前から多くの課題が指摘されている。中でも夢洲が現役のごみ処分場であるという問題は大きい。夢洲は1区から4区まで区画され、1区が産業廃棄物・一般廃棄物の処分場、2区と3区は大阪市内の川の底にたまった土砂を入れている。4区はコンテナ・ターミナルとして活用されていた。2区の土砂には環境汚染による規制が始まる以前のものも含まれ、高度経済成長期に企業が流し続けた有害物質を含むものも埋められているという。

 万博で、1区はバス・ターミナルなどになり、2区はパビリオンが建つ会場に変わった。3区では現在カジノを建設中だ。

 万博会場内の『ウォータープラザ・つながりの海』と言われる水辺の場所は、開催前は1区で出た有害物質を含んだ水を薬剤で基準値以下に中和し、海に流す際の通路だったと言われている。工事中は水を抜いた状態にしていたようだが、2025年2月に海水をポンプで注入し、開催直前に水辺が広がった。日本中学生新聞のXの投稿で、つながりの海に排水溝と思われるパイプが出ていることがわかる。

 万博に行った人が動画やXであげている投稿の中には、「ウォータープラザの水が汚い」「水がぬるぬる」などと書かれたものが複数あった。

ウォータープラザとはどんな場所なのか

 万博のため、夢洲を万博協会に貸し出しているのは大阪広域環境施設組合だ。同組合は、大阪市・八尾市・松原市・守口市で夢洲の共同管理を行う一部事務組合。万博の前から1区で出た有害物質を含んだ雨水などの処理を行ってきた。処理された水は現在のつながりの海に放出される。大阪港湾局はつながりの海に出ている排水溝の出口と排水溝内の水について定期的に検査を行っている。有害物質の種類によるが、多いもので月に1回検査する。

 場所の確定を行うため、大阪広域環境施設組合(以下施設組合)に電話した。1区で処理された水は現在のウォータープラザを通ってつながりの海に放出されるのか、と聞くと、担当者は回答を二転三転させた末に、ウォータープラザを通っていないと言った。だが、つながりの海とウォータープラザは水の行き来があるため水質はほぼ同じであると認めた。

 つまり、ウォータープラザには基準値以下の有害物質が含まれている可能性が高く、中和剤も含まれているということだ。

事前検査は行われたのか?

 ウォータープラザ・つながりの海に有害物質が含まれている可能性があることを大阪市が知らないはずはない。万博開催前にウォータープラザ・つながりの海の水質検査を行って安全性を確認する必要がある。だが、大阪市港湾局・保健局ともに事前に検査を行なっていないと回答。夢洲を実質的に貸し出し、万博協会に対して管理責任を持つ施設組合は、万博協会に対して、水質管理や検査の指導を行ったことはないという。

後手後手の対応

 市保健局は情報公開請求への回答として、2025年3月31日に作成した「2025年日本国際博覧会興行場及びその他環境衛生関係施設等監視指導計画」をメールで送信してきた。この中で保健局は、ウォータープラザの水質基準を示す法律がないため水浴場(開設前)の水質調査における水浴場水質判定基準等・レジオネラ症防止指針の2つの法律を根拠に検査を行うと書かれている。

 水浴場の指針は海水浴場に対するもので、検査項目は残留塩素濃度・PH・糞便性大腸菌群など4項目と少なく、有害物質の検査は含まれていない。保健局に問い合わせると、「保健局では有害物質などの観点による検査は行いません」と答えた。

 検査結果を公表するかどうかを問うと、「公表しません」という。来場者自らの安全に関わる情報を公表しないなら、来場者は自らの安全に関する情報を得ることはできない。

 ウォータープラザの水質検査については5月から始めるというが、すでにウォーターショーが毎日行われている。周囲の施設に水が飛んで塩害が発生したという苦情も出ている。

 指導計画では万博開催期間中1回以上の検査を行うとするが、1回で充分とは思えない。基準値以下とはいえ、数種の有害物質が含まれる水を海水浴場の開設前の基準で測ることは有効なのか?と

レジオネラ菌の危険性

 レジオネラ菌はため池やお風呂などに繁殖しやすい特徴があり、加湿器にたまった水やお風呂のろ過処理装置などを通じて感染することが多い。エアロゾルという微細な飛沫で感染する。

 ウォータープラザのようなため池では、夏に水温が上がり、レジオネラ菌が発生しやすくなる。厚生労働省のホームページでは「特に7月、9月に多く」と注意が呼びかけられている。

 ウォータープラザでは、ダイキン工業株式会社とサントリーホールディングス株式会社が共同で開催する水上ショ―『アオと夜の虹のパレード』が毎日開催されている。ダイキン・サントリーに水質検査をどのように行っているかをメールで問い合わせした。ダイキンは、「万博協会にお尋ねください」と回答。サントリーは「万博協会と相談して回答しますので、しばらくお待ちください」と返信してきたが、5月24日現在回答はない。

 水上ショーで水しぶきが上がれば、レジオネラ菌のエアロゾル感染の可能性は高まる。水質検査が行われない状態で、安全性が確認されないまま水上ショーが行われていることは危険ではないだろうか。

横山市長に質問

 5月22日、横山英幸大阪市長に水質検査について質問した。水質検査が行われないまま水上ショーが行われていることは危険ではないか、と問うと、市長は「水上ショーの水を被るということですか? そんなことはないと思います」と答えた。さらに「いま現在、ウォーターショーの水で気分が悪くなったひとはいませんが」と問題はないという態度を見せた。

 半年間という短い期間であることや、カジノのためにインフラを作る口実に開催した万博であることが、ずさんな管理の原因という見方がある。強行開催やずさんな管理体制が明らかになりつつある。大きな事故が起こらないことを願うばかりだ。


Created by staff01. Last modified on 2025-05-26 18:43:59 Copyright: Default

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