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沖縄の写真家・石川真生さんの映画を観て | ||||||
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小泉雅英
そんな暮らしの中で、日常的な意識を異なる次元に転換し、普段と全く別の時間を与えてくれるものが、私には主に映画であり、音楽であり、演劇などの芸術(Arts)である。それらの中で、異なる時間を過ごすことで、気分が転換し、回復した新しい意識で、再び日常の営みに立ち向かって行ける。だから、忙しくとも、お金が乏しくとも、そんなArtsに接したくて、何とかやり繰りしながら、出かけている。 一昨日(10/10)は、たまたま得た情報で、恵比寿に出かけ、新しい作家と作品に出会った。砂入博史(すないり ひろし)さんという映画監督。全く知らなかったが、彼の作品を2本、『オキナワより愛を込めて』(2023年/101分)と、『オキナワ・フィラデルフィア』(2022年/56分)を観た。いずれも写真家・石川真生さんを中心に、彼女の同僚、友人、知人、恋人たちとの関わりと人生を描いた、類い稀なドキュメンタリーだ。この2作品と、現在制作中の「沖縄の怒り」をテーマに、米軍犯罪など「暴力」にも切り込んだ作品と併せて、3部作を構想しているという。 最新作の『オキナワより愛を込めて』は、石川真生さんが、1971年11月に至る復帰運動への参加体験から、活動家ではなく、写真を択び、唯一無二の写真家と成っていく過程が、彼女の作品、過去への再訪、独特の語りを通して、浮かび上がる。石川真生という写真家は、自らの人生、黒人バーの同僚女性たちの人生、黒人兵の人生、それらの現在進行形の人生の瞬間を、「生活しながら当たり前に」スナップショットとして撮り、それを一枚一枚、写真に定着した。そこに写し撮られた真実とは何か。これら膨大な数の写真を見る者は、彼女の怒りや、歓びや、哄笑の先にある真実について、その意味を問われる。砂入監督の言うように「とりあえずぶつかってみて、後にそれが何だったのかを想像し、思考を巡らせる石川さんは、ある意味で詩の世界を生きているとも言え」る。その虚飾のない、現在進行形の写真家、石川真生の人生の姿を、この映画はよく捉えている。必見の作品だ。 『オキナワ・フィラデルフィア』は、真生さんの元恋人の息子さんと、その家族を描いた作品。彼を通して、その父が真生さんを、いかに愛していたか、沖縄に戻りたがっていたかが語られ、切ない思いにさせられる。が、それだけではなく、彼の母親、つまり真生さんの恋人だった男の妻の語りが面白い。ここには、笑いもあり、生活者の逞しさも感じられた。この作品を通して、ベトナム戦争に駆り出された米兵の現実、とりわけ黒人兵の現実を、改めて考えさせられた。真生さんの言う「黒人兵は大好きさ、米軍は嫌いだよ。それで何が悪い」という言葉の真実に、少し触れられたような気がする。 砂入監督についても、少し記しておきたい。上映後のトークで、彼の言葉を聴いたが、これらの作品を制作するに当たっての、真摯な態度と謙虚さに、先ずは感じ入った。それで、帰りに受付に寄って、パンフレットを買ったが、その時、監督が「サインしましょうか」と、声をかけてくれた。それで、ソファに座り、少し話したが、とても気さくで、温かい人間性を感じた。あ、このような人柄だから、真生さんが、自身の人生を記録することを託したのだろう、と思えた。 帰途、パンフレットを見ると、そこに監督自身の映画作りについて、次のような発言があり、感嘆しながら読んだ。次回作を含む、「オキナワ」3部作の完結が楽しみだ。 「私がこの映画作りで気をつけたのは、自分の主観で歴史や政治を謳わず、全てをローカルの人たちの言葉から出たもののみで完結するということでした。石川さんの普遍的な表現・言葉に対峙して、彼女の卓越したお喋りとストーリーが内包する生きた言葉や経験の裏に見え隠れする政治や社会の文脈を示すことに注力すれば、それで十分だと感じたからです。(略)包括的にまとめたり、僕がしゃしゃり出てきて何か言ったりする、ということはやってはいけないと思ったんですね。沖縄にとって私は部外者なので、そのような姿勢がポストコロニアリズム的な1つの方法論だと考えて臨みました。」(ムーリンプロダクション発行「パンフレット」p.10) (2024/10/13記) Facebook↓ Created by staff01. Last modified on 2024-10-14 03:25:24 Copyright: Default |