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LNJ Logo 女闘労倶楽部:またか!キステム裁判でも不当判決!/東北警備会社の非正規差別事件
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 NTT関連の警備会社「キステム」東北支店で働く契約社員Tさんは、「パート有期雇用労働法」を根拠に格差是正を求める裁判を、2022年に盛岡地裁に起こした。「女闘労倶楽部」(旧メトロコマース支部)は一貫してキステムのたたかいを支援をしてきた。4月26日にその一審判決があった。「女闘労倶楽部」のホームページから判決内容を、以下、紹介する。(レイバーネット編集部)

またか! キステム裁判でも不当判決!


 4月26日(金)13時15分、盛岡地裁301号法廷。傍聴席は数人の記者と原告の支援者でほぼ満席だが、会社側の被告席には弁護士すら来ていない。定刻になり柵木(ませぎ)澄子裁判長・佐々木大慧判事補・猪狩翔太郎判事補の3人が出てきたと思ったら、

主文 1、原告の請求をいずれも棄却する
   2、訴訟費用は原告の負担とする
 事実及び理由は判決文に記載したとおり
 と、裁判長は小声で言うと数秒で引っ込んだ。

 主な棄却理由は、〇業務内容の違いがある 〇残業時間に差がある 〇正社員登用制度を利用しなかった。

○業務内容の違い(所長の補助業務)

 Tさんは証拠として自ら作成した仕事の比較表(2019年度に作成したもの)も提出した。証人尋問で「仕事の比較表には書かれていないが、その他の業務を多種にわたりこなしていた」と、内容を丁寧に説明していたのを、東京から駆けつけた私たち4人はよく覚えている。
 原告が仕事の実態について詳細に述べているのに対し、会社側の主張は就業規則・会社の制度・残業時間数とか、形式的なことばかりで正社員の労働実態が見えない。しかし判決は、原告の証言には証拠がないとした。原告が提出した仕事の比較表には所長の補助業務が書かれていないから、正社員が行っている所長の補助業務を行なっていないという会社側の主張を認め、業務内容に相違があるとした。
 Tさんは2021年(提訴前)に正社員から以下の情報をもらっている。
『(パート有期労働法8条・9条が施行されたころから)東北支店長は東北管内の事務 担当正社員に対し「マルチスキルを身につけるように」「管制も事務の仕事ができるよ うに」「事務も管制の仕事ができるようにと」せかしている。理由は同一労働同一賃金の件でTさんとの差をつけるため』だと聞いた。
 比較表を作った 2019年には、事務担 当正社員は管制の仕事も所長の補助業務も、まだやっていなかったのだ。2019年に作成されたTさんの比較表に、所長の補助業務が載っていないのは当然だ。

○残業時間の差

 判決は、残業時間が正社員とTさんと比較した場合、Tさんが圧倒的に少ないから正社員よりも責任が軽いとした。会社側の主張を鵜吞みにせず、残業時間の差に限らず労働裁判は労働の実態をみるのが大前提なはず。

○正社員登用制度を利用しなかった

 Tさんは家庭の事情があり、利用できなかった。理由は賃金だ。正社員に転換した直後の1年間の給料は低い。しかもこの会社は正社員の副業を認めていない。
 Tさんは会社とのダブルワークで得ている毎月の収入と、正社員に転換した直後の収入とを比較すると、ほとんど変わらなかった。毎月の出費は待ったなし。年2回の賞与は半年ごとで、ダブルワークで家計を回していることを考えると、今は断念せざるを得なかった。その後Tさんは、やはり正社員登用制度を利用したいと所長に伝えたが、今度は相手にされなかった。

 判決は「正社員登用制度は実際に機能しているため、契約社員は同制度によって正社員との賃金の相違を解消する機会がある」とし、正社員になれば賃金格差が解消されたかも知れないのに希望しなかったから労契法違反にはならないと結論づけた。
 Tさんは契約社員と正社員との賃金格差があるから、是正を求めてパートタイム有期雇用労働法8条・9条を根拠に提訴したのだ。裁判長は問題をすり替えている。
 人にはそれぞれ契約社員になった理由がある。正社員になる道はあっても家庭の事情でその道を選べない非正規の人たちは多い。そう言ったところを加味すべきではないのか。この2年間、裁判官はTさんのナニを見て来たのか。この判決は労働者の訴えも実態も完全に無視している。労働裁判で労働の実態を見ずに正しい判断が出来るのか。

・・・・・・・・・・・・・・
 Tさんは(株)キステムという警備会社で契約社員として今も働いている。
 2012年2月の入社時から6年かけて、時給を700円から950円まで引き上げさせ低賃金と闘ってきた。その後、契約社員となり週5日フルタイムで働いているが賞与はいっさい支給されていない。事務担当正社員と同じ仕事をしているのに、この待遇差はおかしいと許せなかった。
そして2022年1月、同一労働同一賃金の実現を求めて非正規労働者にも賞与を出せと盛岡地裁に提訴した。
 Tさんは判決に対し、「判例を見たり読んだりしてきたから覚悟はあったので・・。主張は間違っていないと今でも思っている。これからも闘っていきたい」と、まったく揺るがなかった。

2024年5月8日、仙台高裁へ控訴した
東北で声をあげたTさんとともに闘おう!


Created by staff01. Last modified on 2024-05-25 08:22:00 Copyright: Default

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