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LNJ Logo いわき出身の詩人と歌手によるライブ「いわき市小名浜ー13年目の春を歌う」開催
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報告 ジョニーH

 3月30日練馬区江古田のギャラリー古藤に満員の観客が集まり、 福島県いわき市出身のフォーク歌手イサジ式と福島県いわき市在住の詩人斎藤貢のジョイントライブ「いわき市小名浜〜13年目の春を歌う」が行われた。

 このイベントを企画してした佐藤敦子さんの挨拶の後、福島県いわき市出身のフォーク者イサジ式さんがトークとともに次の4曲を歌った。 ♪小さな歌 ♪帰らない街 ♪ちょいと歩いてみようか ♪冬のノオト

 続いて、福島県いわき市在住の詩人・斎藤貢さんが、高校の同級生であるイサジ式さんの歌の解説と.13年前の地震と津波と原発事故の様子を語った。斎藤さんは、当時、福島県立小高商業高校校長の立場で、避難者の対応を必死でしていたそうだ。

 福島第一原発の水素爆発直後に、広島から来ていた日本赤十字の職員が避難者よりも早くさっさと逃げたことや、未だに福島に帰れない避難民が2万人以上いること、放射能汚染水を処理水と言わせることで、真実を知りたい人たちと、汚染村という風評被害を避けようとする地元の人たちの分断の愚かさなどについて語り、次の詩を紹介し朗読した。

 チェルノブイリ原発事故について書かれ福島原発事故を予言警告したかのような、若松丈太郎の「神隠しされた街」 斎藤貢自身の「遠い春」「夕焼け売り」

 休憩後、再び、イサジ式さんが8曲歌った。

 ♪パレードが行くよ ♪水は誰のもの 土は誰のもの ♪さざなみの歌 ♪ノーガンス ♪夕焼け売り ♪今宵君が歌うのは ♪どこへ行くのか ♪重荷を下ろすとき

 詩と歌で伝え続ける二人に観客は惜しみない拍手を送った。 会場には「夕焼け売り」の詩の朗読をしている劇団もっきりやの姿も見受けられた。

夕焼け売り 斎藤貢

この町では もう、夕焼けを 眺めるひとは、いなくなってしまった。 ひとが住めなくなって 既に、五年余り、 あの日、 突然の恐怖に襲われて いのちの重さが天秤にかけられた。

ひとは首をかしげている。 ここには 見えない恐怖が、いたるところにあって それが ひとに不幸をもたらすのだ、と。 ひとがひとの暮らしを奪う。 誰が信じるというのか、そんなばかげた話を。

だが、それからしばらくして この町には 夕方になると、夕焼け売りが 奪われてしまった時間を行商して歩いている。 誰も住んでいない家々の軒先に立ち、 「夕焼けはいらんかねェ」 「幾つ、ほしいかねェ」 夕焼け売りの声がすると 誰もいないこの町の 瓦屋根の煙突からは 薪を燃やす、夕餉の煙も漂ってくる。

恐怖に身を委ねて これから、ひとは どれほど夕焼けを胸にしまい込むのだろうか。

夕焼け売りの声を聴きながら ひとは、あの日の悲しみを食卓に並べ始める。 あの日、皆で囲むはずだった 賑やかな夕餉を、これから迎えるために。


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