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LNJ Logo 〔週刊 本の発見〕『目を覚まそう!Reveillons-nous』(エドガー・モラン)
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毎木曜掲載・第322回(2023/11/9)

101歳、フランス哲学者の警告

『目を覚まそう!Réveillons-nous』(エドガー・モラン、2022年)評者:根岸恵子

 エドガー・モラン(写真)といえばフランスの哲学者で社会学者として有名だが、そればかりではなく1961年に『ある夏の記録』でヌーヴェルバーグの映画監督として知られる。物事を諸学問の領域から芸術的思考までの境界を超えた超領域性によって捉え、その広範で深い洞察力によって書かれた著作の数は多岐多様な分野に渡り、それぞれに影響を与えてきた。

 『目を覚まそう!(私が邦題をつけました)』は1921年生まれの彼が101歳で書いたもの。現代性を持った社会問題、Covid-19のパンデミックへの脅威を取り上げ、戦争への危険性を危惧している。今ならパレスチナ問題をどう切り込むだろうか。本誌は小冊子で100ページも満たない。邦訳が出ているかわからないが、多くの人々に読んでほしいという意思が伝わる作りになっている。

 これは2010年に出版されたステファン・エセルの『Indignez-vous !』(邦題 怒れ!憤れ!)を彷彿とさせる。これも薄い小冊子で安価で誰でもが読めた。実はこの本を仲間内で出版しようと相談していた。ペラペラの紙で誰でも手にできる様にして。邦題は『怒りなさい!』とまで決めていたのに、なんと版権を買ったのは日経だった。エセルの意思を逆撫でする行為だと、当時は憤慨したものだった。

 この『Indignez-vous!』は2011年にスペインのマドリッドで起きた「M15運動」の原動力になったと言われている。その運動が同年9月に始まったオキュパイ・ウォールストリートに伝播したということは以前この書評欄にも書いた気がするが、その影響は99%を自認する人々を立ち上がらせるのに十分だった。運動はその後も気候変動やさまざまな運動にそのアイディアが継承され、今世界各地で行われているパレスチナのデモでもその精神は引き継がれている。

 さて、エセルは社会の不正が目に見えている状況で人々に怒りなさいと言っている。つまり人々は目覚めていたのだ。しかしモランは、自分たちに何が起きているのか人々は認識できていないと言っている。人々は全般的に夢遊病にかかり、将来について考えることもできず、不確実性を乗り越える力を喪失しているというのだ。

 今、人間の傲慢さが世界的に危機を招いている。不正確な認識があたかも真実だと流布されている。こうした中で私たちが経験している歴史を悪化させていることをどうやって最終的に認めることができるのだろうか。危機から危機へと移り変わる世界をどのように理解すればいいのだろうか。私たちは、人類の驚くべき危険をどうや想像できるのだろうか。

 文明は過度に進化し、人間社会を取り巻く物理的世界、過剰に発展させたあらゆるものに対し、人間はあまりに未発達ではないのか。ストレスに晒されている地球は、全人類に危機を与えている。命の地球、人間の地球、切り離すことができない運命共同体として、人間性を尊重し復元すべき時ではないのか。

 目を覚まそう。そして、将来を考えよう。今あるシステムが永久に続くことは不可能であることに気がつこう。全てが機械化されていく中で、すべての機械は完璧と思われるが、どんな機械も故障する。最も全面的かつ執拗な秩序は容赦ない崩壊から免れることはないでしょう。

 未来はますます不確実で不安な状況になっている。


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