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LNJ Logo 国立ハンセン病資料館分会:不当解雇3年半のたたかいで「勝利和解」
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*国公一般国立ハンセン病資料館分会から「勝利和解」のうれしいニュースが届きました。以下、紹介します。(レイバーネット編集部)/写真は笹川保健財団前のアピール行動(2023.1.27「東京国公」HPより)

不当解雇撤回をご支援くださっているみなさま

国公一般国立ハンセン病資料館分会です。

このたび、9月13日の中央労働委員会第8回目調査期日において、稲葉上道、大久保菜央両組合員に対する不当解雇事件が和解となりましたのでご報告いたします。

今回の和解は、国公一般国立ハンセン病資料館分会が笹川保健財団に求めてきた、国立ハンセン病資料館の設立の経緯や目的を忘れることなく、全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)を含むハンセン病療養所入所者・元患者及びその家族の意向を尊重し資料館の管理運営を行うことを約束することを前提に成立するに至りました。

ここでは私たちの職場復帰と引き換えに笹川保健財団との間で、

・これまで認めてこなかった館内での組合活動を認めることや、組合員の労働条件といった義務的団交事項以外について要望書を提出できるなど、健全な労使関係を構築すること
・和解に際し、資料館運営について労働組合の意見を反映させる機会を保障すること
・ハラスメント防止のための環境整備、また外部の通報窓口の設置などの対策をとること
・和解金額以外について非開示としないこと

といった合意を獲得しました。また、笹川保健財団が遺憾の意を表明したうえで、その非を認めたに等しい和解金額を組合に支払うことも約されました。

2019年9月に私たちは「労働組合結成趣意書」のなかで、
「私たちは、こうした状態を改善するため、すなわち私たちの意見や提案を有効かつ具体的にそれぞれの館のあり方や活動に反映させ、民主的で責任ある意思決定のプロセスを手に入れ、いくつかの館で見られる人権侵害の状態を解消し、健康かつ安心して働き続けられるようにするため、労働組合を結成しました。それぞれの館の主体性は管理運営受託者にあるのではなく、ハンセン病患者・回復者と、それぞれの館が設けている意思決定機関にあります。私たちは、それぞれの館の主体性を忘れることなく、設立目的や役割を堅持し、患者・回復者の尊厳を重視し、また意向を尊重し、ひいては社会にとって有意義な博物館施設であり続けるために、それぞれの館が抱える問題の解決を目指します。」と記しました。

私たちの職場復帰は叶いませんでしたが、今回結成当初の目的の実現に向けた足がかりを手に入れることができました。

2020年3月末の解雇以降3年半にわたり、みなさまには多大なご支援を頂戴してまいりました。私たちがここまでたたかえましたのも、多くの方が署名やカンパ、抗議行動などで支えてくださったおかげです。心よりお礼申し上げます。

10月28日(土)18時より、全労連会館(https://maps.app.goo.gl/PtX1ZDLdd49KBekm7)にて報告集会を開催する予定でおります。詳細は追ってご案内させていただきます。

今後は、この和解条項の実現に尽力してまいります。引き続き国公一般国立ハンセン病資料館分会をよろしくお願い申し上げます。

国公一般国立ハンセン病資料館分会 稲葉上道 大久保菜央

国公一般国立ハンセン病資料館分会
〒105-0003 東京都港区西新橋1-17-14
西新橋エクセルアネックス3階 国公労連内
HP https://hansensdignity.com/
E-mail kokkouhansen@gmail.com

●国立ハンセン病資料館不当労働行為事件・勝利解決にあたっての声明

1 事案の概要

本件は、国立ハンセン病資料館に長期に渡り勤務してきた学芸員らが、ハラスメント等の問題が生じていた 職場環境の改善や変質した資料館運営の正常化を求めて2019年9月24日に労働組合を結成し、資料館の管理運営を受託者する日本財団に対し様々な要求をして活発に活動していたところ、2020年4月1日付の施設管理受託者変更を契機に、新受託者である笹川保健財団が組合員2名を不採用とした事件である。

2 和解に至る経緯

東京都労働委員会は、本件は採用試験の不合格という形式を装って組合員を資料館から排除したものであり 不当労働行為(労働組合法7条1号)にあたると判断、笹川保健財団に対し組合員2名の職場復帰と陳謝文の掲示を命じた(都労委 R4.3.15 命令・労判1264号 100頁)。
笹川保健財団はこの都労委命令を不服として中央労働委員会に再審査申立てをし、約1年にわたり調査期日が重ねられてきたが、今般、笹川保健財団が、組合が求めてきた「国立ハンセン病資料館の設立の経緯や目的を忘れることなく、全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)を含むハンセン病療養所入所者・元患者及びその家族の意向を尊重しながら、国立ハンセン病資料館の管理運営を行うこと」を約束することを前提に、和解が成立するに至った。

3 本和解の概要

本和解の概要は、1 組合員2名と労働組合に対する解決金の支払、2 笹川保健財団は遺憾の意を表明し、組合員及び全ての労働者が安全に安心して働く環境をつくり、健全な労使関係を構築することを約束する、3 施設内での組合活動について不利益取り扱いをしないことを約束する、4 国立ハンセン病資料館の展示、イベントその他の企画に関する意見聴取会を開催する、5 労働組合は団体交渉において資料館運営等についても要望書を提出できることとする、6 笹川保健財団は、ハラスメント発生の防止のための方針を明確化してその周知・啓発を実施し、外部の通報窓口の設置を含む体制を整備し、ハラスメントに対して公正かつ迅速・厳正な対応をする、というものである。

4 本和解を受けて

組合員 2 名の職場復帰については叶わなかったものの、本和解は、これまで施設内の組合活動を認めてこなかった笹川保健財団の姿勢を正し施設内での組合活動を認めさせるものである。また、労働条件に関する問題以外にも、資料館運営について労働組合の意見を反映させる機会を保障するものであり、ハラスメント防止の 環境整備を笹川保健財団に義務付けるものである。労働組合は、一貫して国立ハンセン病資料館における労働 環境の改善や運営の正常化を求めてきたものであるが、その実現につながる和解内容である。労働組合が求め た額に近い水準の解決金を勝ち取ることができた点も含め、全面的勝利和解であると評価できる。
笹川保健財団は、今後、都労委命令と本和解を十分に踏まえ、ハンセン病療養所入所者・元患者及びその家族の意見、現場で働く従業員や労働組合の意見を真摯に受け止めた運営を心掛けるとともに、労働環境の改善に取り組み、今後は人権尊重を謳う国立ハンセン病資料館にふさわしい運営を行うべきである。
また、厚生労働省は、委託先の不当労働行為について無責任な対応に終始したが、管轄する施設において本件のような違法行為が二度と起こらないよう、委託業者に対して労働関係法令を遵守するよう徹底した指導・監督をすべきである。
加えて、そもそも「民間委託」という制度そのものが、本件のような「不採用」に名を借りた労働者の恣意的な排除を可能としている点にも目が向けられなければならない。公的施設の管理運営を一民間団体に委ねる ことは、施設運営の私物化を招き、現場の労働者を不安定な立場に置き労働環境の悪化をもたらす。公務の民間委託そのものの見直しが必要である。
私たちは、国立ハンセン病資料館の正常な運営と労働環境の改善のために引き続き取り組むとともに、公務の現場で働く労働者の権利擁護のために今後も力を合わせて闘い続ける。

以上
2023年9月15日
国家公務員一般労働組合
国立ハンセン病資料館分会
同 弁護団 弁護士 今泉義竜・同小部正治


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