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本気で止める海洋放出〜韓国人に学んだ「行動する力」

堀切さとみ

 8月24日、海洋放出は強行された。しかし、諦めるわけにはいけない。
 9月11日14時。新橋駅SL広場には、大勢の人だかりが出来ていた。
 人だかりの中心にいたのは、李元栄(イ・ウォニョン)さん。元水原大学教授の李さんは、韓国・ソウルを6月18に出発し、山口県から東京に向けて86日間歩きながら汚染水海洋放出中止を訴えてきた。その距離1600キロ。日本各地から、その歩行を共にした人たちも集まっていた。

 この日は「日韓市民徒歩行進」の最終日。韓国と日本から寄せられた書簡の束を、国会議員に手渡すのが目的だ。

 新橋駅から皆で歩き、東電本社前へ。そして衆議院議員会館へと向かう。思い思いの楽器や大きな横断幕を思う存分みせつけて。途中、水俣や広島を巡礼しているような気持ちになった。

 福島だけでなく世界中の海を汚し、子どもや孫たちが最もその影響を受ける。この愚行に鈍感な警察官は「のぼりを降ろしてください」と、上から指図された言葉をただただ繰り返した。

 衆議院議員会館前の歩道は、通行する人の邪魔にならないよう、スペースを空けなければならないために混雑した。そのような状況下であっても、決められた場所で申し入れ書を渡すというのがいつもの光景だった。
 李さんは警察官に、こう提案した。「予想以上の人が集まっていて、歩行者を妨げたくないので、目の前の広場を我々に開放してくれませんか」と。警官はもちろんお構いなし。これもいつもの光景だ。
 しかし、李さんはさらに呼びかけた。「皆の思いが詰まった書簡の束を、このような場所で手渡すわけにはいかない。公共の広場なのに、なぜ市民に使わせないのか。警察や公務員は、この国の主人公である国民に礼儀を尽くさねばなりません」と。

 

 大椿ゆう子議員(社民党)が、控室の提供を申し出てくれたようだった。しかし、そもそも手渡す相手だった細田衆院議長は、体調不良でこの場には現れなかったのである。李さんは、どう思っただろうか。

 四時、経産省前テントへ。脱原発を訴え続けてきたテントも、この日で丸12年。座り込みは4384日だ。

 福島から海洋放出反対のキャラバンをやり抜いた、郡山市の黒田節子さん。請戸の海岸にテントを建て、釣った魚の放射能を調べるのだと意気込む吉沢正巳さんがマイクを握った。李さんと徒歩行動を共にした人たちの発言も続く。朴保さんの歌が沁みる。

 やがて李さんがテントにやってきた。手書きの書簡集そのものを渡すのでなく、データをUSBに移し、それを職員会館の控室で議長の代理に渡したそうだ。李さんの行動は、私たちの心を動かした。本当は日本人がやらなくちゃいけないことなのだ。

 海洋放出反対の裁判も始まった。原告の中には漁師や水産加工会社の人もいるのだと、河合弘之弁護士が発言した。

 双葉町から参加した男性が筆者に言った。「今までは声をあげてこなかった。でも汚染水を流すことだけは許せないと思ってここに来た。政治の問題ではなく命の問題だ。放出を許した双葉町長の責任は重い」


Created by staff01. Last modified on 2023-09-15 03:36:05 Copyright: Default

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