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汚染水海洋放出の本当の理由〜「30〜40年後に廃炉完了」の大ウソ

安田幸弘


*写真=放出が開始された8月24日、東電前

 なぜ政府・東電は漁民との約束を破り、近隣諸国の反発を買ってまでALPS処理水の放出をしなければならなかったのか。

 政府は敷地の確保だとか、いろいろ言い訳を並べているけど、本当のところはおそらく廃炉の期間だ。つまり、「30〜40年後に廃炉完了」の実現は困難だからだ。福島第一の廃炉が完了するには100年かかるかもしれない。200年かかるかもしれない。つまり、海洋放出をしなければ汚染水の貯蔵タンクを100年、200年と作り続け、補修し続けなければならないが、それはさすがに無理だ、海に捨てられるようにしてほしい、ということなんだろう。

 それならそうだと言えばいいのに、政府は「30〜40年」という脳天気な数字を引っ込めようとしない。それどころか、この脳天気な数字を根拠にしているのか、放出の期間は30年程度だと言い張る。もちろん、この数字に科学的、あるいは技術的な根拠なんてない。今後、100年以上、放出が続くものと考えるべきだろう。

 現在のところ、放出の期間は30年という前提で「安全かどうか」が問題になっているが、廃炉までに100年以上かかることを前提にして汚染水の処理――だけじゃなくて、廃炉計画全体――を考え直さなきゃいけないんだと思う。

 政府も東電も、「できないものはできない」と表明して、「やっちゃいけないことはわかってるけど、我々の技術ではどうしようもない。できるだけのことはするから、なんとか放出を認めてほしい」ぐらいのことを言えばいいのに、「科学的に安全なんだから放出する。それぐらい理解しろよ、バカ!」みたいに居直ってみせるから、余計議論が混乱する。

 メルトダウンは起こす、臨界事故も起こす、高速増殖炉はお手上げ、再処理工場はいつのことやら…と、日本の原子力関連の技術なんて、何一つまともにできたことがない。スリーマイルやチェルノービルの例を思い出せば、日本の技術で30〜40年で廃炉が完了して処理水の放出も終わるなんて、誰が信じるだろう。

 政府には「廃炉には100年以上かかるかもしれない」なんて言ったら政治的に持たない、という判断があるのかもしれない。

 だけど厳しい現実から目をそらし、「30年」なんてウソをつきつづけることが本当に福島のために、あるいは日本のためになるのだろうか。


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