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市民と共に信念をつらぬく保守の重鎮〜映画『ハマのドン』を観て

堀切さとみ

 胸のすくような痛快な、それでいてホロリとするドキュメンタリーだ。
 カジノ誘致に揺れた横浜市。ここで、誘致に賛成の候補者を大差で破り、反対派の若き新人市長が誕生した。その立役者が、この映画の主人公「ハマのドン」こと藤木幸夫さんだ。

 藤木さんは90歳を超える自民党員。横浜だけでなく全国の港湾労働者を束ねてきた保守の重鎮だ。歴代首相をはじめ、大物政治家とのパイプも太く、ヤクザとのつきあいもある。その彼が「ハマで賭博はやらせない」と宣言し、同じ神奈川出身の菅義偉陣営を相手に闘うのだ。
 「総理に立てつくなんて、周りが離れていくだけ」というのがフツウの見立てだが、藤木さんは多くの市民を味方にした。

 カジノ側の人間をも、藤木さんは虜にしてしまう。いかに長時間賭博の椅子に縛り付けるかを計算してきた、カジノ設計士の村尾武洋さんも、藤木さんの心根に惹かれた一人だ。アメリカでは依存症になった親たちによって、多くの家族が路頭に迷っている。「日本にわざわざ作る必要はない」と、藤木さんに惜しみなく協力する。

 日本では賭博は長く禁じられてきたはずなのに、安倍政権時代に解禁となった。「カジノは儲かる」と、地元経済界はもろ手をあげて賛成。そんな中、藤木さんは「カネなんていくらあったってダメ。男はいったんヤバいと思ったら、その道を行かなくちゃ。みっともないよ」と言い切る。男気などというのはジェンダー的にはNGかもしれない。でも、とにかくカッコイイ。
 港湾労働者たちの苦労の歴史を裏切りたくない思いと、モノを言うことが悪とされた戦争体験が、彼の根幹を支えている。

 対極なのが、前・横浜市長の林文子さんだ。カジノの必要性を訴える姿はメディアを通じて見ていたが、彼女から納得のいく言葉を聞いたことがない。「IRをやろうと言い出したのは国なのに、断りもなく方針転換をしたのは許されないことだ」と、有権者を相手に臆面なく言い放つ林さん。なるほど。すべてを国のせいにする為政者のみっともなさを見せつけられた。

 選挙のたびに、新しい政党が名乗りをあげるようになった。女性候補者も増えてきたが、表面だけでなく本質を見抜く目を養っていきたい。そのヒントが満載の映画である。

●『ハマのドン』 監督:松原文枝 上映時間:100分 / 5月5日(金)より、全国順次公開。


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