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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(1/12) : 都教委にはスピーキングテストの説明責任がある
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●根津公子の都教委傍聴記(2023年1月12日)

都教委にはスピーキングテストの説明責任がある

 昨夜遅くまでは今日の定例会を傍聴するつもりはなかった。定例会の告示は2日前になっていて、10日に確認したところ、公開議題は、報告事項「東京都教育委員会児童・生徒等表彰について」の1件だったから。これは、応募者の中から「他の児童・生徒の範になる者」や「社会の一員として社会のために貢献しようとした者」を都教委が表彰するという、毎年行っていること。傍聴するまでもなかったのだ。

 普段はこんなことはしないのだが、昨夜再び都教委のHPをのぞいたら、「10日付告示」だけでなく「11日付告示」があった。報告事項が3件追加されていた。しかも問題になっているスピーキングテストに関する案件もある。一体何? スピーキングテストの案件を市民に知らせたくなかったから? それとも単なる事務局のミス?

 今朝、教育委員会の会場に入ると、記者席は通常は数人なのに10人もがぎっしり。記者には10日の告示時に全ての議題が知らせてあったのだろうか。

 議事の冒頭に司会進行役の教育長はこの件に関して説明とお詫びをすべきなのに、それはしない。すべきそれはせずに、いつものように傍聴者に「声を出すな」と注意をしたのだった。良識を知らない教育長及び教育委員の面々。それとも、トップ意識のなせる技?

 公開議題の報告事項は表彰の他に、1.教員確保等充実の方向性について 2.中学校スピーキングテスト(ESAT-J)(11月27ニッチ実施分)の成績等の通知について 3.都立高校生のアラブ首長国連邦(UAE)への派遣研修についてが加わった。非公開議題の懲戒処分については議案にも報告にもあがっていた。

1.教員確保等充実の方向性について——都教委の教育への介入こそが教員確保の邪魔

 教員希望者が極端に少なくなったのは全国的傾向だ。受験倍率が2,5倍を切ると採用に支障を来たすというが、東京のそれが2,5倍を切ったのは5年前の小学校から。2025年度で35人学級の実現が完了し採用数が減少するから、26年度からは受験倍率は回復するそうだ。

 しかし、「新卒の確実な確保とともに、社会人転職者や教員離職者など新たな層の掘り起こしが重要」ということから、現状の分析と新たな取組案が示された。

【現状・課題】として都教委が挙げたのは2点。ア.「年度途中の休職・退職等の状況」とイ.「教員の時間外労働の状況」だ。ア.では「毎年1%前後の教員が精神疾患により休職」「新規採用者の約4%が、採用後1年以内に退職。うち半数がメンタル面での退職」という。メンタルヘルスサポートを取組にあげるが、なぜ、精神疾患が多いのか、都教委の姿勢とは関係しないのかの検討はしていない。それがまず、必要だろう。

 さて、新規採用者は、1年間は試採用期間で、年度末に採用か否かの判定が校長に委任されている。この制度を使って毎年3%前後の人が不採用とされているのが現実だ。

 「不採用にせざるをえない。今後のあなたの再就職のためには自主退職した方が傷がつかなくていい」と校長から退職届を強要される人は後を絶たない。校長にそう言われた人から、私は直接聞いている。

 また、自主退職を拒否して不採用となり、裁判してきた・している人がいる。今係争中の人を私は支援し裁判を傍聴する中で、不採用の原因は、仕事ができないからではなく、校長たちに意見を言ったからだとしか思えない。

 自身のクビが校長に握られているのだから新規採用教員は、校長はもちろん、同僚たちの言動にも疑問があっても従順となる。そうせざるを得ない。彼らは、意見を言った人は不採用・免職にされる、そうされた人が毎年3%いることを知っている。不採用率が0,001%ならば、私はここには引っかからないと思えるだろうが、3%という数字は「もしかすると私も」と警戒する数字。そう、私は常々思っている。この制度と不採用率は、初任時に上意下達を徹底させるためのものなのだ。「退職4%」という数字は、不採用3%、プラス精神疾患になり退職した新規採用教員1%ということだろう。不採用にはならなくとも、従順であることだけを求められ続けたら、精神的重圧が大きく、病気になるだろうことは容易に推測できる。 そう考えながら、この報告を私は聞いたが、教育委員からの発言はなかった。「不採用3%前後」は毎年6〜7月頃の定例会で報告されてきたので、教育委員の誰一人、この事実を知らないはずはないのだが。

 【取組案】は「大学3年一部前倒し受験」「社会人特例選考の年齢要件緩和」「メンタルヘルスサポートの教科」等々。

 教員確保は、こうしたいろいろな取組案を出すことではない。まずは、職員会議での挙手採決禁止などの教育への介入をやめること。職員会議で論議し決定して仕事ができるようにすること。そうしたら、教員希望者は間違いなく増えるはずだ。そう考える、役職にある職員はいないのか。

2.中学校スピーキングテスト(ESAT-J)(11月27日実施分)の成績等の通知について——要請や苦情に対する都教委の説明責任は残されている

 受験者数、受験した生徒及び学校に対しての通知時期と通知方法、受験者全体のスコア分布状況、11月に受験できなく12月に受験した生徒に対しての通知期日のみが報告された。

 受験前に大勢の当事者、関係団体、専門家、都民等がテストの中止を求めたことや、受験後に「隣の席の回答が聞こえてきた」などの苦情に対しては一言もなかった。また、教育委員からの指摘もなかった。記者が多く集まったのは、この議題があったからではなかったのかと思うが、都教委の強行姿勢は、いつもながらこの様だ。

 今年度のスピーキングテストが終了しても、要請や苦情に対し、都教委事務方及び教育委員には説明責任が残されている。

3.都立高校生のアラブ首長国連邦(UAE)への派遣研修について

 「東京グローバル人材育成指針」(英語力の育成、国内外の課題を解決する創造力・論理的思考力の育成、世界の中の一員としての自覚と自己の確立、多文化共生の精神の涵養と協働する力の育成)に沿って、12月12日から5日間、アラブ首長国連邦の高校生を三鷹中等教育学校が受け入れ交流した。主な活動は、授業への参加、弓道部や茶華道部等の日本の伝統文化の体験、東京大学訪問、企業訪問、新幹線に乗車して富士山周辺の散策、和装して浅草の散策や能楽鑑賞。その後は、三鷹中等教育学校及び工芸高校、府中工業高校の生徒(計22名)がアラブ首長国連邦を訪問したとの報告。

 都教委は、ここには金をかけるが、夜間定時制課程には金を出さない姿勢は、夜間高校卒業生や市民の要請が毎年続いても変えようとしない。


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