本文の先頭へ
LNJ Logo 中国 : iPhone製造工場のフォックスコン、ロボット労働と多発する自殺
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1669168254321st...
Status: published
View


〔レイバーネット国際部・I〕

コロナ禍でも生産を続けたiPhone製造工場のフォックスコン(富士康)鄭州について、名 著『中国はここにある 貧しき人々のむれ』(鈴木将久ほか訳、みすず書房、2018年)の 姉妹編『出梁荘記』(梁鴻、2016年、未邦訳)でも、10年以上前のことになるが取り上げ られていた。 同書シリーズは梁村から各地に出稼ぎにでた農民工への取材をもとに構成されており、『 出梁荘記』の第六章のタイトルはズバリ「鄭州」で、冒頭の「ロボット人間」で著者は、 2012年1月16日にフォックスコン鄭州空港工場を視察し、そこで働いたことのある青年・ 梁平にインタビューしている。 「私はある友人と鄭州空港内にあるフォックスコン工場を見学した。友人は地元の事情に 詳しく、フォックスコンを鄭州に誘致するときの『内幕』を、道すがら私に勢いよく話し てくれた。たとえば、ある政府指導者の強い支持があったとか、雇用と河南省の技術レベ ルの向上が期待されたとか、税金免除の優遇策とか、iPhone製品の輸送はすべて一括して 手配されているとか、さまざまな小さな物語がすべて複雑に絡み合っており、真偽の見分 けがつかないといった、中国の伝奇物語さながらであった。」 著者が見学した鄭州フォックスコン空港工場は巨大で、たいへん先進的で、通路も広く発 砲に広がり、建屋内外も極めて整然とし、緑地、花壇、バスケットコートなどもあった。 旧正月前で多くの労働者が故郷に戻っていたので閑散としていた。見学は保安隊長が引率 した。工場建屋の裏に数名の労働者が休憩でたむろしており、すこし話を聞いたが冷たか った様子が記されている。 以下は、著者の親戚筋にあたる(?)若者、梁平くんのモノローグの訳。 ===以下、梁平くんのモノローグ=== 俺は情報工学職業学院で金型のデータ作成を専攻した。だけどあまり実用的ではないね。 卒業して、鄭州経済開発区の刃物工場に応募させられた。工場の技術は全国でも有名だ。 当時は月1000元、一日15〜16時間働く、半年働いたけど辛くて辞めた。ずっと立ちっぱな しの仕事で、休憩や食事も小走りしないと間に合わないなんて、そもそも耐えられない。 それから深圳に来た。ちょうどフォックスコン深圳観瀾工場で募集があったので入った。 そこでも半年ちょっと働いた。そしたら鄭州フォックスコンでも募集があるというので、 ほかの工員らと鄭州にやってきた。だけど三か月で逃げ出したよ。我慢できないほど、ひ どいプレッシャーだったからね。ライン工程の仕事で一日10時間ずっと座りっぱなし。動 作ひとつ数秒。それをずっと繰り返す。完全にロボットだよね。ソケットに部品を差し込 む動作だけ。それ以外の体の部位は全く動かせない、というか動かす時間的余裕もない。 ちょっと休憩したくても、隙すらない。機械を操作するやつはまだ行ったり来たりする余 裕はあるが、それ以外の人間は、固定位置から動くこともできない。さらに評価制度、罰 点、部品を破損したら罰金。毎日監視され、ミスを記録される。まるで軍隊みたいだよ。 一日一日が牢獄につながれている感じ。俺は逃げたよ。どこだって仕事はあるのに、こん なのは割に合わないだろ。俺と一緒に来た奴らもほとんど逃げたよ。やってられない。 工場にはバスケのコート、テレビ部屋、ちょっとした体育館などあるけど、元気じゃなき ゃ意味がない。毎日10時間以上も働いてヘトヘトになる。飯食って寮に戻ってちょっと スマホをいじるだけ。テレビさえ見ないよ。その上に何か(バスケや卓球や映画など)ア クティブなことをやろうなんて言われた日には、文句しかでない。行くやつなんかいるも んか。 工場はすごい広いけど、時間の管理も厳しい。こんなジョークが流行ってたよ。いっしょ にフォックスコンに入った同郷がべつべつの部署に配属されたら、一年のうちに工場内で 顔を合わせることはまずないだろうってね。これはほんとだよ。 深圳観瀾工場はまだ小さい方だよ。龍華工場はデカすぎる。連絡を取らなければ何年だっ て顔を合わせないことだってあり得る。 フォックスコンで合計9ケ月働いたけど、けっきょく給料は基本給1200元のままだった。 残業に残業を重ねてやっと1800元が最高。当初は、3か月の見習が終わったら給料が上が るといわれたけど、3か月が過ぎても、さらに半年がたった査定のときも基本給のままだ った。あと数日で9ケ月目というときに、もう駄目だとおもって辞めた。最高で(基本給 ?)3000元以上は行けると聞いてたけど、そんな簡単じゃないね。経営者は労働者は残業 が好きだっていう。自分から進んでやると。基本給が低すぎて、残業代がなくてどうやっ て生きてい行ける? これが一日の作業時間   7:40 - 9:50 仕事   9:50-10:00 休憩  10:00-12:00 仕事  12:00-13:00 食事  13:00-16:20 仕事  16:20-17:20 食事  17:20-19:40 残業 残業代は基本給の1.5倍、法定祝日は2倍。だからみんな普通の休みの日ではなく平日に残 業したがる[週休の二日間の出勤は1.5倍]。あさ6時半すぎに起きて顔を洗ってメシ。そ れから工場で12時間働くが、食事の時いがいは、同僚と口を利くこともない。工場では労 働者同士のコミュニケーションは歓迎されない。効率が下がるから。 管理は厳しいよ。フォックスコンは軍隊管理。保安隊はまるで特高警察。保安隊長なんで 特高の親分みたいだよ。工場では誰もやつらを統制できないくらい権限をもってる。どこ の部署が管理しているのかわからない。規則違反や製品をくすねる労働者を見つけたらす ぐに暴力を振るう。監視カメラのないところに引きずり込んで、一発殴り、ケツにさらに 一発食らわせて放免。どうしようもないさ。誰に苦情を言っていいのか分からないからね 。文句を言うだけ損さ。 (質問:フォックスコンでの連続飛び降り自殺事件は知ってる?どう思った?) 知ってるさ、当たり前だろ。同じ工場で一人飛び降りて、更にまた飛び降りて。びっくり したさ。なんだか簡単に飛び降りることができるみたいだね。俺らの寮は柵があって、窓 には鉄のフェンスが付けられているんだけど、意味ないね。死のうとするやつは止められ ない。死んだ奴は十数人にとどまらないよ。俺がいたときには20人は自殺してたね。 いったい何を思って自殺するのかは分からないよ。すごいプレッシャーだし、限界だった んだろ。あそこにずっといたら死にたくもなるさ。 ===以上、梁平のモノローグ=== 「私の強い関心とは逆に、梁平はあまりフォックスコンでの生活について語りたがらなか った。彼にとって当時の生活は無味乾燥で、話すことなどないと感じていたようだ。また 自殺したものへの蔑みも酷かった。」 「作業のときに身動きしてはいけないという動作をみせてくれたとき、梁平は振り返って 頭を下げ、両腕を机の上において、肩と腕、そして手のひらさえも微動だにせず、親指と 人差し指だけをくるくる動かしてこう言った。『ほら、こうやるんだ。動作ひとつ数秒。 それをずっと繰り返す。完全にロボットだよね。ソケットに部品を差し込む動作だけ。そ れ以外の体の部位は全く動かせない』。その表情はそっけなく、まるで感覚のない、でく の坊のロボットのようだった。」 筆者は基本給が最低賃金だということに驚いているが、ほかに見学に訪れた工場でも状況 は同じで、残業含めて毎日12時間も座りっぱなしでやっと何とか生活できる賃金がもらえ ると報告している。 「若い労働者が毎日10時間以上も働かないといけない。その仕事は沈黙が求められ、無味 乾燥で機械的、まったく生き生きとしたところがない。いちぶの欧米企業はそれなりに人 間的で、作業のときも会話ができたり、休憩したり、音楽を聴いたり、お茶が飲めたりす る。中国と台湾の企業、そして日系企業は、軍隊式の日本モデルを採用している。」 筆者はこの第六章の扉にこの言葉を引用している。 「労働者が身をすりへらして働けば働くほど、彼が自分に対抗したものとして作り出すと ころの余所(よそ)ものの対象的世界がますます強力なものになり、彼自身、彼の内面的 世界がますます貧しくなり、彼自身に属するものはますます少なくなるということだから である。」 マルクス「1884年経済学・哲学手稿」(大月版マル=エン全集40巻432頁) なおフォックスコンでの労働者の自殺についてはこちらのwiki(中国語)も参照 https://bit.ly/30Fcj9G 売れるiPhone、台頭する中国、激化する半導体競争のなかで、鄭州や深圳など多くのフォ ックスコン工場で若い中国人労働者が自ら命を絶ってきた。 以上

Created by staff01. Last modified on 2022-11-23 10:50:57 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について