
7月には、次々いい映画が封切られている。今回は、写真と鉄道を組み合わせた映画の使
を紹介したい。これは、今日(7/29)」から始まった映画である。映画館ではコロナに罹らないと言
われている。換気がいいし、おしゃべりしないし。ぜひ映画館でみて、あの雄大な、そし
て細やかな鉄道のある景色の写真を楽しんでほしい。東京は2館同時上映である。(笠原眞弓)
鉄道が走るこの景色を残したい〜映画『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』
和船が川を往く。深い霧、そして……。素晴らしい風景が次々と現れる。目の保養のよう
なと、のんびり楽しんでいられない現実が重なる。つづく場面は会津を襲った集中豪雨の
ニュース写真が畳みかけて来る。2011年7月のことだ。福島県の会津若松駅と新潟県の小
出駅を結ぶローカル線のほぼ中央部の橋梁が落ちた。1カ所ならず、3か所も。
只見線を撮り続けている人がいた。星賢孝さん。毎日撮影している。その写真が展覧会や
SNSなどを通して世界とつながり、いわゆる鉄道ファンばかりでなく、普通の観光客も、
彼の案内でカメラスポットを訪れるようになっていた。そんな流れの中で、台北で旅行者
の作品による展覧会も催されていた。
ローカル列車は、そうでなくても赤字である。彼の他に、この列車をこよなく愛する地元
の人たちがいた。地域の話し合いも開かれた。そのお金があるなら、子どものために使い
たいとう意見もあった。
全国的に赤字ローカル線の廃止の傾向の中で、2017年にその全線の復旧が決まった。
なぜか?
地元の人たちの鉄道に対する愛情や、地域活性化のシンボルとしてかもしれないが、それ
を超える力強さ、魅力がここにはあった。只見線はローカル線の横綱といわれているらし
いが、そのような言葉で言わなくても納得できる美しさが、そこにはあった。星さんの年
間300日を撮影に通って撮った作品の中に、今日と昨日と違う風景を見出すことができる
のだから。
只見線は2018年に着工し、いよいよ全線開通は2022年の10月1日と決まった。
欲を言えば、復旧のハードルだったであろう資金の事など聞きたいことはあるが、この映
画の目的は、300日撮影に通う星賢孝さんの情熱にスポットを当てたものなのだろうと思
った。
監督:安孫子亘 80分
上映:7月29日より ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次上映
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staff01.
Last modified on 2022-07-31 11:46:54
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