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「ウクライナ・改憲」めぐって熱くディスカッション〜レイバーネット総会開かれる

動画(1時間40分)

 2001年に40人で発足した「レイバーネット日本」は、20年を経て現在560人の「はたらくものの情報ネットワーク」に育ちました。3月13日、「レイバーネット総会2022」が東京・水道橋の「スペースたんぽぽ」で開催されました。リアル24人、オンライン14人の計38人が参加しました。一部では「経過報告・会計報告・各プロジェクトからの報告」などがありましたが、個々の活動からさまざな広がりが生まれていることがレポートされ、元気がでる内容となりました。財政も大口カンパなどがあり、黒字基調で2022年を迎えています。

 第二部の特別企画は、ミドル世代5人による問題提起とディスカッションでした。植松青児(雑誌編集者)、石井信久(「島じまスタンディング)、加藤直樹(ノンフィクション作家)の3氏は、連名でことし1月1日に「朝鮮半島・沖縄・台湾で軍事緊張を高める日本の『新冷戦』に反対しよう」という声明を発表しています。当初はそれを受けて、「どうする改憲・軍事化の時代!大ディスカッション」というテーマ設定でした。しかし2月末のロシアのウクライナ侵攻という緊急事態を受け、この日のディスカッションは、ウクライナ問題に半分以上の時間を割きました。

 ウクライナ問題をどうみるか、さまざまな問題提起がありました。加藤直樹さんは「日本はウクライナになるな、と言われているが日本はむしろロシアになる危険性がある。ウクライナは帝国の狭間に置かれた小国で犠牲が強いられている。東アジアでいえば、朝鮮半島-沖縄-台湾がそれにあたる。『帝国の狭間』から見て考えることがとても大事。狭間に置かれた小国が安心できるための国際秩序が必要だ」と語りました。続いて石井さんは図表を見せながら、「今の課題は、琉球孤のミサイル基地・軍事化を止めることだ」と訴えました。

 コロナ禍の「女性による女性のための相談会」の中心を担ってきた松元ちえ(ジャーナリスト)さんは、戦争中だけでは終わらない女性への暴力、差別などを具体的に語りました。ジェンダー平等指数が世界の下位である日本の現実を突きつけました。

 また「許すな!憲法改悪・市民連絡会」事務局長に就任したばかりの菱山南帆子さんは、危機感を露わにしました。「今度の参院選で改憲派に3分の2と取られたら、憲法は“終了”する。暗黒の時代がはじまる。それでいいのか。本気で頑張るときだ。5月3日の憲法集会は有明防災公園で大規模に開く。コロナで萎縮してはいられない」と檄を飛ばしました。またウクライナ問題については「抗議行動のなかでウクライナ国旗が使われているが、私には違和感がある。ナショナリズムの運動にしてはならない。とっくに終わった元首相が核共有と言い出すなどとんでもない」と批判しました。植松青児さんも「ウクライナ国旗のうしろに日の丸が仕組まれている」と表現し、「日米同盟が第二のNATOになる」危惧を語りました。

 さらにディスカッションでは、私たちの主張を広げていくには、もっと「伝わることば」をつくることが必要。保守派・改憲派はプロパガンダにたけていて、大衆の不満を組織している。私たちこそが、本質にせまる言葉で運動をつくっていこうと、意見交換しました。あっというまの2時間のディスカッションでしたが、今後の運動への示唆に富んだものになりました。(レイバーネット事務局)

*以下は、レイバーネットMLに寄せられた感想

●「キラキラした言葉」でたたかおう

黒鉄 好

3/13の総会にオンラインで参加しました。会場参加者の活発すぎる議論を前に、オンライン組はほぼ発言機会なく終わりましたが、オンライン組から異論が出ていないのは、議論が面白かったからだと思います。

個人的には、女性陣お二人(松元ちえさん、菱山南帆子さん)のお話が刺激的でした。松元さんの「女性相談会」の話は、衝撃でした。貧困の底辺にいる女性の実態は、知っているつもりでいましたが、私の認識はまだまだ甘かったと思います。子どもの頃も親からの暴力、学校でも暴力、大人になってからも貧困・パワハラ、暴力、家に帰ってもDV・・・まさに「ゆりかごから墓場まで」ずっと暴力に苛まれ続けているという状況では、ジェンダー平等どころではありません。

今、戦火から逃げ惑うウクライナ女性のことが報道されていますが、日本の貧困底辺の女性たちも、「銃声が聞こえないだけの戦場」にいるのだと思い知らされました。

菱山さんからは、「キラキラした言葉で語ろう」というお話がありました。これはとても大事なことで、政府・与党は、普段はデジタル庁とかイノベーションとかカーボンニュートラルとか、ふわっとした横文字で悦に入っているくせに、選挙になると「新しい資本主義」「小さな声を聞く力」など、わかりやすい日本語の直球で来ます。やはり与党は手強いです。

野党側のジェンダー平等も大事ですが、意識の高い人以外にはジェンダーの用語説明から始めなければならないというのでは選挙運動になりません。参院選ではきちんと日本語で勝負した方がいいと思います。「男女平等」「誰ひとり見捨てない社会へ」などがいいのではないでしょうか。第2部の議論から、そんなことを感じました。

●いま必要なのは「非武装、非核、中立」

伊藤彰信

 3月13日のレイバーネット総会の第二部でウクライナ戦争をめぐる討論が行われました。パネラーはミドル世代にという主催者の意図には賛成ですので、私は傍聴させてもらいました。反戦運動を始めたきっかけは、ミドル世代はイラク戦争、私のようにシニア世代はベトナム戦争だったということも分かりました。

 私は、今回のウクライナ戦争を見ていて、国連憲章では戦争は防げないと思いました。国連憲章は、大国間の軍事バランスで平和を保つという考え方です。侵略に抵抗する個別自衛権と集団的自衛権を認め、その行使は国連軍が駆け付けるまでの間は認められるというものです。集団的自衛権は、「俺の子分を虐めたら許しはしないぞ」という大国支配を容認した方が、軍事力がない小国は戦争に巻き込まれることはないだろうという考え方です。軍隊が解体された日本は、日米安保条約を結び、アメリカの庇護のもとでの平和を選択したわけです。当時は、「米ソ冷戦構造」だったわけで、西側が東側を恒常的に経済制裁していたわけです。ベトナム戦争は「冷戦」時代の戦争でした。イラク戦争は、ソ連崩壊後の「テロとの戦い」でした。イラク戦争世代は「冷戦」を知らない世代だということも分かりました。

 ところで、戦争はなぜいけないのでしょうか。それは人を殺すからです。人間の生きる権利を否定するからです。でも、戦争が非人道的行為であると認識されるようになったのは、第一次世界大戦で、多くの民間人が死傷し、毒ガスなどの大量殺りく兵器が使われるようになったからです。1928年のパリ不戦条約は戦争放棄を謳いました。軍縮会議が行われました。また、戦争をする場合のルールであるハーグ陸戦条約や文民保護のためのジュネーブ条約の改定が行われました。それでも第二次世界大戦は起きてしまいました。国連憲章は、国際紛争は平和的に解決するという戦争放棄を謳い、「武力による威嚇又は武力の行使を慎む」ことと戦争に至らぬよう経済制裁措置を規定しました。

 私は、日本国憲法は、パリ不戦条約や国連憲章を更に進めた「平和資源」だと思っています。それは、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する」としたこと。その目的を達するために、「戦力は保持しない。国の交戦権は認めない」としたのです。すべての戦争の大儀名目は、自衛のためです。だから、戦争をしないために自衛権を放棄したのです。

 私は、周辺事態法、イラク戦争、有事法制のころ、なんとか、戦争に巻き込まれない方策はないものだろうか、戦争協力を拒否する方策はないだろうかと考えました。無防備都市宣言、良心的戦争協力拒否などができないだろうか考えました。無防備都市の定義は結構きびしく、戦闘員がいないとか、軍事施設がないというだけでなく、軍用品の提供やその施設なども含まれますから、いま、日本の地方自治体で無防備地区だといえるところはほとんどないと言えます。また、戦争協力拒否権を法律で規定することは、戦争を行うことを前提としたうえでの法理であって、日本は憲法で戦争をしないと言っているのだから戦争協力拒否権を規定する必要はないと言われました。それでも、武力攻撃事態における「協力」「指示」「命令」の法解釈について防衛省と交渉したとき、「命令」に罰則規定がないのは憲法第18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)があるからだという回答を引き出しました。18条は政府が徴兵制を敷くことはできないという根拠にしている条文です。私は、この条文を根拠に、有事法制反対、戦争協力拒否のストライキを計画したわけです。憲法第19条を根拠に戦争協力は拒否できるという意見もありました。でも、結論からいうと戦時法制を前提にして、戦争を止めることはできないということです。

 日本はウクライナに防弾チョッキやヘルメットなどを送っていますが、明らかに戦争支援です。戦争には前方も後方もないのです。交戦団体とみなされても仕方ありません。まして、民間機でこのような物資を運ぶことは国際民間航空条約(シカゴ条約)に違反することであって、撃ち落されても仕方がないことです。ですから、ウクライナ支援というとき、人道支援と軍事支援の線引きは非常に難しいということです。その判断は、相手国がすることですから、こちらの姿勢で受け止め方が変わってくるものです。

 私の運動経験からすると、どう考えても、戦力不保持でなければ平和はつくれないということです。「武力で平和はつくれない」ということです。安保法制の制定は、日本が戦争ができる国になったということです。武力による威嚇をする国になった、場合によっては他国に武力を行使する国になったということです。そして敵基地攻撃能力保持や核共有の議論をする段階になったわけです。

 安保法制反対闘争の時に感じたことですが、日本の反戦平和運動は、自民党の憲法解釈の後追いをして、軍事強化・大国化に反対をしているが、現状の軍事力を追認する運動だったのではないかということです。ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約機構が解体したときに、なぜ、日本の反戦平和運動は、NATOと日米安保条約を解消できなかったのか。国連憲章を日本国憲法に近づける努力をしなかったのか。「テロとの戦い」という新しい戦争の論理を止めることができなかったのか。いま、「民主と専制」という緊張を煽る論理にどう対応したらよいか。ベトナム戦争世代としては反省させられるし、考えさせられる課題です。

 私はもう一度、日本国憲法に帰ろうと思います。第9条の主語は「日本国民は」です。武力による威嚇(抑止)と武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、放棄したのです。日本国民は国際義勇軍や国連軍に参加することもできないと解釈できます。国の交戦権は認めていないのです。国際法上自衛権はありますが、自衛権を放棄したのです。武力による威嚇(抑止)と武力の行使しないために戦力を保持しないことにしたのです。私は労働運動をしていましたので、1951年の総評第2回大会の平和四原則「全面講和、中立堅持、軍事基地反対、再軍備反対」に立ち返るべきだと考えています。そして、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」、9条を世界に広める努力をすることだと思います。

 第二部の討論では参議院選挙をどう闘うかというテーマもありました。私は、ロシア軍が核施設を制圧した意味を考える必要があると思っています。原子力施設は平和利用といっても核兵器になりうるということです。核兵器禁止条約への参加と脱原発を広島出身の岸田に突きつけるべきだと思います。もうひとつ、戦争の根源には、貧困と差別があります。総がかり行動のスローガンである「戦争、原発、貧困、差別を許さない」の内容を具体的に提示した候補、そして、日本国憲法を守り、改憲を許さず、日本国憲法を世界に広めることによって平和をつくろうとする候補を応援したいと私は考えています。会場から、「非武装、中立」という意見がありましたが、いまは、「非武装、非核、中立」だと思います。

 長くなってしまいました。反戦平和運動で敗北し続けてきた、年寄りの感想ですが、皆さんにとって参考になることがあれば幸です。

 情報戦などについては過去の経験は話せても、いまのSNSを通じての情報戦、メディアの役割などについてはついていけませんので触れませんでした。昔は軍事物資輸送阻止などといって闘ったこともあったのですが、経済制裁や金融取引停止というやり方は、戦争を止めることになるのかどうかわからないことです。ですから、運動の作り方、闘争戦術などについては触れませんでした。今後の物価上昇は、低所得者層には大打撃となると思いますので、レイバーネットとしても注目しておく課題だと思っています。ひとつ気になっているのは、ゼレンスキー大統領が、成人男子の出国を禁止しているのは人権侵害にあたるのかどうかという議論がなかったことです


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