

プレカリアートユニオンの清水直子です。
『ピケをこえなかった男たち リバプール港湾労働者の闘い』のレビューをプレカリアー
トユニオンのブログに掲載しました。
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/07/07/003219
新自由主義政策のもとで闘った労働者を記録し、励まし続けたドキュメンタリー。
『ピケをこえなかった男たち リバプール港湾労働者の闘い』(ケン・ローチ監督)
イギリスの社会派、巨匠ケン・ローチの作品はこれまでもいくつか紹介してきましたが
、今回はリバプールの港湾労働者の闘いを描いたドキュメンタリー『ピケをこえなかった
男たち リバプール港湾労働者の闘い』のレビューです。イギリスのリバプールで199
5年に起きた500人もの港湾労働者の解雇問題は、当時メディアからほとんど無視され
、組合の上部団体からも見捨てられた闘いでしたが、そんななか、ケン・ローチは闘いの
様子を記録し、闘う労働者たちを励まし続けました。
■500名の労働者の解雇■
1989年、イギリスでは港湾労働法が廃止されました。これによって何か起こったか
というと、雇用の日雇い化です。リバプールを除き、すべての港湾労働者が解雇され、日
雇い労働者へと置き換えられてしまいました。
1995年、そのリバプールで、ある労働者が解雇されてしまいます。組合はピケを張
り、会社と対峙、そのときピケ破りをせず闘った「ピケをこえなかった男たち」500人
が解雇されました。上部団体から支援もなく彼らの闘いは困難を極めますが、懸命に闘い
、世論や仲間そして、上部団体にも訴えを続け、ついには大規模ストライキを決行し経営
側に大打撃を与えるに至ります。
■労働運動としての映画作品■
実は、この映画、ストライキを決行したところまでで終わっているのです。というのも
発表されたのは1997年。おそらく、まだ労使紛争の最中だったのではないかとも考え
られる時期です。この作品の真価は多くの関係者による生の証言と、なぜともに闘うのか
、なぜこの闘いが必要なのかを語る姿だと思います。監督のケン・ローチは、作品として
の映画の終わり方をどうするかという視点よりも、記録をしながら生活と尊厳をかけ、新
自由主義政策による階級破壊の攻撃と、それに必死で闘う労働者とその家族をひたすら励
まし続けたのです。この作品は、報道からもほとんど意図的に無視され続けたこの闘いを
世に知らしめ、労働者たちを勇気づけるためのものだと感じました。
■過当競争に飲み込まれる■
映画で扱っているのは労働組合の根源的なテーマでもある「労働力をいわゆる商品にせ
ず、集団で交渉して条件を決定し、労働者の賃金を過当競争に巻き込まない」ということ
です。日本でも本作公開の翌年、派遣法の規制緩和が行われ、さらに1999年には労働
者派遣がネガティブリスト化により原則解禁となりました。その後、日本の労働環境がど
のように破壊されていったかはみなさんもご存じの通りです。多くの正社員は派遣社員に
置き換えられ、労働者の生活水準はみるみる低下しました。この時期のイギリスも戦後に
勝ち取った労働者の福祉や権利を、政府が巧みに強行に奪い去っていった時代といえます
が、これは日本をはじめ世界各地でも起きていたことだったのです。
■サービス主義に基づく商品のたたき売り■
その後、2000年代になると盛んにグローバル化が叫ばれるようになります。グロー
バル化とは、労働者の権利を制限し格差拡大を容認する新自由主義社会化に他ならず、今
や、社会のすべてのものがサービスに置き換わり、過当競争にさらされています。いわゆ
る買いたたきの原理が労働にあてはめられてしまっているのが、まさに現代の労働者を取
り巻く環境です。会社がよく「労働法を守っていたらやっていけない」と主張するのは、
正しくは、労働法を守っていたら(過当競争に勝てず)やっていけないということなので
す。新自由主義は企業の遵法意識すら揺るがし、ひたすらに格差の拡大を招くものなので
す。
労働組合には労働者供給事業を行うことが認められています。職場で多数派を取り、業
界を横断的に組織し、業界と集団で労働力のやり取りをし、労働力の供給を担う産別運動
は、関西生コン支部の大弾圧でわかるとおり、資本側の大きな脅威です。私たちも、広く
業界を組織し、産業そのものに影響力を持つ労働運動をめざし、日々の活動を行っていき
たいものです。
稲葉一良(書記長)
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Last modified on 2021-07-07 11:13:09
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