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黒鉄好@安全問題研究会です。

赤字路線の廃線が地元の意向を無視して進められている北海道で、10月23日、ついに100kmを超える長大区間である日高本線の大部分の区間(鵡川〜様似)の廃線が決定し、地元7町とJR北海道の間で調印式が行われました。

安全問題研究会は、2013年4月から2018年3月まで、日高本線の地元に拠点を置き、日高本線の廃線反対運動には他線区以上に深く関わってきました。それだけに、今回の廃線決定には大変悔しく、抱きしめて眠るにはあまりにも大き過ぎる敗北です。

今回の廃線決定を受け、安全問題研究会は以下の通り、声明を発表しました。

ホームページにも掲載していますが、以下、声明部分について全文をご紹介します。印刷に適したPDF版をご希望の方は、安全問題研究会ホームページ内の以下のURLから閲覧・ダウンロードできます。

https://transportation.sakura.ne.jp/local/201023hidakaseimei.pdf

また、声明の別紙「コロナ禍、また近年相次ぐ大規模自然災害等による公共交通機関の危機を受け、地方における鉄道路線を維持するため、今後採るべき新しい鉄道政策についての基本的考え方(案)」のみをご覧になりたい方は、こちらも安全問題研究会ホームページの以下のURLからPDF版のみで閲覧・ダウンロードできます。

https://transportation.sakura.ne.jp/local/201023shinseisaku.pdf

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<安全問題研究会声明>JR北海道・日高本線廃止決定を受けて 新自由主義を乗り越え、持続可能な鉄道を再建するために

 JR北海道が2016年11月に「自社単独では維持困難」な10路線13線区を公表し、全国に大きな衝撃をもたらしてからまもなく4年が経過する。JR会社法に基づく国土交通大臣の監督命令を受けたJR北海道は、とりわけ「重要度が低い」とした5線区について、事業「再生」に名を借りた事実上廃線ありきの強硬姿勢で地元との協議に臨んできた。国鉄末期、国鉄再建法で規定された特定地方交通線対策協議会に見られるような、地元住民を交えた民主的な協議体制が結局は最後まで作られないまま、住民を排除したJR北海道と自治体との間の密室「協議」だけで地元住民の重要な生活路線が次々と奪われてきた。このような非民主主義的な廃線協議のあり方に対し、当研究会は強い怒りをもって抗議する。

 10月23日、JR北海道と日高本線地元7町との間で廃線を前提とした調印式が行われた。鵡川から様似まで、116.0kmにも及ぶ長大区間は2015年1月の高波災害で被災後、地元住民が5年半もの長きにわたって復旧を求める活動を続けてきたが、ついにそれも実らず廃線となる。本線の名称を持つ路線の廃止は国鉄末期の名寄本線以来、2例目という不名誉なものである。

 一方で、2019年11月に行われた地元7町の協議では、浦河町が最後まで反対の姿勢を貫いた結果、全町一致での廃線合意を「演出」しようとしたJR北海道のもくろみは挫かれた。国鉄分割民営化と前後して、30年近く前に闘いに踏み出した当研究会の長い歴史を振り返っても、被災して不通となった鉄道路線の復旧を求める運動が5年半にもわたって継続した例はない。これほど長く粘り強い闘いが継続したこと、そこから廃線に最後まで反対を貫く自治体が生み出されたことは、敗北の中にあって手にした巨大な成果であり希望である。「JR日高線を守る会」「JR問題を考える苫小牧の会」とともにこの闘いに主体的に関わり、路線復旧と維持を訴え続けてきたことは当研究会の誇りである。

 しかしながら、これほど長大でかつ本線の名称を持つ重要路線が、地元住民のこれほどの努力によっても維持できなかったことは、日本における既存の法制度が根本的に誤っていることを余すところなく示している。今回、日高本線の廃止決定と時期をほぼ同じくして、国鉄分割民営化推進の張本人である中曽根康弘元首相の国葬が、1億もの巨費をかけて強行されたことは歴史の皮肉と言うほかない。中曽根元首相が強行した国鉄分割民営化の亡霊は、北海道では今なお毎日、住民を襲い続けているのだ。

国鉄分割民営化が産み落とした鉄道事業法は、日本のすべての鉄道事業者に事業収支見積書の提出を求め、これを基に「事業の計画が経営上適切なものであること」が認められなければ鉄道事業免許を与えないと規定する。やや極端な表現になるが、息もできないようなぎゅうぎゅう詰めの16両編成の満員電車を3分間隔で運転して利益を上げること、それができなければ鉄道事業から撤退することを、地方含むすべての鉄道事業者に要求しているのが鉄道事業法なのである。

今年になって発生した新型コロナウィルスの感染拡大を防止するためには、人の密集を回避することが欠かせないが、こうした事態が長く続けば、大都市部の大手私鉄ですら生き残りは困難となる。鉄道事業法及びこれに基づく公共交通諸制度がその前提としていた条件が大きく崩れた今、このような極端に新自由主義的な法制度を放置するならば、21世紀は日本にとって鉄道滅亡の100年となるであろう。

当研究会は、JR北海道が提起した廃線への動きに抵抗しつつ、ホームページやブログでの情報発信、集会や講演会での発言、ラジオ番組出演、運輸審議会主催のJR北海道運賃値上げに関する公聴会における公述人としての意見陳述などを通じてこうした諸制度の抜本的見直しを訴え続けてきた。結果として、他の交通分野と比べ鉄道だけインフラ部分を民間企業が保有し維持管理しなければならないことの不公平性や上下分離の必要性等に関しては訴えが一定程度浸透してきた。だが、新自由主義的諸制度の抜本的改革につながる政財官界の動きはついに表面化しないままこの日を迎えるに至った。

当研究会は、公共交通の分野における日本社会の人材払底が最終段階に来ていることを改めて強く認識した。残念ながら日本の政財官界は、窮地に陥っている公共交通を持続可能な諸制度の下に置くための抜本改革を行う意思、能力のいずれをも欠いていると判断せざるを得ない。しかし、だからといって当研究会は、このまま何の手当もされず鉄道が死を迎えるのを座してただ待つこともできない。

 こうした認識の下、当研究会は、鉄道を持続可能な諸制度の下に置くための抜本的改革のためには、みずからその方策をまとめ、政財官界に提案する以外に道はないと判断した。当研究会が目指す抜本的改革の方向性は、別紙「コロナ禍、また近年相次ぐ大規模自然災害等による公共交通機関の危機を受け、地方における鉄道路線を維持するため、今後採るべき新しい鉄道政策についての基本的考え方(案)」(https://transportation.sakura.ne.jp/local/201023shinseisaku.pdf)に示したとおりである。JRグループ各社の再国有化、地方路線の廃線促進法としてしか機能していない鉄道事業法の全面廃止とこれに代わって地方路線の維持発展に資するための「地方鉄道振興基本法」の制定、上下分離の導入と国または自治体による線路保有・維持・復旧の義務化、鉄道運営における独立採算制の全面禁止を柱とする当研究会の提案は、公共交通に対する日本社会のこれまでの観念を根本から変え、ポストコロナ時代にふさわしく、かつ国際標準に照らしても遜色のない公共交通を確立する新時代の幕開けを告げるものになると確信する。

当研究会は、この基本的考え方に基づく抜本的改革のための法律案を、みずからの手で作成し、早ければ年明けにも各政党に示したいと考える。既存の制度が不満なら、みずから対案を示し実現を目指す。破壊された公共交通復活のための政策提言とその実現に、当研究会は残りの人生をかけて取り組むことを宣言する。

 2020年10月23日
 安全問題研究会

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