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LNJ Logo 高井弘之 : 完全な植民地主義!の「朝日社説」
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投稿者 : 高井弘之

みなさんへ 愛媛の高井です。マスメディアの報道内容がどんどんひどくなっている状況はみなさん、 痛感し、危惧・憂慮されていることと思いますが、とりわけ、日韓・日朝関係についての それは、本当に、来るところまで来たー来てしまった感があります。 以下の朝日新聞の社説のとても重大で深刻かつ酷い問題、 「徴用工判決問題」と『日韓条約ー協定」の関係についての報道されない事実・問題について、 ご一読していただければ幸いです。 ////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

朝日新聞は、昨5月22日付の社説に、何と、「徴用工問題 韓国が態度を決めねば」のタイトルを付し、次のような主張を展開した。

「しかしこれ以上問題を放置するのは危うい。元徴用工らの弁護団は日本企業の株式の現金化に着手した。実害が生じれば、日本政府が対抗措置をとり、双方の経済活動に打撃を及ぼす。/こんな不毛な報復合戦は、国民感情に深いしこりを残す。負の連鎖を避けるためにも、韓国政府はこれまでの日韓関係の土台である協定の枠内で解決をめざしてほしい。」

朝日を含むマスコミは、日本の植民地支配による被害の賠償は「日韓請求権協定で解決済み」とする政府の主張を鵜呑みにしてそのまま自らの主張とするのみで、では、それで「解決済み」とするところの『請求権協定』がどのようなものであったのかの最低限の検証さえ、全く行って来なかった。

他の事件やテーマの場合だったら、メディアのすべき最低限の検証くらいは、その批評精神が劣化し切ったいまでさえ行っているのではと思うのだが、こと、日韓・日朝関係においては、それは適用されない。このことに、根深い植民地主義を感じて、読むと怒りが湧くだけなので、最近は、このテーマに関係する社説など読まなかったので、これまでにも、これほどまでの「明確で強い」主張をしていたのかどうか正確には知らない。昨日、実家にいたゆえ、たまたま目にすることになった今回の社説には、ほとほとあきれ果てた。

朝日新聞はここで、韓国政府に対し、「協定の枠内で解決をめざしてほしい」と要求しているのである。そして、韓国大法院の判決に則って、日本による強制「徴用」(強制連行―強制労働)の被害者―弁護団がとる極めて正当で当然の措置を含む「日韓」の行為を、「不毛な報復合戦」「負の連鎖」とのたまうのである。

朝日の論説委員や記者らは、『日韓条約―協定』が、日本の植民地支配の非を全く認めぬ、植民地主義の「醜いかたまり」に過ぎなかったことを知らないのだろうか。あるいは、知っているうえで、このような主張をしているのだろうか。

『日韓条約―協定』は、簡略に記せば、以下のようなものである。

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◆日本政府は日韓基本条約(1965年)を、朝鮮に対する植民地支配は違法・不当ではなく合法・正当なものであり、自らの非はなかったという立場で結んだ。このことからの必然として、日本の植民地支配による被害への賠償などいっさい行っていない。「日本による朝鮮統治」は合法で正しかったというのが政府の認識―立場だったのだから、その非と責任を認めることを意味する補償・賠償など、立場上・論理上、在り得なかったのである。

◆日本政府が、「請求権協定」で行ったことは「経済協力」だった〔注1〕。しかも、この「経済協力」は、お金(無償3億ドル、有償〔利子付の貸し付け〕2億ドル)を直接、韓国政府に渡す形ではなく、「日本国の生産物及び日本人の役務」で代替する形だった。したがって、そのお金はその「生産物・役務」(商品や労働・サービスなど)を提供した日本の企業や商社に渡された。そして、「経済協力金」を何に使うかについては、韓国政府がその「実施計画」を作成し、日本政府と「協議」し「決定」された。 
 
つまり、それは、韓国政府が自由に使えたわけではなく、日本政府の承認が必要であり、かつ、その「使い先」は日本企業であった。「経済協力方式」は、日本―日本企業に利益を与え、かつ、それを土台―踏み台にして韓国での企業活動―利益追求活動(経済侵略)を始められるようになることを意図して行われたものだったのである〔注2〕。

要するに、日本政府は、この『日韓条約―協定』において、過去の植民地支配の非を認めず「清算」しなかったばかりでなく、これを、新たな新植民地主義的侵略・支配の契機―踏み台としたのである。

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『日韓条約―協定』に関する以上の事実から見るとき、「協定の枠内」での「解決」を主張する朝日新聞のこの社説は、日本の植民地支配の非を認めぬ植民地主義の言説そのものにほかならない。「朝日」はついに、こういうところにまで落ちぶれ果てたのである。

ところで、昨秋の『韓国大法院「徴用工」判決』は、「日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権」は、『請求権協定』の適用対象に含まれていないとする。つまり、日本の違法な植民地支配下での「日本企業の反人道的な不法行為」による被害は賠償されなければならないとしている。

同『判決』は、『日韓条約―協定』における日本政府の立場とは正反対に、「日本の植民地支配は不法」という認識・立場を大前提として、「徴用工問題」を判断しているのである。したがって、いま、日本政府・メディア、私たち「日本国民」が問われているのは、自らの植民地支配の不当・不法を認めるか否か、その一点なのである。

私たちは、来たる6月1日、愛媛において、十数年間、友好・連帯の交流を続けている韓国・平澤の市民団体のメンバーと共に、【「徴用工」被害者遺族証言会】を開催し、【「徴用工問題」に対する日韓市民共同声明―日本の政府・メディア・社会に向けて―】を発表する予定である。

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〔注1〕

当時の外相・椎名悦三郎は当『条約・協定』調印後の批准に向けた国会で次のように答弁している。

「経済協力というのは純然たる経済協力ではなくて、これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償5億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして・・」(参議院本会議/1965年11月19日)」

上に明らかなように、日本政府が行ったことは、賠償とはいっさい関係ないところの「経済協力」だったのである。

〔注2〕

『日韓請求権・経済協力協定』第一議定書には、次のように記されている。

「日本国が供与する生産物及び役務を定める年度実施計画は、大韓民国政府により作成され、両締約国政府間の協議により決定されるものとする。」(第一条)

「・・・使節団又は大韓民国政府の認可を受けた者は、実施計画に従い生産物及び役務を取得するため、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。/・・・これらの契約は、前記の基準に合致するものであるかどうかについて認証を得るため、日本国政府に送付されるものとする。」(第三条)

まさに、日本企業・政府のために存在したと言えるこのような新植民地主義的システムの「経済協力」を起点として開始された日本企業の韓国への怒涛の「進出」は、まさに、経済侵略と呼ばれる性格のものだった。76年3月1日に、金大中など12人の民主人士が発表した『民主救国宣言』には、「現政権のもとで締結された韓日協定は、この国の経済を日本経済に完全に隷属させ、すべての産業と労働力は、日本の経済侵略のいけにえにされてしまった」と記されている。


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