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水俣は現代の問題だった!〜レイバーシネクラブで『水俣一揆』を観る

 2月2日、レイバーシネクラブ定例会を戸越スペース(東京・品川区)で行った。土本典昭監督の『水俣 一揆〜一生を問う人びと』に過去最高の22人が集まり、初めての参加者も多かった。なぜ 今これだけの人が集まったのか。水俣は現代の問題だったのだ。

 『水俣一揆』は1973年水俣病裁判の直後、チッソ本社で社長と直接交渉する患者たちの 姿を記録したものだ。会社は熊本地裁判決に対して控訴せず、水俣病の原因は自分たちに あることを認めていた。しかし「死ぬ方が楽。生きる方がよっぽど大変」な患者たちは「 誠意をもって可能な限り」という言葉でお茶を濁そうとする社長に、生涯の医療と生活保 障を迫る。「私の償いをしてくれ。社長の二号にしてくれ」と食らいつく女性。「あんた の趣味は何だ。宗教は何か」と問い「人間たれ」と諭す住民。一対一で対峙する患者と社 長の両者を至近距離で撮る。すさまじい直接交渉の記録だった。

 上映後、『しえんしゃたちのみなまた』(2016年)を制作した加藤宣子さん(写真下)が、『水俣 一揆』のその後を語ってくれた。当時の患者たちの闘いによって、1789人が水俣病だと認 定された。しかし、その後に病気を申請しても一切認められず、住民が分断されていく。 「水俣病の最大の特徴は、国が責任をとらなかったことだ。水俣病=公害病だと認定しな がらも、『水俣の魚を食べてはいけない』という規制を一度もしなかったために、病気は どんどん広がった」と加藤さん。魚が売れなくなるのを恐れた天草地区の人たちは病気を 隠し、ギリギリまで訴訟に踏み切ることができなかった。被害の実態を国が調べなければ ならないはずなのに、患者自身が差別や体の痛みを堪えて告発しない限り、すべては隠さ れたままになっていた。

 何といっても「福島と重なった」という感想が多かった。国も企業も事実を隠し、国策 の犠牲になった人々は分断される。その原点ともいえる水俣で、患者たちは巨大な敵を相 手に怯むことがなかった。3・11後に初めて市民運動にかかわるようになったという参加 者の一人は「このようにやればいいんだ」と唸った。今の日本で、こんなにも強く怒りを あらわすことが出来ないのはなぜなのかという話になった。「若い人に少しでも水俣のこ とを知ってほしい」と、海外に暮らす姪御さんを連れて参加した女性は「交渉するシーン が続き、彼女たちには少し難しかったかもしれない。でも、作り物でないこの映画から、 何かをくみとってほしい」という。初めての人には『水俣〜患者さんとその世界』の方が わかりやすいかもしれない。でも「土本映画の中でこの作品が一番好きだ。怒りを記録す ることは財産だ」という人もいて、この作品を皆で観ることができてよかったなと思う。

 中華料理屋に移動して二次会へ。そこで木下昌明さんが語ったことが印象的だった。 「1970年代、土本さんを中心に『映画運動 試写室』という上映サークルをやっていた。観る能力を養わ ないと人間と社会を観る眼を養えない、そう土本さんは考えていた。今、映画を作る人は増えたが、 映画を観てディスカッションすることがますます必要になっている」。本当にそうだ。レ イバーシネクラブがそんな場所になることを目指し続けていきたい。〔堀切さとみ〕

*次回は3月21日午後6時から。詳細未定。


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