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非正規の過酷さと悔しさ〜メトロコマース後呂良子さんが証言

 非正規の不合理な差別を禁止した「労働契約法20条」を使った裁判が大詰めを迎えている。9月25日には、郵政東日本の控訴審が結審し、判決日が12月13日に決まった。そして翌26日午前には、メトロコマースの第3回控訴審が東京高裁で開かれた。この日は証人尋問で、こちらも次回の11月19日が結審となる。証人尋問に立ったのは、メトロコマース売店で働く後呂良子さん(写真上)。東部労組メトロコマース支部委員長である。

 原告代理人からまず賃金を問われた。「時給は現在1090円です。1年ごとに10円アップですが1100円で打ち止めです」「貯金はできない、病気はできません」「賞与は夏冬10万円ずつですが生活費の補充で消えます」「2年毎の家賃の更新料(14万円)を払うのが一番大変です。正社員と同じ住宅手当がほしいです」「テレビはありません。地デジ化したときに止めました」。月手取り13万円のぎりぎりの生活実態が淡々と語られた。後呂さんは現在64歳であと1年で定年だ。将来のことも聞かれた。「退職金もないので65歳になっても働くしかないのです。売店の先輩はいま3つの仕事を掛け持ちしています。私もきっとそうなるでしょう。非正規が置かれている現状は本当に過酷です!」。後呂さんの証言はここから涙声になった。満員の傍聴席も聞き逃すまいと静まりかえる。

 「会社との団体交渉で会社側の向井さんは私たちにこう言い放ちました。“いまどき路頭に迷う社員がいるのか?”と。そのとき驚いて言葉を失いました。会社は非正規の現状を知ろうともしていない。まったく関係のない存在だと思っている。その言葉が本当に悔しかったです……。同じ仕事をしている。せめて毎月安心して暮らせるようにしてほしいだけなのです」。

 わずか20分間だったが、後呂さんの証言はまさに2千万といわれる非正規労働者の置かれた現状を訴えるものだった。同じ仕事をしていても、賃金・賞与・退職金で大幅な差別があり、とてもまともに生きていけない状況なのだ。郵政の一審判決では、「非正規社員に年末年始勤務手当や住居手当が全く支給されないのは違法」とされ手当是正の命令が出たが、メトロコマースのほうは一審の請求がすべて棄却されている。

 法廷が終わったあと、裁判所前にはたくさんの人が集まり報告集会を行った。肩を並べて「労働契約法裁判」をたたかってきた郵政の仲間がアピールした。郵政原告の浅川喜義さん(写真上)は「郵政もメトロも焦点は賞与。一審ではこの部分は負けたが二審で勝ちたい。非正規にとっても賞与は生活給の一部でここの改善が重要だ。運動と行動で勝ち取っていこう」と訴えた。郵政西日本の同様の裁判も10月19日が結審。今年の年末から来年にかけて、労働契約法20条のメインの二つ裁判の控訴審判決が出されることになる。

 集会の最後に、東部労組須田書記長の音頭でシュプレヒコールが行われた。「東京高裁は非正規差別をなくせ!」「東京高裁は公正判決を書け!」「非正規差別を許さないぞ!」「非正規労働者の生活を守れ」「非正規労働者の尊厳を守れ!」。裁判所の正門入口に足を踏み入れんばかりのシュプレヒコールの迫力に、裁判所職員・警備員もたじたじの様子だった。

 なお「非正規差別なくせ!メトロコマース裁判」の第4回控訴審は結審で、11月19日(月)13.30〜東京高裁812号法廷で開かれる。(M)


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