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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(8月23日)〜 「英語より母語のマスターが先だ」
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●根津公子の都教委傍聴記(2018年8月23日)

「英語より母語のマスターが先だ」

 午前中は総合教育会議、午後は定例会が開催された。

<第1回東京都教育総合会議>報告

 今年度総合教育会議はこの日が第1回目。「これからの時代に必要な『読解力』を育てる』という議題で、2011年度から「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」を立ち上げ、調査研究をしてきたという新井紀子教授(国立情報学研究所、(社)教育のための科学研究所)が「AI時代を生きるための『読解力』とは」と題して講演。その後、淵江高校数学科の主任教諭と江戸川高校の国語科教員から短い報告があった。

 新井教授の話は――。AIは、意味は理解できないが、キーワードを上手くたくさん入れれば、「よく当たる」こともある。一方、意味がわかるはずの高校生が、意味のわからないAIに敗れるのはなぜかを、文章題の質問に答えさせることで調査した結果、
 \掬率(読解力)と偏差値とは相関関係にある。
◆―学援助(金受給)とは強い負の相関関係にある。
 中学生は学年が上がるごとに読解能力が上がるが、高校生は上がっているとは言いがたい。 とのこと。
 この調査結果から新井教授が導き出した結論は、
「教科書が読めない→予習も復習もできない。貧困下でも塾に通わなければならない→AIに職を奪われる、新しい職種に移動できない→労働力不足なのに失業や非正規雇用が増大→格差拡大、内需低下、人口がさらに減少」したがって、「中学を卒業するまでに、教科書を読めるようにすることが公教育の最重要課題」とのこと。

  銑は調査するまでもなく、予測できると思いつつ聞いていたが、読解力がないことで「労働力不足なのに失業や非正規雇用が増大」と結論づけるのは暴論だ。首切り自由・非正規雇用を進める国の政策に目を向けず、向けさせず、それが各人の読解力=学力に起因すると結論づけ、生徒の自己責任とするものだ。

 講義の後、小池都知事や教育委員から質問ややりとりがあった。その中から幾つかを挙げる。
小池知事:東京は英語教育を早期から行なっている。幼いときから英語をやると、読解力がなくなるか。
新井:母語がしっかりする前に慌てて英語をしなくていいのでは。英語を使いたいのであれば、音声翻訳が使える。
小池知事:プログラミング教育も東京では早期にやっているが、それも良くないのか。
新井:プログラミング教育をイベント的に年に何回かしても成果はない。プログラミングの基本は、定義をよく読むこと。
宮崎教育委員:英語よりも母語のマスターが先だ。

 学習指導要領の改定に伴い、今年度から3,4年生が英語活動を、2020年度から5,6年生は英語が教科化される。都教委は全国に先駆けて英語教育に力を入れ、多大な金をつぎ込んで、英語村・体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」をこの9月に開業させる。宮崎教育委員も他の教育委員も、英語教育に反対する発言を定例会の場でしてはこなかった。ここでの宮崎教育委員の発言の趣旨は何だったのか。
 新井教授の発言を受けて、都教委は英語教育を再考する用意はあるか。

<都教委定例会>報告

 定例会の公開議案は「来年度使用の高校用教科書の採択について」、公開報告が「第2期都教委いじめ問題対策委員会答申について」。
 教科書採択は、各学校が選定した教科書がすべて採択された。
 実教出版「高校日本史B」が「日の丸・君が代」について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述したことに対し、都教委は2013年6月27日の定例会で、「都教育委員会の考え方と異なるものである」から「使用することは適切でないと考える」とした「見解」を各学校に通知し、選定を「0」にさせてきたことへの自戒的反省はどの委員からもなかった。2018年度改定の実教出版「高校日本史B」がこの記述を変更させたために、都教委「見解」は姿を消したが、学校に圧力を加えた都教委の事実を、とりわけ教育委員は忘れてはいけない。この「見解」を決めるのに、非公開の教育委員会を秘密裏に開いたのだから。

 「第2期都教委いじめ問題対策委員会答申」は、2015年度と2016年度を比較して成果があったこととして、「学級担任やアンケート調査等により、いじめを発見した件数が増加」した、「学校いじめ対策委員会が対応した件数及びいじめの解消率が増加傾向」「子供自身にいじめ問題について考えさせる取り組みをしている学校が増加傾向」にある等を挙げる。また、課題として、「インターネットを通じて行われるいじめに対する対応強化」「誰にも相談していない子供の支援の充実」「子供が多様性を認め、自己肯定感を育む場や機会を意図的に設定」するなどを挙げ、改善の方向性を挙げる。
 しかし、これではいじめの抜本的解決にはならない。大人社会には差別がまん延し、その中で子どもたちも生きているのだから、差別分断の社会を変えることにしか、いじめの解決策はない。また、障害を持つ子どもを特別支援の名の下に分離する教育を、世界の流れに倣い、“どの子も一緒”の学校教育にすることだ。


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