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LNJ Logo 太田昌国のコラム:妻たちに「平和」と書かせ武器売買
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 ●第8回 2017年11月10日(毎月10日・25日)  

 妻たちに「平和」と書かせ武器売買

 妻たちに「平和」と書かせ武器売買(北海道 島田礼子)。11月8日付けの「朝日川柳」に採用された作品である。最近の政治ニュースは、見聞きするに堪えないので、テレビ・ラジオ・新聞に熱心に接するわけでもない。これではいけない、世の中で何が進行しているか分からなくなる、しかもこのような時評を随所で書いているのに――とは思うものの、ニュースの内容自体も、その報道ぶりも、異常なまでに堪え難い。ニュースをいっさい拒絶したいと思うのは、この異常事態に馴らされるものかという、ある意味ではまともな心身反応なのではないかと思えてくる。そんな私でも、米日首脳の妻たちが都内の小学校を訪れ、子どもたちと一緒に習字を楽しんで、その挙句に「平和」という漢字を半紙に書いてみせたという「出来事」くらいは耳目に入る。

 他方、ゴルフと会食三昧の合間に「会談」も行なったという男たちは、記者会見の場でそれぞれ次のように語っている。
・米国大統領――「日本国首相は米国から大量の防衛装備を購入するようになるだろう。そうすれば、ミサイルを上空で撃ち落とせる。米国から買えば米国で多くの雇用が生まれ、日本はヨリ安全になるだろう。」
・日本国首相――「日本の防衛力を質的にも量的にも拡充していきたい。米国からさらに購入していくことになるだろう。」(11月7日付け「毎日新聞」の「要旨」に基づく)
 なるほど、冒頭に掲げた川柳が裡に秘める風刺と怒りは、よほどのものに違いない。

  背後にある事態を、もう少し見ておこう。大統領が記者会見でも言及した最新鋭ステルス戦闘機F35A(写真)は、11月7日、沖縄・嘉手納米軍基地で記者団に公開された。米軍は、2040年代までには大半の戦闘機を、この「史上最も高価な戦闘機」に置き換えるが、総数は2456機に上るという。十数ヵ国におよぶ「同盟国」も今後導入を予定しており、日本は中期防衛力整備計画で28機分の調達経費を計上し、最終的には42機の取得を目指すとしている。調達価格は1機約147億円で、米国内の価格より40億円高くなっている(11月8日付け「しんぶん赤旗」による)。

 「武器商人」の計算高さは、並みのものではない。2012年に発足した第二次安倍政権下では、軍事費は毎年平均2%前後の伸びをみせており、2016年からは総額5兆円を超えている。この伸びの要因の一つが、米国製兵器の大量購入にあるというからくりを見抜いておきたい。これは、米国からの有償軍事援助(FMS)に基づいてなされているが、FMSとはForeign Military Salesの略称であり、文字通り、「対外的に武器をセールスする」ためのものである。製造会社と輸入国の間に米国防総省が仲介に入る武器輸出方式だから、いわば官民挙げて「武器商人」と化する国策的な仕掛けである。ここでは、米国の意向で価格も納期も決まるというから、売り手にとってこれほどよい商売は、ない。

 政治ニュースに心を閉ざしつつも、こんな状況だけは把握していたところ、この「武器商人国家」から、新たな情報が届いた。米ブラウン大学ワトソン研究所が報告書「戦争のコスト」最新版を発表した。→http://watson.brown.edu/costsofwar/
 それによると、2001年「9・11」以降の「反テロ戦争」で米国が使った軍事費は4兆3510億ドル(約491兆円)である。最近の日本の国家予算額に応用すると、およそ5年分相当額を米国はこの16年間の戦争に使ったことになる。大統領自ら「武器セールス」に励む理由はここにある。日本国首相が誇る「揺るぎない絆によって結ばれている同盟国」の本質は、こうして「戦争至上主義」にある。虚偽に満ちたニュースの壁を破ることで、この事実を見極めていきたい。 


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