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太田昌国のコラム「サザンクロス」 : 21世紀初頭の9月に起こったふたつの出来事 | ||||||
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21世紀初頭の9月に起こったふたつの出来事戦争とは「国家テロ」の発動にほかならないと私は考えている。「戦争」を「テロリズム」の範疇に入れるこの考え方は、無念にも、世の中の常識とはなっていない。かくして世間では、無人機爆撃も含めていったい何十万人の人びとを殺したのかもわからない「反テロ戦争」と、いわゆるテロリストが行なう「卑劣な殺戮行為」の間に万里の長城を築き、前者を意識的にか無意識的にか肯定し、後者は口を極めて非難する言動がまかり通ることになる。だが、バルセロナにおける今回の恐るべき出来事は、16年前に米国が始めた「反テロ戦争」の延長上に〈不可避的に〉現われたことでしかない。つまり、両者には「因果の関係」があるのだ、と私は思う。 現在の悲劇的な現実は、「テロ」と「戦争」の絶えざる応酬によって生まれている。「戦争」によって「テロ」をなくすという夢物語は破綻を来して久しいのに、米国政府は去る8月21日、アフガニスタン駐留軍の増派を決定した。戦争に次ぐ戦争が刻み込まれている米国史にあっても、16年間も続けた戦争はない。「反テロ戦争」はこのままでは、来る10月には17年目に入ることになる。アラブ世界を軸にしつつも世界じゅうを、これほどまでの戦火と混乱の中に叩き込みながら。「反テロ戦争」なるものの欺瞞性に気づき、戦争とテロの双方を廃絶するという強固な決意に基づいた思想と行動が世界各地に生まれ、力強く成長しない限り、現在の悲劇に終わりの時は来ないのだ。
それから15年後の現在の状況はどうか。不思議なことに、この日本では、瀬戸際の緊張感を利用して防空頭巾でミサイルから身を守りバケツリレーで飲料水を確保する戯画的な避難訓練をやらせる政治が横行している。朝鮮政府の態度にも問題はあるが、「外敵」を前に人びとの不安を煽るばかりである。そして米朝関係は、まさにこの核・ミサイル問題をめぐって、ふたりの独裁的な政治指導者が発する挑発的な言辞によって、緊張している。世界各地から、この危機的な東アジア情勢を危ぶむ声が上がっている。「朝鮮危機」はそれほどの「世界性」を帯びてしまった。 このような事態を招いた主要な原因は、平壌宣言を貫く国交正常化と核問題解決の精神を骨抜きにし、拉致問題だけの優先解決を謳う安倍晋三路線にある。拉致という国家犯罪がいかに許されざることであるとしても、外交交渉における物事の軽重を計る知恵すら持ち合わせていない政治家が長く君臨し続けることの不幸に、(繰り返し言うが、これは世界全体を巻き込んでいる危機なのだ)私たちは気づくべき秋だろう。 〔著者プロフィール〕 Created by staff01. Last modified on 2017-08-25 11:54:29 Copyright: Default |