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LNJ Logo 飛幡祐規 パリの窓から : フランス第五共和政末期の大統領選と「ラ・フランス・アンスミーズ(屈服しないフランス)」
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 第41回・2017年3月21日掲載

フランス第五共和政末期の大統領選と「ラ・フランス・アンスミーズ(屈服しないフランス)」


 *写真=3月18日「ラ・フランス・アンスミーズ」の行進より 撮影=Christian Fonseca/飛幡祐規

 この4月〜5月に大統領選を控えるフランスでは、前代未聞の混沌とした政治状況が続いている。諷刺週刊紙カナール・アンシェネは1月25日、保守・中道の大統領候補フィヨン(前回のコラム参照)に関する汚職疑惑を報道した。議員アタシェ(秘書)として、妻のペネロープに長年給料を払っていた事実が暴露されたのだ。妻はこれまで「自分は専業主婦、夫の政治には関与しない」と公言してきた人で、国会に足を踏み入れたこともないため、実質が伴わない雇用ではないかと財政検察が調査を開始した。また、ペネロープが議員秘書のみならずフィヨンの友人が刊行する文芸誌からも報酬も受けたこと、フィヨンの娘・息子も議会から給料を得たことなど、いくつもの疑惑が次々と報道された。これに対してフィヨンは、議員が家族を秘書に雇うのは合法だとひるまず、これはメディアと社会党政府による右派候補者をおとしめる陰謀だと攻撃した。そして、告訴されないかぎり候補者を降りないと宣言した。

 フランスでは議員が家族を「協力者」として雇うことは許されており、国民議会議員の約20%、元老院議員の約17%が配偶者や子どもを雇っているが、給料の上限を設けるなど近年は規制が厳しくなった。だが、問題の核心は、汚職・収賄疑惑を何件も抱えるサルコジに対して「清廉潔白」なイメージを売り物にしていたフィヨンが、家族に報酬を与えてきた事実を隠してきたこと、それも偽りの雇用である疑いが大きいことだ。労働時間・定年年齢延長と緊縮政策、つまり「もっと安くもっと働け」を国民に要求する大統領候補が、最低賃金よりはるかに高い給料(長年の議員秘書報酬の総額は手取り68万ユーロ=8300 万円以上)を、仕事内容が曖昧な「議員秘書」として妻に払っていたことは、たとえ違法でなくても政治家の道義上許されない行為だ。ヨーロッパをはじめ他の民主主義国なら大統領候補にとどまれないはずだが、フランスの保守は異常なことに、「悪いことは何もしていない、これはメディアと司法による個人攻撃だ」と主張するフィヨンへの支持を固めた。

 もっとも、保守内部でも造反があり、ジュペあるいは別の候補を立てるべきだという動きもあった。2月末に告訴のための調査開始が決定され、3月15日にフィヨン夫妻が検事尋問を受けることが決定されると、告訴の危険性も高いためフィヨンのキャンペーン本部を辞任する有力議員が続出した。しかし、フィヨンは前言をひるがえして候補者をおりないと発表、3月5日の日曜にトロカデロ広場で支持集会を催すことを決めた。この集会は、同性婚反対デモを組織した反動右翼の団体(アメリカのティーパーティ運動を思わせる)がオーガナイズし、全国から4万人ほどの支持者がバスで集まった(主催者発表は20万人)が、問題はフィヨンが共和国の基盤機構である司法と立法(自分の党派の議員)の行為を不当だと罵り、「自分の正当性を国民に問う」ポピュリズムの行動をとったことだ。集会に出向いた人々は、カルト集団のような熱狂的フィヨン支持者だった。

 さて、ジュペは右寄りに過激化した共和党の一部と穏健派、中道を自分が体現することは不可能だと判断し、トロカデロ集会の翌日に候補者にならないと宣言した。かくして、出馬の締切(500人の国・地方自治体の長や議員の推薦が必要)の3月17日までに共和党が他の候補者を立てる可能性はなくなり、フィヨンがゴリ押しで候補者に居座った。しかし彼は3月14日に実際、公金横領や隠匿などの罪状で告訴されたため、中道支持者や共和党内部でもフィヨンに投票しない人がけっこう出てくることが予想される。

 一方、世論調査でずっと第一位をつづける国民戦線のマリンヌ・ル・ペンも、欧州議員アシスタント雇用に関わる疑惑(国民戦線本部のための仕事を欧州議会に払わせていた)や財産申告疑惑などで司法の調査を受け、側近はすでに告訴されているが、支持率に全く影響していない。2012年総選挙以来、すべての選挙における国民戦線の政党献金疑惑を司法が調査中で、それらに元極右団体(ネオナチ)のメンバーたちが関係していること(マリンヌ・ル・ペンは父親より「穏健」で、国民戦線から極右イメージを消すことに成功したが、彼ら極右の人物が財政面では主要な位置をしめている)。また、ロシアから献金を受けており、マリンヌ・ル・ペンはプーチン支持を表明している。そうしたさまざまな疑惑を調査した本が3月15日、インターネット新聞メディアパルトの記者と週刊誌マリアンヌの記者によって発刊された。奇妙なことに、国民戦線は主要政党の政治家の汚職を「政治家はみんな腐敗している」と弾劾して支持率を高めてきたのに、国民戦線の政治家の汚職が報道されて司法に調査を受けても、支持者たちはそれがメディアと司法のでっちあげだと主張する彼らのチャンピオンの言説を信じるらしいことだ。トランプやフィヨンの支持者も然り、そこにはカルト集団の「信奉者」のようなメカニズムが働いているのだろうか。

 さて、世論調査では1月末にスキャンダルが勃発するまで、次期大統領はまず間違いなく保守のフィヨンだろうという予測だっだが、以後はずっと国民戦線のマリンヌ・ル・ペンがトップ(25〜27%)の座を占めている。そして、次点には「右でも左でもない」と自称する新しい政治運動「アン・マルシュ(進行中)」をつくって11月に出馬した前経済大臣エマニュエル・マクロンが、フィヨンを抜いて進出した(3月中旬の調査で25%くらい)。2002年以来、3度大統領選に出馬した中道党モデムのフランソワ・バイルー(今回はジュペ支持だった)をはじめ、中道右派やエコロジスト、社会党大臣・議員を含む政治家が次々とマクロン支持を表明したのだ。また、電話産業、財政界、プレス・報道界などの有力オーナーも多数マクロンを支持している。政策はEUのネオリベラル綱領を進めるもので新しさは全くないのだが、エスタブリッシュメント出身でありながら政界にいなかった「新しさ」と若さ(39歳)、マーケティングに基づいたコミュニケーション戦略、メディアへの頻度のせいか、知名度と人気が急上昇した。第二次投票が世論調査の予想どおりル・ペン対マクロンなら、次期大統領はマクロンになる可能性が高い。EU離脱を望まない保守・中道のみならず、左派でもル・ペンの当選を阻止するためにマクロンに投票する人が多いと予測されるからだ。マクロンは政党をまだ組織しておらず、6月に行われる総選挙の候補者の半数はこれまで政治家でなかった市民にしたいと表明しているが、二大政党がガタガタになった現在、マクロンのもとで政治生命を保とうとする議員が続出しそうである。いずれにせよ、経済界とメディアの支配的集団(オリガルシー)の後押しーーフランスのメディア90%を所有する9人のうち5人がマクロン支持ーーを受けるマクロンの政治は、ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサの小説『山猫』(ヴィスコンティによる映画化でも有名)に出てくる台詞「すべてがそのまま残るように望むなら、すべてを変えなくてはならない」のようになるだろう。

 保守候補のスキャンダルと右傾化、差別政策を掲げる国民戦線の優勢(スキャンダルにもかかわらず)、マーケティングによる政治(の否認)・・・この大統領選前の状況の中、嘆かわしいのは主要メディアで政策についての議論がほとんどされなかったことだ。とりわけ、左派の政策綱領はほとんどとりあげられなかった。1月後半に社会党と、同党と同盟する小政党・組織による候補者選挙(マクロンとメランションは最初から「意味がない」と不参加)が行われ、テレビの討論でようやく環境保護のエネルギー転換政策、市民参加、ベーシックインカムといったテーマが議論された。この左派候補者選では再び世論調査の予測がはずれ、優勢と見られていたヴァルス前首相ではなくて、現社会党政府よりずっと左派の政策を掲げたブノワ・アモンが6割近くを得票して候補者に選ばれた(投票者数は200万人弱。ヴァルス元首相を落選させるために投票した、社会党支持以外の左派の市民も多かったと思われる)。

 アモンの政策は、2016年2月に発足した「ラ・フランス・アンスミーズla France Insoumise(屈服しないフランス)」という運動を通して昨年10月にすでに発表されていたジャン=リュック・メランションの政策綱領と(EUと外交、ベーシックインカムを除くと)共通点が多いが、メランションのプログラムは主要メディアから無視されつづけたため、アモンの出馬でようやく脱原発をはじめ環境政策もとりあげられるようになった。そして、 昨年11月に緑の党の候補者選で勝利し(この候補者選でも「本命」が第一次投票で敗退)出馬した緑の党のヤニック・ジャドとアモン、メランションが共闘すれば左派の勢力が増大するだろうと、共闘を求める声が市民から上がった。アモンとジャド陣営は協議の末、ジャドが候補からおりた。

 緑の党はすでに分裂・弱体化しており、ジャドは世論調査で2%程度の低い支持率だったため(5%得票しないと選挙費用は国から返済されない)、社会党のアモンを支持して6月の総選挙で緑の党の議席を確保する必要がある。共同のプログラムには2050年までに脱原発と100%再生エネルギー、ビュールの核廃棄物最終処理場やノートルダム・デ・ランド空港建設中止などがあげられた。しかし、緑の党は2012年の大統領選でも第二次投票前に同様の共同プログラムを社会党と交わしたのだが、オランド政権はそれらを無視した。ジョスパン左翼合同政権(1997年〜2002年)の際も同様に、エコロジストの主張はほとんど実現されなかった。したがって、今回もまた裏切られる危険性は高い。

 というのも、アモンが掲げる政策は現政権による5年間のネオリベラル的な緊縮政策への強烈な批判となっており、社会党内で彼の路線を受け入れられない者は多いのである。右派では即座にマクロンに鞍替えする幹部や議員が出たし、ヴァルス前首相もアモンの政策を批判して、約束(候補者選の勝者を全員が支持する)を破って不支持を表明した。アモンのキャンペーン・チームには経済学者のトマ・ピケティなどが加わったが、社会党は一丸となってアモンを応援していない。また、アモンも社会党にとどまる以上、ネオリベラル思考の右派との調整を余儀なくされるのは見えている。これまでの生産・消費システムの変換を望まない社会党内の他の者たちと共に、EUのネオリベラル・緊縮政策に反する環境保護・エネルギー転換を軸にした新しい経済政策(農薬や環境ホルモン禁止を含め)を掲げるのは無理ではないだろうか。メランションはこの矛盾(社会党の変革は不可能であること)を実感したからこそ、2008年の党大会の後に社会党を抜けて左翼党をつくり、昨年「ラ・フランス・アンスミーズ」の運動を発足させた。また、マクロン法、エル・コムリ法という二つのネオリベラル的経済法を強行採決し(憲法49条3項を6回行使)、エル・コムリ法への大規模な市民運動を威圧的・暴力的な治安部隊の対応によって潰そうとした社会党政府、移民系やエコロジストの若者など市民に対する警察の異常な暴力を厳重に取り締まらない政権に対して、「もう二度と社会党には投票しない」と表明する左派の市民が増えていることを見れば、(あてにならない)世論調査のアモンとメランション支持の数字を足して左派が結集できると期待するのは、現実的ではない。

 メディアはアモンとメランションが共闘しなかったことを「エゴの問題」に矮小化したが、共闘のための共同プログラムを練るには長い時間が必要であることを、これまでの歴史が語ってる。「ラ・フランス・アンスミーズ」のプログラム「共同の未来」は、メランションの2012年の大統領選(第一次投票で11,1%得票)のときの綱領を基盤に、さまざまな部門の知識人、労働組合員、専門家と大勢の市民が共同で、昨年2月〜9月に練り上げたものだ。83項目357の提案にまとめられたプログラムと、テーマごとの解説書が昨年秋から発刊されている。第六共和政をつくるための憲法制定議会選出(くじ引きによる議員選出を含む)、議員と大統領のリコール制、「緑の規定」(自然を再生できない開発と過剰生産の禁止)を憲法に書き込む、脱原発と100%再生エネルギープラン、有機農業への転換(まず学校給食をすべて有機食品に)、エル・コムリ労働法撤廃、最低賃金の16%引き上げ、真の男女同一賃金、社会保険100%還付、年金支給年齢を60歳、保険支払い年数を40年に戻す、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定への反対、EU条約の再交渉といった提案である。そして、それらを実践するための資金をどのように調達するかについての詳細も、去る2月19日に発表した。https://avenirencommun.fr/avenir-en-commun/

 20〜30代の若者、女性を多く含む大勢の市民の協同作業というこの政策綱領の作成プロセスとその内容は、民主主義の再生という面だけから見ても注目に値するが、主要メディアは「ラ・フランス・アンスミーズ」についてほとんど報道しなかった(500人以上の推薦を得て出馬が確定して以降、ようやく少し報道されるようになったが)。メランションはそれを見込んで、サイト、ブログ、ツイッター、Youtubeなどネット上のコミュニケーション手段を早くから使った。その結果、ミーティングや「週刊ニュース」の動画を発信するメランションのYoutubeは、政治家のうち最高のアクセスとなっている。スペインの左翼政党ポデモスの運動、2016年春の労働法反対運動などにおいてYoutubeが効果的に使われた前例に学んだのだ。また、フランスでもネットで極右が非常に活発な状況を憂慮し、とりわけ若い世代が駆使するネットでのコミュニケーションを重要視した。http://melenchon.fr/https://www.youtube.com/user/PlaceauPeuple

 一方、「ラ・フランス・アンスミーズ」は昨年の夏から「キャラバン・アンスミーズ」と称するトラックを全国に派遣し、選挙人登録をしていない若者たちが多い都市の郊外地区を回って、登録を促すキャンペーンも行った。インターネットとこうした実地の運動をとおして、「ラ・フランス・アンスミーズ」の会員は約27万人を数え、全国と国外に2800の委員会がある。選挙運動の資金は会員の寄付によるもので、金融・経済界の援助(むろん上限があるが)を受けるマクロンや保守の候補たちの額には全く及ばないが、各地のミーティングには毎回数千人、会場を溢れるほどの人が集まっている。2月5日のリヨンでの集会ときは、同時にパリ郊外のオベルヴィリエにメランションがホログラムで現れるという、選挙キャンペーンで初めての試みがなされた。

 3月18日、「ラ・フランス・アンスミーズ」はバスティーユ広場からレピュブリック広場まで「第六共和政のための行進」を行った。数々のスキャンダル(フィヨンについては最近さらに、アフリカの独裁者たちと懇意の人物から高級スーツの贈り物を受けたことが暴露された)や二大政党に対する拒絶感の高まりによって、第五共和政は実際、末期状態を呈している。メランションはこの状況に終止符を打ち、より高い次元の民主主義を実現するために、第六共和政憲法をつくらなければならないと主張する。大統領の権力が強すぎて専制君主化すること、戒厳令と緊急事態令についての条項によって権力の独裁化を許すことをはじめ、アルジェリア戦争時にド・ゴール将軍のために作成されたような第五共和政憲法が現代に適さないどころか危険であることは、多くの専門家や市民が指摘している。しかし、二大政党の政権交替による政治が心地よすぎたのか、これまで大統領をはじめ(故ミッテラン大統領は第五共和政の批判者だったのに)政治家の中で、憲法を作り直そうという動きは大きくならなかった。

 メランションはフランス大革命やパリ・コミューンにおけるプップル(人民、国民)の歴史的な役割に焦点を当て、市民が真に参加する憲法制定議会によって、国粋主義や資本・金融に脅かされる民主主義国家を再生させようと主張する。彼はこれを「市民による革命」と呼ぶ。民主主義の活性化を望む市民が多いことは、インターネット上で「市民による市民の大統領候補選出」が昨年春から行われたことからもわかる。3万人以上が投票し、政策綱領が何ヶ月にもわたって協同で練られた興味深い試みである。候補者に選ばれたシャルロット・マルシャンディーズという42歳の女性は、議員や市長500人の推薦を得られず、出馬できなかった(この制度も批判を受けている)が、政治への新しい関わり方が求められていることを、この試みも示している。そして、18日の行進には、全国からなんと10万人以上(主催者発表13万人)の市民が集まったのである。

 バスティーユからレピュブリック広場への行進は平和的で、プログラム「共同の未来」に提案されたさまざまなスローガン(議員兼職の禁止」「緑の規定」「16歳から選挙権」「中絶の権利を憲法に書き込む」...)や各自がつくったスローガン(ポール・ヴァレリーの詩句「風立ちぬ」も)が掲げられた。若者や家族連れ、高齢者などさまざまな市民が好きなように列を組み、メランションなど「幹部」の列の前を大勢が歩いていた。ときどき、「レジスタンス(抵抗)!」という言葉がスローガンのように叫ばれる。三色旗がたくさんあった(出発点で配られた)のも、いつもの左派のデモと異なる点だろう。メランションのスピーチの最後はラ・マルセイエーズで締めくくられる(そのあとにインターナショナルも歌われたが)ため、愛国的なニュアンスが気になる人もいるようだが、彼は「ラ・フランス・アンスミーズ」の運動をとおして、革命や社会運動の歴史に支えられたフランス共和国の価値観「自由・平等・友愛」を強調したいのではないだろうか。

 プログラム「共同の未来」を非現実的だと決めつける人々に対して、メランションは答える。「19世紀末にイギリスで子どもの労働を禁止しようとしたときも、1936年に人民戦線が週40時間労働法を決めたときも、1982年に有給休暇が5週間に延長されたときも、『良識ある市民』を自負する人々は経済が成り立たないと反対した。不当な現実に反逆して闘った人々がいなかったら、現在の社会はない。自分たちが住みたいと願う社会を、私たちがつくるのだ」。

 メランションは現存のフランス政治家の中で最も演説がうまく、教養も高いが、「ラ・フランス・アンスミーズ」の運動は、カリスマ指導者が支持者・信奉者に上から話しかける(マクロンはその口だ)アプローチとは対極にある。ミーティングでメランションはさまざまなテーマをわかりやすく説明しながら、「あなたたちには責任をもって考え、行動する能力がある。協同して新しい社会をつくろう」と促す。デモでは「私たちのプロジェクトだから、第六共和政のために行進!」「考える、議論する、決定すること。私たちにはそれができる!」などと書かれたプラカードを見かけた。また、プログラム「共同の未来」を読み、メランションのビデオを見て、初めて自分も政治に関わろうという気になったという若者たちもいた。「ラ・フランス・アンスミーズ」は新しい政治のやり方を提案・実践し、一部の人たちには政治への関心を呼び起こしているのだ。

 国民戦線の民族差別に基づいた価値観に対抗すると同時に、金銭が第一で競争主義が個人を分断する現在のネオリベラル社会に対しても、「ラ・フランス・アンスミーズ」ははっきりノンを突きつける。仕事のストレスで自殺する人が続出する非人間的な社会ではなく、他者を心がける社会、誰もがきれいな水と空気、エネルギー、安全でおいしい食べ物、教育と文化など人間らしい暮らしに必要なものを享受できる社会をつくるべきだと。そして、環境破壊が進む今日、人間と地球、他の生物とが調和的に共存できる世界を提案する。「ラ・フランス・アンスミーズ」のロゴはギリシア文字のファイ(φ) で、調和を意味するという。

 メランションの支持率は世論調査で11〜12%といわれる。テレビ討論などで政策綱領がより広く知られるようになっても、第二次投票に残れる可能性は低い。大統領選後の6月には総選挙が控えているが、大統領に誰がなっても、二大政党の共和党と社会党は分裂して、マクロンを中心に保守穏健派と中道、右寄りの左派がいっしょになった新たな政党が生まれる可能性が高い。「ラ・フランス・アンスミーズ」が国民戦線と右傾化した保守、EUスタンダードの中道に対抗できる左派の新たな政治基盤になれるかどうか、注目していきたい。

 2017年3月20日 飛幡祐規(たかはたゆうき)


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