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LNJ Logo 牧子嘉丸のショート・ワールド(34) : 架空激論『生前退位』
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    第34回 2016年9月1日

架空激論『生前退位』


司会―先日、天皇陛下から国民へのビデオ・メッセージがありましたが、今日はその「生前退位」問題について、三つの団体から代表をお招きしてご意見をうかがいたいと思います。まず、「天皇陛下を元首にする日本臣民会議」(略称天元会)の大和スクネさん。それから「天皇が普通の国民になることを支持する関西市民連合」(天普連)の只野乙さん。最後に「革命的反天皇制連絡会議」(革反天)の難波大作さんのお三方です。どうぞよろしくお願いします。まず、天元会の大和さん、こんどの生前退位についてどうお考えですか。

大和―とんでもないことです。まったく論外で、皇室典範のどこを見ても許されることではありません。陛下におかれましては、日本国の存在の根幹が陛下ご自身の元首としての地位にあることをお考え頂きたく思います。こういうご発言が天皇制存続を危うくしかねないのです。ですから、絶対反対です。

司会―そうですか。じゃ、「天普連」の只野さんは。

只野―私たちはこんどのメッセージをうけて、天皇アキヒトさんも普通の爺さんになればええと思うてます。ご高齢でもあるし、リタイアされて、まずはゆっくり休んでおくなはれという普通の、やや関西的な庶民感情です。せやから、生前退位を支持します。

司会―なるほど。では、「革反天」の難波さんは。

難波―我々わー、天皇制そのものに反対し、その廃絶をめざす階級的な見地から、生前退位は重大な憲法違反であるし、またあくまでも国民の象徴として歩みたいなどというのは、天皇制を延命したいという反革命的策動に他ならないとして断固反対である。

司会―そうですか。生前退位も何も、天皇制そのものをやめちゃえ、という意見ですね。大和さん、どうですか。

大和―今では共産党でさえ天皇制反対なんて言わないのに、まったくの反日・極左分子ですね。こんな大不敬・大不忠のやからは、今に共謀罪ができたら、すぐさま処罰すべきですよ。

難波―何を言うか。極反動のファシストめ。あんたたちは口では陛下、陛下と忠義面をしてるが、結局自分たちの思い通りに天皇を制度に縛り付けてるだけじゃないか。 我々ワー、天皇を天皇制からァ人間としてェ解放するためにあくまでも闘うゾー。

司会―なつかしい全共闘時代のアジ演説ですね。いきなりガチンコになっちゃいましたが、只野さんらのスタンスは。

只野―私らは特にイデオロギーもないし、天皇制がどうのこうのというより、寄合で「わしも年やさかいもうやめたい、倅にあと継ぎたいやんがどないやろ」と言うので、「そりゃそうやな、おっちゃん」というノリで受けとめてます。結構、可愛いらしい隠居はんになりはると思いますよ。

司会―革反天の難波さんなんか、こういう市民的な考え方はどうなんですか。

難波―完全な現状追認の日和見主義であり、天皇制の現実に目を向けない逃避路線ですね。天皇にシンパシーを寄せるようでいて、結局は大御心にすり寄っていく極めて心情的・俗情的な市民運動ですよ。

司会―大和さんはどうですか。

大和―私たちは「革反天」ですか、こんな反日・極左なんて問題にしてません。むしろ、生前退位を支持するという8割以上の国民の声にのって活動しようとする、「天普連」のようなプロ市民派を警戒しています。陛下を利用して、護憲やら象徴天皇制を維持して、今のアベ政権との離反を画策しているのでしょうが、馬鹿な国民がだまされないか心配しています。今や一億ポケモンGOみたいにして行きかねないですからね。

司会―只野さん、両方から攻撃されてますが。

只野―私らは天皇を元首にするなんてもちろん反対です。だからといって、天皇制を今すぐ廃止しろとも思ってないし、できもしません。そやのうて、アキヒトさんというひとりの人間が発したメッセージを市民として、ということは同じ人間として共感し受けとめたいということです。そら、父親のヒロヒト天皇の戦争責任についても深く考えておられるだろうし、憲法を遵守し平和を守る意思は尊重すべきやし、大いに評価してもええと思いますよ。利用しようやなんてとんでもない。それはおたくらでしょ。じゃ大和さんに伺いますが、なぜ象徴じゃなくて、そんなに元首のこだわるんですか。

大和―あのね、天照大神の直系のニニギノミコトが高天原から天下られ、皇孫の神武天皇によって建国された国が日本なのです。その御子孫が陛下であり、それはとりもなおさず元首であり帝王なのです。それが今時大戦で米国占領軍によって、日本弱体化の餌食になったという痛ましい悲劇をご存知ないんですか。それに元首がいなくて、だれがお国のために死ぬんですか。だれが血を流すんですか。戦争するためには元首が必要なんです。

難波―何を言ってるんだ、このアナクロ親父は。それから、只野さんね、あんたはさかんに普通の市民の立場って言うけど、この格差社会で多くの市民が貧困にあえいでいるなかで、天皇家だけが税金であんなぜいたくに暮らしているのはおかしいと思わないのか。天皇の戦地慰霊でも、被災地慰問でも素晴らしいと持ち上げているけど、その陰でどれだけの費用がかかっているか。また警備・監視・尾行・スパイ行為でどれほどひどい人権侵害があるか。一市民として天皇を迎えるなんて話じゃないんだよ。

只野―もちろんそういう弊害や人権蹂躙には反対です。また人間はみな平等である方はいいに決まってます。しかし、今は生前退位のことを問題にしているんで、さっきからそう発言しとるわけです。

大和―ほらね、この反日・極左も、プロ市民派も天皇制に反対なんですよ。一度生前退位なんか認めたら、こんな連中が勢力をもつと退位を迫るのは目に見えてますよ。

難波―じゃ、天皇に代わって、お前らが生前退位しろ。

大和―黙れ、この国賊・非国民め。こんな幸徳一派の残党みたいな連中は今に大逆罪で処罰してくれるわ。

只野―私はただアキヒトはんがはよ普通のジージになったらええと思うとるだけなんですわ。

司会―ちょっと荒れてきたようなので、ここらへんで。どうもありがとうございました。今の天皇制も、なんかワダミみたいに「死ぬまで働け」という国営版ブラック企業に思えてなりませんが、みなさんどうですか。それにしても、陛下のご意志なんかそっちのけで、あのマリオは自分の総裁任期延長で頭がいっぱいなんでしょうね。なんともおいたわしいかぎりです。


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