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いま、読みつぎたいもの第5回 : 武田泰淳「汝の母を!」 | ||||||
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武田泰淳「汝の母を!」ところで、その本のなかで、辺見氏は、未来に向けて問いかける重要な戦後文学の作品のひとつとして、堀田善衛氏の長編小説『時間』(新潮社・1955年)を「経糸」としてとりあげています。この小説は、いまなお論議されている南京大虐殺(37年12月)の「捕虜・市民らの虐殺、約20万人、略奪・放火・強姦の惨状」(『近代日本総合年表』岩波書店)を、中国人の側から描いたものです。そしていまひとつが、武田泰淳氏(写真下)の「汝の母を!」(「新潮」56年8月号)という、枚数にしてわずか22、3枚の短篇です。しかし、辺見氏が「世界的傑作」と呼ぶこの作品こそ、戦後を生きるわたしを導く確かな光源だったといってもいいでしょう。
「汝の母を!」=「他媽的!」(タアマアデ)「ツオ・リ・マア!」は、中国特有の「国罵」といわれ、「お前の母親を性的に犯してやるぞ!」という、最大の侮辱的罵倒の言葉です。その罵言を、無知な肉屋さんが、意味も解らず、「バカヤロウ」のつもりで、逆に母子に投げかけます。背すじに、冷たいもの、熱いものが走りぬけた「私」は思います。――「彼ら母子にこそ、日本兵の祖先代々の母たちを汚してやる権利があったのではないか。」と。このあとは、「天のテープレコーダー」「神のレーダー」に記録された母子の美しくも哀切な、仮空の対話となって小説は閉じられます。 いま、天皇夫妻によるフィリピンへの慰霊の旅が、新聞・テレビ等で日夜、報じられています。出発に先立ち、天皇は、「マニラの市街戦においては膨大な数に及ぶ無辜のフィリピン市民が犠牲になりました。」と言っていますが、111万人にも及ぶフィリピン人が、市街戦でのみ死んだと思っているのでしょうか。中国でと同じく、日本軍による一般人に対する虐殺・略奪・放火・強姦が行われたことを知っているのでしょうか。その結果の111万人なのです。また、日本軍の死者52万人も、戦闘によるものより餓死が多いといわれています。このさい、死者2000万人ともいわれている中国への慰霊への旅も果たしたらどうでしょう。いや、それは天地がひっくり返ってもかなわぬことでしょうから、せめて「汝の母を!」を読むことを、天皇、及び侵略戦争を認めようとしない安倍晋三氏とその追従者たちにすすめます。読むのに30分とかからないでしょうから。 (付記――武田泰淳氏は、1976年10月5日、この世を去りました。64歳。その折、「汝の母を!」にふれた追悼文を書き、出版業界紙に発表したことを付記します。) Created by staff01. Last modified on 2016-02-02 15:48:02 Copyright: Default |