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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(1.28) : 夜間定時制高校廃止案に存続を求める意見と請願多数
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根津公子の都教委傍聴記(2016.1.28)

夜間定時制高校廃止案に存続を求める意見と請願多数

 定例会の開始時刻は、前回の定例会で「1月28日午前10時」と告げられていたところ、都教委HPに「9時15分」と変更の告示。予定を変えたなら、その理由説明をするのが常識・良識であろうに、今日も中井教育長はそれをしなかった。開始時刻の変更の件では、ちょうど2年前に突然開始時刻を繰り上げて開始したことがあり、それ以降、HPに告示することにしたのだった。その日の定例会を傍聴したFさんがその理由説明を求めたところ、Fさんの行為は傍聴人規則に違反したとして、「(罪を認めたうえで)宣誓書を提出しなければ傍聴を許可しない」という仕打ちを受け続けてきたことは度々報告してきたところです。今日もFさんは高い交通費を使って傍聴に来たのに、傍聴はできませんでした。

 今日は5人の教育委員(教育長を入れて6人)のうち、木村、宮崎教育委員の姿がありませんでしたが、やはりそのことについても何の説明もありませんでした。1月14日の私の報告で、都教委から委嘱された教科用図書選定審議委員の同選定審議会への出席率の悪さ(2回目は20人中8名が欠席)を紹介しましたが、これらのことから見ると、都教委の面々には無責任体質及び特権意識がはびこっているのかと思わざるを得ません。

 さて、議案・報告のうち、(1)「都立高校改革推進計画・新実施計画(案)」の骨子に対する意見等について (2)「平成27年度東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査結果について」 (3)「アクティブプランto2020」−総合的な子供の基礎体力向上方策(第3次推進計画)−について、報告します。

 報告を聞いての感想を一言でいえば、都教委が新たな企画をすればするほど子どもたちが差別分断され、競わされ疲れさせられる。都教委には何もしないでほしいということです。

(1)「都立高校改革推進計画・新実施計画(案)」の骨子に対する意見等について

 11月26日の定例会で報告議題となった「『都立高校改革推進計画・新実施計画(案)』の骨子について」の傍聴報告で、私は次のことを記した。

 「これまでよりも一層税金を投入し、「エリート校」をさらに推進するというもの。例えば理数イノベーション校の充実、中高一貫校のうちの1校を理数アカデミー校に指定(大学や研究機関と連携して最先端の実験・講義を受講)、進学重点校のうちの1校に医学部等に進学希望の生徒を集めて3年間一貫した育成プログラムを実施、今年度指定した「東京グローバル10」指定校に加え、進学指導重点校や中高一貫校等から英語教育推進校を指定、するなどだ。 また小中高一貫教育校を新たに設置し、「世界を舞台に活躍できる人材の育成」を目指すという(2022年開校)。ほとんどの委員が中高一貫校を肯定しながらも「中高一貫校から育った生徒は非常にひ弱である。競争原理になじめず、ドロップアウトする生徒が生まれている。」と発言した。乙武委員は「大学進学率を度外視すべきだ」とまで発言した。中高一貫校の弊害を暗に認めていると言えるのではないか。この弊害をさらに低年齢層(小学生)まで下げるというのだ。中高一貫校で崩れた義務教育学校が、小中高一貫教育校になって完全に崩れることになる。一方、「底辺校」では、夜間定時制高校を閉課程にしてチャレンジスクール、昼夜間定時制高校を拡大する、工業高校をデュアルシステム科(企業の求める人材育成)、エンカレッジスクールに改編するなど。こちらには金をかけてはいない。」

 11月26日の定例会で骨子についての報告をしたうえで、この件に関し、都民から意見募集をした(11月26日から1か月間)ところ、252件の意見が寄せられたことが今日、報告された。

 252件のうち、177件が「定時制課程・通信制課程の改善」に関するもの。定時制課程の存続を求めるものだった。寄せられた主な意見が文字にされていたので、いくつかを紹介したい。

「夜間定時制で学ぶ生徒は、全日制を中退し通う生徒、事情により高校で学ぶ機会がなかった年配者など、まさに『多様な生徒が在籍する』学校であり、そうした生徒の『セーフティネット』としての重要な役割を担っていて、チャレンジスクールではこの役割の代わりはできない」(学校関係者)

「立川高校定時制は現在でも定員を超える応募者があり、なぜ閉課程となるのか理解に苦しむ。多摩地区の夜間定時制は、次々に閉課程となり、全日制に入学できなかった子の選択肢は、非常に狭くなっている。八王子地区に夜間定時制が1校も無いという現状で、さらに夜間定時制を減らすことは、絶対にやめて欲しい。」(学校関係者)

「ひとり親家庭で経済的に苦しいので全日制をあきらめ、昼アルバイトをして夜学ぶことを選択せざるを得ない生徒も依然として少なくない。貧困状態にある子どもに十分な支援をする、しないによって、その後の就労状況に明確な差が出る。夜間定時制の廃止は絶対撤回すべきである。」(学校関係者)

「夜間定時制高校には、数多くの『外国につながる』生徒たちが通い、日本語支援や教科支援などを通して、生徒たちにとって重要な教育の場所となっている。そんな中、小山台高校をはじめとする夜間高校が彼らの最後の受け皿として機能してきた。日本人生徒の国際化、グローバル人材育成を目指すうえで、すでに日本に滞在する外国人にやさしい学校を閉鎖するのではなく、支援していくことが非常に重要だと考える。」(学校関係者や保護者・当該高校生以外の方)

 寄せられた意見から、夜間定時制高校はチャレンジスクールや昼夜間定時制高校では代替できないことがよくわかる。都教委に対して7本の請願が、都議会に対して5本の陳情が出されている。存続を求める人たちが10人近く、傍聴されていた。寄せられた意見には、次に示す、東京私立中学高等学校協会からの意見もあった。

「今回の計画(案)は、公私立連絡協議会でも何ら説明されておらず、公私協調の精神を完全に踏みにじる行為である。都立小中高一貫教育校の設置は、選抜による受験競争の過熱化を招き、受験塾に通える収入のある限られた家庭しか入学対象となりえないことから公立学校間での教育格差を拡大する。また、国立学校が実験校として役割を果し、そのメリットやデメリットを検証するより前に、東京都が都民を実験台にしてまで行う必要はない。外部有識者委員を含んだ検討委員会では『理数教育』を前提としていたはずが、最終報告では突然『英語教育』に変わった。しかしその議論の経緯は都民に公にされず、またその方針転換を都教育庁職員だけで決めたのは手続き上問題である。これらのことから、都立小中高一貫教育校の設置について反対である。」

 報告に対し、遠藤教育委員は「定時制廃止・・・日本の国力・・・最大多数の最大利益を考える必要がある」と切り出した。次に山口教育委員が「定時制についてのご意見、ごもっともだと思う。廃止改編の意図、手当が伝わっていない。決して切り捨てではない。意図等が伝わるようにしてほしい。これまで私立学校が小中一貫教育をしてきた。公教育で一貫教育をする意味についても伝えていかねばと思う」と言うと、遠藤教育委員は「八王子、立川に定時制がなくなると言うが、『他に行けば』と思っていたが、言われることはよくわかる。都教委は、他に代わるツール、手当を示してほしい。グローバル人材育成の意図を伝えるように。」と発言。

 弱者切り捨ては「最大多数の最大利益」という価値観を持つ人が教育委員の任にあってはならない。遠藤教育委員は、こんな発言をしてもこのご時世ならば大丈夫、言うが勝ちと思ったのか。山口教育委員はソフトに発言したけれど、廃止改編の意図も、「切り捨て」ではない理由もご自身の口では言わないところを見ると、論を張れないのだと思った。

 都民から意見を公募しても、それを実施計画に反映しようという意思は、指導部の提案からも、各教育委員の発言からも感じられなかった。意見は反映させるべきだ。

(2)「平成27年度東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査結果について

 2011年度から(第2次推進計画)、小学校から高校までの全児童・生徒を対象に行ってきた「東京都統一体力テスト」の2015年度結果の報告。全国平均を下回っているとか、運動時間の少ない(週60分未満)子どもが多いとか、結果の良かった市や学校の紹介など。そこには、小学校1年生から競わされ、「運動能力が低い」という結果を渡される子どもの気持ちへの想像力は全くない。あるのは、全国平均を上回る、より上回る結果を得たいとする都教委の欲望だけ。

 子どもは、遊びの中から体を動かす楽しさを知るはずなのに、身近に体を動かす場所はなく、また、悪い結果を示されれば意欲もなくしてしまうのに、「東京都統一体力テスト」の弊害についての発言はなかった。この調査結果をもとにして策定した第3次推進計画、(3)「アクティブプランto2020」の報告が次になされた。

(3)「アクティブプランto2020」−総合的な子供の基礎体力向上方策(第3次推進計画)−について

 期間は2016年度からの5年間。「全ての学校で学校体育・スポーツの充実に重点を置き、特に、中学生の体力向上を重要課題として取組を推進(する)」などを掲げる。昼休み時間帯等がこの取組に費やされる心配をするのは杞憂だろうか。

 都教委の“いけいけドンドン”の施策を、「人格が高潔で、教育、学術及び文化…に関し識見を有する」教育委員が意見し議論することで、子どもたちの教育環境をよりよいものにしていくべきなのに、今日も全くそれを感じなかった。


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