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LNJ Logo 管理職ユニオン・関西の仲村実書記長『労働組合で社会を変える』
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東部労組の石川です。 管理職ユニオン・関西の仲村実書記長が「コモンズ」(2015.6.10-7.10号)に、 「本の紹介 『労働組合で社会を変える』(石川源嗣・著/世界書院「情況新書」 /1800円+税 03−5213−3345)」を書いてくれていますので、紹介し ます。 「労働運動で社会を変える」という書物について この書物は、「本書は私の属する全国一般労働組合東京東部労働組合の活動につ いての報告と総括である」と“はじめに”で述べられています。内容的には、東 京東部労組の活動を通しての石川さんの実践報告と組織活動の方向性と今後の視 点といえます。石川さんは1942年生まれだから73才、私は67才、それぞ れの人生をかけて労働運動を突っ走ってきた世代です。何を次世代に伝えていく かという世代です。 東京東部労組初代委員長の足立実さんとは、私も親しくお付き合いさせていただ きました。すばらしい指導者であり、大いに学ばせていただいた階級闘争派の大 先輩です。そのすばらしい労働者魂の質を引き継ぎ、組織の量を発展させた中心 が著者である石川さんたちです。 「敢然と闘い敢然と勝利する」という東部労組の精神が、足立大先輩、石川さん らの世代、そして次世代にこれまた引き継がれています。この10年間程の地域 合同労組、地域ユニオン運動では、注目され発展してきた労働組合の一つだと思 っています。すでに多くの方々が、実践の書として評価されています。私も基本 的には同じです。 これまでの階級的労働運動、とりわけ地域合同労組や総評の全国一般運動などで 強調された「職場活動と職場組織」、そのことを石川さんは“職場闘争”という 形で意義と重要性として強調されています。  第2部“労働組合と職場闘争”の“第2章 職場闘争”の石川さんの主張に対 して、私は少し異論があります。石川さんが、兵頭淳史氏から引用している「特 殊な専門的職種」は、全日本建設運輸連帯労組近畿地方本部関西地区生コン支部 (関生支部)のこと、大阪を中心とする近畿地方の生コン業界を指していると思 います。この生コン業界での闘い、その関連としての圧送業界にも拡大している 運動が「特殊」とされているところです。地域と業種・職種、産別への組織方針 です。関西生コン型運動の評価と、それを学び、他の業種・職種、産別にどう普 遍化の努力をするかという問題意識がないというのが残念に思うところです。 第 1 部の“力の思想” 地域合同労組、地域ユニオンの発展の可能性、展望・期待が様々な方から語られ てずいぶん経ちました。「まだ脆弱の域を脱していない」と、「『コミュニティ ・ユニオン』の優位性を一般論として語る時代は終わっている」との石川さんの 現状認識は同感です。 その打開策として、東部労組の大量相談―大量組織化についての実践は優れてい ます。この実践方針は大賛成であり、労働組合がとりわけ多くの中小零細企業に 働いている労働者と接触しなければならないという観点から、大量相談がスター トであると思います。 「憲法があるから団結権が保障されているわけではない」も同感です。私は「活 用」論と言っていますが、団結組織、労資対等の団体交渉、対峙戦の行動と結び ついた「活用する」活動です。相談に訪れた労働者に「労働三権は、私たちの先 輩たちが殺され血を流し勝ち取ってきたものです。われわれはそれを活用するの です」というようなアプローチのしかたです。 3章の「中小零細・非正規労働者と地域ユニオン」では、石川さんは厚労省統計 を紹介し、「日本の労働者階級の下層を形成する中小零細企業と非正規雇用で働 く労働者を合わせると4400万人(重複部分を含む)ほどで、日本の労働者全 体の8割を超える」として、この層が地域合同労組、地域ユニオンの組織化のお もな対象としています。私も、この点は同感です。 また全国の各種のナショナルセンター別の全国一般、地域ユニオンの組織人数を あげ、これらの総数が10万人前後としています。そして労働運動再生の戦略的 課題として「大企業職場が資本に完全制圧されている以上、中小企業と非正規労 働者が支配階級の弱い環を形成せざるを得ない。しばらくはここを主戦場として 闘い、大企業に攻め上がるしかない」とし、「大量の中小零細・非正規労働者を 労働組合に向かい入れ、全国に強大な地域合同労組、地域ユニオンを作り上げる こと」としています。これも同感であり、大賛成です。 1981年1月、総評の組織・理論面に関わっていた清水慎三氏は、労働情報誌 で『「日本の労働戦線の組織的空白地帯としての中小零細企業労働者群である」 との認識を押さえて、「管理社会に対抗する人間的自立」に価値を置きつつ、労 働者の自己主張を中心に連帯の輪を広げる「自立個人加盟労組」の創設』を提起 しました。いわゆるゼネラルユニオン構想です。具体的な組織目標として、第2 次、第3次産業で大卒高卒の35歳以下に照準を置き、戦前の個人加盟組合員の 42万人を目標にと書かれていました。今から30年以上前のことです。 その後、総評が解散し連合が結成されました。経緯はともあれ、ゼネラルユニオ ンとして地域合同労組、地域ユニオンの組織化の提起、取り組みは戦後労働運動 の一貫した課題としてあったと、私は思っています。 私はこの事の実践として、新しい要素として関西生コン型運動を重要な柱にすえ るべきだと考え、小さな取り組みですが、管理職ユニオン・関西の中で職種グルー プの組織化を始めています。関生支部等が呼びかけた“労働運動の再生をめざす 懇談会”の業種・職種交流会に積極的に参加しています。 関生型運動は、反独占資本闘争として中小零細の生コン企業を協同組合へ組織し、 労働組合が主導権をもつ組織化戦略です。中小企業経営者に対する業界協同組合 への組織化と労働組合の業界・産別への組織化・共闘です。業界中小企業経営者と の労働者への収奪に対する一面闘争、独占からの収奪に対抗する一面共闘戦略で す。 “5 私たちの教訓”、“第4章 労働相談と労働組合”は、東部労組の実践報 告が語られています。読者の皆さんも労働現場での活動に大いに活かせてもらい たいと思います。石川さんは、 労働相談で現れる問題が「労働者のもっとも差 し迫った、精鋭な反映であり、時代の最先端の労働問題が凝縮して出ているとい える。労働相談を通して日本の労働者の現状を知る意義は大きい」といいます。 ぜひ、 読みこなして応用してもらいたいと思います。 第2部“労働組合と職場闘争”  “第1章 なぜ労働組合か”では、組合作りの経験が書かれています。 “第2章 職場闘争”、ここは石川さんに対して少し異論のあるところです。  職場で一人から複数へ、少数から多数への活動は当然必要であり、過去から行 われてきたことであり、引き続き現場での闘争は活性化しないといけないと思い ます。 私も個人加盟労組が、解決型労働組合で終ってはならないと考えて行動していま すし、複数化のオルグ活動や職場闘争を軽視するつもりもありません。石川さん 同様、職場闘争は重要だと思っています。 “2 職場闘争意義”で否定的に書かれている箇所が、石川さんと私が大きく異 なる点です。石川さんは、兵頭淳史氏の「組合の組織原理と労働運動再生への戦 略的視点」から引用して、「この兵頭の認識と主張は、私たちの実感と合致して いる」(80ページ)としています。この部分は、私の異論の重要な部分ですの で、以下、石川さんの引用部分を示します。本書の78〜82ページです。 『一部の研究者などには、そうした基盤として「職能」や「職種」に期待する見 解もあるようです。しかし、今日の日本の産業社会において、「職能」や「職種」 が、労働者の連帯の土台となる共通のアイデンティティを提供し、恒常的に経営 者と対峙し交渉する単位を形成する条件は、労働供給を労働者集団自身がコント ロールしうる可能性のあるようなごく限られた特殊な専門的職種を除けば、残念 ながら存在しません。したがって、最終的にめざすべき労働組合組織のあり方が、 個人個人が産業レベルの組織に加盟する産業別単一組織であるとしても、労働組 合運動の再生・強化へむけてのプロセスにおいて、職場(中小企業においては、 しばしばそれは企業と同義になります)に基礎をおく組織化・組織強化を迂回す る道はありません。「企業別労組は好ましくない組織原理である」という命題か ら、企業や職場を単位とする組合組織や交渉ユニットは存在すべきではなく、こ れからの労働組合の基礎組織は地域や職種にのみもとづく組織であるべきだとい う結論を導く考え方が存在しますが、このような考え方は現実から遊離したもの であることを認識しておくべきでしょう。』 石川さんが、兵頭氏から引用している「特殊な専門的職種」は、先にも述べまし た関西生コン支部のことです。大阪を中心とする近畿地方の生コン業界を指して いると思います。この生コン業界とその関連としての圧送業界にもこの運動が拡 大しています。全港湾の大阪支部も中央レベルで雇用・労働条件で産別協定を業 界と結んでいます。こうした関西生コン支部や、全港湾の実績・成果を拡大し普 遍化する組織戦略こそ必要なのだと、私は思っています。 関西生コン支部 を少し紹介しておきます。  組織の特質は、純粋な個人加盟ユニオンであることと、組合の決定権の所在に あります。関西生コン支部は「決定権をもつ統一的指導機関」であるとしていま す。欧米の労働組合もまた末端の組織ではなく、これらの上部の組織に執行権・ 財政権・人事権が集中しています。生コン業界全体の経営者を相手にして、強力 な産業別統一闘争を展開していくことができるその組織的保障が、企業単位の分 散性を排する支部の統一的指導性なのです。  第二は、関西生コン支部の運動についてです。ヨーロッパ型ユニオンの運動と 同じように、企業横断的な労働条件を設定し、到達闘争から基準を業界の各企業 がそろえることを強制させていこうとすることです。そのために集団交渉を行い、 ストライキを展開してきました。職種別賃金という基準を設定し、これに各企業 が合わせるようにさせるために集団交渉方式を追求してきたのです。  第三は、事業協同組合と労働組合との関係についてです。重層的下請構造や背 景資本による個別企業の支配などによって、大企業の中小企業に対する収奪構造 が存在します。また新規参入などによって過当競争が引き起こされ、そのなかで 中小企業の経営基盤は極めて脆弱です。このような経営環境のもとで中小企業労 働者の大幅な労働条件の向上をはかるためにはどのような方法があるのかという 問題追求の結果なのです。 大企業に挟撃される形の生コン業界が生き残るには、中小企業が結束する以外に ないのです。その方法が中小企業協同組合です。関西の生コン企業は、協同組合 をつくって「共同受注」と「共同販売」を追求してきました。ゼネコンからの生 コンの受注は協同組合が共同して受けます。そして、協同組合が販売価格を設定 して、ゼネコンに「共同販売」をします。これは独占禁止法に違反しません。 関西生コン支部は経営者に生コンの安値販売を阻止するには、協同組合という方 式によって「企業間競争の規制」を実現する以外にはないことを闘争と説得によ って理解させてきました。一面闘争・一面共闘です。この経営基盤の安定によっ て賃上げの原資を確保することができます。その闘い・運動の結果が、今日の関 西地方における生コン労働者の労働条件と社会的地位の向上をもたらしたのです。 “第3部 労働組合を考える”では、金属機械労組港合同田中機械支部大和田委 員長のことが取り上げられています。 いまは亡き大和田幸治さん著の「企業の塀をこえて」(2001年12月発行) の中で、地域拠点活動の基本を述べています。『われわれのめざす地域合同労組 と「地域ユニオン」と呼ばれている個人加盟の地域労組との違いは、拠点をつく るという方針をもっているかどうかというところにあります。たしかに地域ユニ オンは、解雇だとか権利侵害とかに直面した労働者を救済するという活動をして います。しかし、それだけであれば、単なる駆け込み寺です。有効な戦略・戦術 を立てて大きな敵に立ち向かったり、敵の攻撃の根源に向けて闘っていくことは できません。また、労働者個人の相談を受けていくと組織は何十人、何百人とな っていくけれども、人数が増えれば増えるほど、オルグが一人のままだと組織を 維持し、有効な闘いを組んでいくことができないという矛盾を抱えます』、『地 域合同労組を「駆け込み寺」にとどめるのではなく、《闘いの砦》にするという ことです。一般的に労働組合の強さ・弱さは、主体的立場を堅持して活動するオ ルグの質と数、労働者の連帯感とその意識性、財政・統率力と闘争的結集力で判 断できるといえます』とあります。 石川さんと同様、駆け込み寺、解決型ユニオンにとどまらず、組織するユニオン として大いに学ばなければとされているし、私も同感です。 “第2章 御用組合と闘う”は、石川さんの豊富な体験には及びませんが、私も 体験があります。大いに参考にすべきだと思います。 “第4部 労働組合で社会を変える“  ここは、対談形式です。石川さんの東部労組加盟から専従書記長に、東部労組 を一躍全国に有名にした大久保製壜闘争、労働相談活動が語られています。社会 変革における労働組合運動の戦略の問には、組織内の労働学校でマルクス、レー ニンの活用、ストライキ闘争、ロシア革命や中国革命における闘争形態や組織形 態から学ぶ必要性が示されていますが、具体的なカリキュラムは残念ながらよく わかりません。  今後の方向としては、「連合内部の良心的な仲間が力を持ち、闘いを起こし、 労働者の利益を守ることのできる労働組合に変えることを心から願っています」 と希望を語り、「支配階級の弱い環を形成している中小企業と非正規労働者の領 域が主戦場」とされています。  労働運動の危機打開のカギと東部労組の経験から、「労働者の認識」「労働者 の現状に合致した運動と組織」「労働相談活動」「職場闘争」の4つについて語 られています。石川さんが全国に講演に引っ張りだこのエキスです。 労働運動の弱体、停滞局面にあって、中小零細企業での労働運動、非正規労働者 の組織化に活かし学ぶ点が多く語られています。とにかく読んで活用してくださ い。

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