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「労働情報」新年合併号掲載予定のレポートの一部です。(喜多幡)

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中国の労働者との連帯を
経済の失速下、ストライキの拡大と新たな弾圧

広東省で活動家の一斉検挙

 12月3日以降、広東省で労働運動活動家に対する大がかりな弾圧が行われてい
る。
 香港の「チャイナ・レーバー・ブレティン」(CLB)によると、有力な労働運動
リーダーである曽飛洋(ゼンフェイヤン)と朱小梅(シュシャオメイ)は同4日の夜
に「社会秩序を妨げるために群集を集合させた」という理由で拘束された。
 ほかに3人の活動家が拘束されており、数人が尋問を受けた後釈放された。
 同11日現在で8人が勾留中で、弁護士の接見も禁止されている。
 同12日付の英国「ガーディアン」紙は次のように報じている。
 「中国の工場の中心地である広東省で警察が3日から始めた一斉取り締まりで、少
なくとも18人の活動家が拘束または尋問を受けた。
 拘留されている活動家は、広州市の番禺(パンユー)労働者センターの代表の曽飛
洋、仏山市で労災被害者の支援団体を運営している何曉波(へジャオボ)、同じ団体
のメンバーで、1歳の子どもの母親である朱小梅等である。
 香港のアムネスティー・インターナショナルの活動家であるウィリアム・ニーは、
広東省の労働運動に対する『一斉攻撃』が展開されていると語っている。
 彼女によると『私たちは常に問題に直面してきたし、運動団体は常に一時的な活動
停止処分や嫌がらせや一時的な交流を受けてきた。・・・今回のような弾圧はこれま
でなかったことだ。きっかけとなるような事件もないのに多くの活動家や団体が突然
急襲を受けるというのは近年なかったことだ』」。

人権NGOへの弾圧

 番禺労働者センターの代表の曽飛洋について、英国「エコノミスト」誌ウェブ版1
4年4月12日付に次のようなレポートが掲載されている。
 「工場経営者と共産党の強力な連合を前に、曽飛洋は弱々しく見える。広州市番禺
区にある窓のないオフィスで曽飛洋(39歳)は番禺移住労働者サービスセンターと
いうNGOを運営している。この団体は10年余にわたって広東省の工場労働者の権
利を擁護するために、不利な力関係に逆らって闘ってきた。彼はさまざまな場所から
追い出され、水道や電気を止められ、常に地元の役人や徒党からの嫌がらせを受けて
きた。ところが昨年秋に、ある役人から電話を受けた。『彼は私に、NGOを登録す
るつもりはないか尋ねた。私はびっくりした』」。
 このレポートによると、この3年間に、多くの未登録のNGOが同様の勧誘を受け
ている。中国では現在、登録されているNGO団体の数が50万に達している。しか
し、その多くは準政府機関であったり、政府の資金を獲得するための形だけの団体で
ある。福祉の向上のために活動している純粋なNGOも、大部分は政治的に対立的で
ない活動に従事している。それに対して、登録していないNGOの数は150万以上
と推定され、その中には曽飛洋の団体のような、当局を当惑させるような活動を行っ
ている。そのような未登録のNGOはその数と影響力を拡大しつつある。それらは
トップダウンの国家体制の中で、下から湧き上がる社会的勢力の顕著な例である。
 中国政府はこの間、NGOの登録要件を緩和してきたが、基本的には貧困層や高齢
者や障害者にサービスを提供する団体に限定され、人権団体や民族的権利、労働者の
権利を擁護する団体は除外されている。政府は市民社会の力を取り込もうとする一方
で、そのような力が政権に挑戦する方向へ向かうのを恐れている。

日系企業の被解雇者が地域で労働者支援の活動を継続

 番禺労働者センターの活動家である朱小梅が2014年に広州市の日立金属の工場
で労働組合を組織しようとして解雇された。
 CLBの9月21日付のレポートは次のように報じている。
 「朱小梅にとって解雇は新たな始まりにほかならなかった。その後約2年の間、彼
女は経営者に対して起ち上がった自分の闘争と経験を中国労働者の運動の前進のため
に役立て、今日の珠江デルタ地域の最もダイナミックな労働者活動家の1人として注
目されるようになった。
 彼女は2014年1月に日立金属を解雇されたあと、黙って運命を受け入れて故郷
(河南省)へ帰るという選択を拒否し、会社を仲裁裁判所に訴えた。
 労働争議仲裁委員会は同年4月に彼女の訴えを退けたが、彼女は上告した。最終的
には地区の民事法廷で彼女の訴えが認められ、日立は和解に応じ、不当解雇の賠償金
として23万元の支払いに同意した。
 彼女は日立を解雇されてから間もなく、番禺労働者センターに雇用された。このセ
ンターは団体交渉や企業労働組合の選挙への労働者の参加を推進している労働NGO
である。
 朱は労働者オルグとして、また団体交渉のコンサルタントとして、多くの労働争議
で重要な役割を果たしてきた。その中でも次の3つの闘いが特に重要だった。広州の
軍専用の病院の清掃労働者の闘争(民主的な組合選挙が実施され、労働者の代表が委
員長に選出された)、広州大学地区の清掃労働者の闘争(自分たちの代表を選んで、
2度にわたって経営者との団体交渉を実現した)、Lide靴工場の労働者の闘争
(労働者の要求を強く主張しなかった交渉代表を解任して、新しい交渉団を選出し
た)である。
 朱によると、これらの闘争は中国の労働者がわずか数年の間に、どれほどの発展と
進歩を遂げてきたかを証明している。『私は日立金属で働き始めた時はティーンエー
ジャーだった。それ以来労働者の運動の成長を直接に経験してきた。当時は大部分の
労働者が農村出身で、農村で働いている同郷者よりも多くの収入が得られることに満
足していた。自分たちの権利が侵害された時に、どうすればいいのか、誰に相談すれ
ばいいのかを知らなかった。今日では新しい世代の労働者たちがストライキをやり、
経営者と団体交渉をし、労働組合の選挙を要求している。その上に、四六時中スマー
トフォンで組織化を呼びかけ、ニュースを拡散している』」。

11月のスト件数は空前

 現在の弾圧の背景として、経済の失速と相次ぐ工場閉鎖の中で、労働者の下からの
抵抗が広がっていることに注目しておく必要がある。
 CLBの12月3日付のレポートによると、中国での11月のストライキの件数は
301件で過去最大だった。このうち56件が広東省に集中している。
 広東省におけるストライキの大部分は製造業で起こっており、労働者たちは工場閉
鎖、合併、移転の後、未払い賃金の支払いを要求している。多くのケースでは、経営
者が失踪した後、労働者たちが地方政府の官庁へデモを行い、補償を要求している。
この2カ月間に75件のデモがあり、そのうち約半数で警官隊が出動している。9件
で逮捕者が出ている。
 中国全体では製造業でのストは全体の3分の1(91件)である。最も多いのが建
設業の133件、主に賃金の未払いをめぐってである。このほか、スマホを利用する
無認可タクシーとの競合に直面しているタクシー運転手や、閉山とと大量解雇に直面
している鉱山労働者のストライキなどが報告されている」。

香港で釈放要求のデモ

 香港の職工会連盟(工盟)、「グローバリゼーションモニター」を始めとするさま
ざまな団体が中国政府による活動家の交流に抗議し、即時釈放を求める運動を展開し
ている。オンライン署名が呼びかけられ、12月9日には西営磐の警察署前に百人余
の活動家が集まり、中国政府に労働者の人権と結社の自由を尊重することを求めるア
ピールを行った。
 ITUC(国際労働組合総連盟)は広東省の関係機関と総工会に、改革に逆行する
一連の弾圧に抗議する書簡を送っており、アムネスティー・インターナショナルも緊
急の行動を呼びかけている。


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