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SEALDsという民主主義〜牛田さん、是恒さんに聞く

      林田英明

 *「選書プロジェクト」の書籍を前にSEALDsの活動を説明する牛田悦正さん(右)と是恒香琳さん

 「民主主義ってなんだ?」と叫んで安保法案反対を訴えていたSEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)。彼らは何者なのか。何が彼らを突き動かしているのか。東京・渋谷で10月2日、明治学院大学の牛田悦正(よしまさ)さん(22)と日本女子大学大学院の是恒香琳さん(24)の話を聞く機会を得た。

 ともに物おじせず、快活である。牛田さんは軽口も含めて冗舌だった。是恒さんはSEALDs の国会傍聴プロジェクトに行き、メンバーの真面目さに感心して、今年6月にSEALDs のメンバーに加わった。前身のSASPL(サスプル=特定秘密保護法に反対する学生有志の会)では一参加者だった。SEALDsのスタイルや文化にはなじみがなかったが、「この国の政治を変えてやるぞ」という本気さに納得して、共闘しようと思ったという。

 SEALDsが作成する直近のおしゃれなパンフレット「No War, Just Peace」(16ページ)を開くと、安保法制を危険と見なす理由を三つ挙げている。―乎津自衛権を行使できるようになり、戦争に参加する可能性が高まる◆峺緤支援」という名目の参戦により、自衛隊員と国民のリスクが高まるそもそも「憲法違反」で、論理の仕方さえもメチャクチャ。

 安保法制の危うさを的確に指摘しているように思える。武藤貴也衆院議員(滋賀4区)が8月にツイッターで「SEALDsの主張は『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく」とつぶやいて炎上。その後、東洋経済オンラインのインタビューで「しかし政治家が戦争に行くことは、国家としての意思決定ができなくなりますし、政治家は軍事技術を持っていないので、実際戦地に行くべきではないと考えます」と自らの浅い戦争観を披歴したのに比べると、10代から20代前半が担い手のSEALDsのほうが36歳の武藤議員よりはるかに地に足をつけて日本の未来を案じているように映る。

●自発的にそこにいる重要性

 牛田さんによれば、常に変わり続けるメンバーは関東で現在約200人。増えたのは、安倍晋三首相の強硬姿勢と戦後70年で関心が高まったこと、そして活動の継続によるものと理解している。SEALDsは5月3日に発足したが、そのずっと前からの活動の積み重ねがあったからこそ、半年でここまで盛り上がったのだ。

 是恒さんは「デモで自撮りするのは、ファッションリーダーが自撮りするのと同じ。デモに行くこと、意見を言うことは、顔を隠すようなことではない。日常の一コマであり、これが文化なのだというイメージを発信した。トラメガ(拡声器)もふつうに部屋にあってよいものになった」と笑う。「自分の思いをこういう言葉に変えていけばいいんだ」と仲間に触発され、また写真や動画のアップに刺激を受ける。活動では先輩の牛田さんも「一番重要なのは自発的かどうかということ。一人一人が自分で考えて、そこにいることが大事」と説く。

 社会人は会社に、高校生は学校に心身とも縛られがちだ。自分を殺さず自己主張できるのは2人のような世代だろう。しかし牛田さんも活動を始めた時は友人から「宗教でも始めたのか」と奇異な目で見られたように、少数派は初めの一歩に大きな勇気がいる。「それが自分の中にあった」と牛田さんはおどけながら前を向く姿勢が印象深い。だが、匿名の中傷がネットに飛び交い、先日はメンバーの中心人物、奥田愛基(あき)さんに本人のみならず家族の殺害を予告する手紙が明治大学から転送で届いた。宛先を明治学院大学にしていない稚拙さを考えれば、犯人に周到な計画性はなく、自分の考えと異なる者へのイラ立ちだけだろう。牛田さんは「僕は、それでも脅迫者に対話を求める奥田君のようなタイプではなく、目には目をと反撃します。匿名に対話は必要ない」と前置きしつつ、有象無象の批判にはさすがに辟易している。是恒さんもネットでの誹謗は「中身がない。相手にしようもない」とあきれ果てている。これは生き生きと目立って動き回るメンバーに対する卑小なやっかみとも言えよう。

●学びの「選書プロジェクト」

 SEALDsは「選書プロジェクト」を夏から始めた。各メンバーが影響を受けた一冊を元に政治や歴史を学ぶべき書籍を提案するもので、第1弾として「基本の15冊」が大学生協など200店以上で取り組まれている。佐々木中『切りとれ、あの祈る手を―〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』▽高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』▽中野晃一『右傾化する日本政治』――などだが、次は100冊規模の「選書」を企図している。

 牛田さんの政治信条は「すべての党派にクソくらえ」である。やや下品な物言いながら、若者らしい勢いを持つ。「右派だけでなく左派も一つの枠に閉じこもって、一人一人の考える機会が少なくなるのは危険」と認識し、SASPL設立当初からの理念である「一人一人、孤独に思考し判断しよう」を提起する。国会前に集うさまざまな団体の中には、デモでしか会わないことを決めているストイックな集団もある。牛田さんは「メチャメチャカッコいい」と畏敬の念すら抱く。SEALDsはデモ以外でも、会議や作業があり、音楽や本についておしゃべりをしている。是恒さんにとって運動は「毎週金曜日、国会前に行っていた時は、ラジオ体操の気持ちでした」と力みがない。その表情は、とてもチャーミングだ。

 冒頭の「民主主義ってなんだ?」は河出書房新社から9月に出版された『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』に結びつく。1万5000部の初版は、すでに9刷7万部を突破するヒットとなった。SEALDsは来夏の参院選に向けて安保法案に反対するリベラル勢力の結集を呼びかけるという。牛田さんは「1人区全勝です」と自分の尻をたたくように豪語する。安保法制に対して牛田さんは「赤信号を渡ろうとしている人にダメだと言っているんです」と例えて、政権の性急かつ乱暴な憲法破壊の動きをとがめた。立憲主義に基づくリベラルな野党の結集を目指すSEALDsは特定の政党を支持しているわけではないのだが、共産党の息がかかっているのではないかと疑う人もいる。私は、共産党のホームページがSEALDs並みに洗練されたら、その考えに同調したいと思う。同じ印刷物でも、ビラやチラシと言わず、フライヤーと呼ぶ若者世代のSEALDsに「代表」はいない。「絶対反対」といったカビの生えた常套句ではなく、全身で絞り出したキャッチコピー「本当に止める」を生み出せる彼らの「民主主義」は、もしかすると窒息させられそうなこの国の希望の光なのかもしれない。


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