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書評 :『パワハラにあったときどうすればいいかわかる本』〜あなたのためのお助け本

                            北 健一(ジャーナリスト)
「公務員を叩く人が首長になると、モンスターペアレントが増えるんですよ」、こんな話を大阪の教員から聞いた。客室乗務員(CA)、看護師、介護士はじめ対人サービス業は、自分の感情を抑え、いつも笑顔で穏やかな対応が求められるので感情労働とも呼ばれるが、顧客からのパワハラの矢面に立ち、心身を壊すケースが少なくない。そんな問題も視野に入れているのが、いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(千葉茂代表)と精神科医・磯村大さんの共著『パワハラにあったときどうすればいいかわかる本』(合同出版)である。

 日本でパワハラを議論する場合、しばしば参照されるのが、厚生労働省の円卓会議が出した「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」である。この提言は「働く人の尊厳や人格が大切にされる社会を創っていくための第一歩」だと自らを位置づけているが、それを「答え」として固定化して捉える向きも少なくない。 本書も「提言」、とくにパワハラの定義や6類型(パターン)を参照するが、「この6つのパターンにあてはまるものだけがパワハラではない」と言う。この視点が、前述した「顧客からのパワハラ」の理解に活きている。

 パワハラは何であり、なぜ起き、働き手の心身に何をもたらし、どう対応すべきか。パワハラを防ぐには。具体的な40の場面ごとにQ&A形式で問題を整理し、たかおかおりさんのマンガ(実にいい味!)が理解を助けてくれ、著者らの豊富な相談、診療経験は、記述のわかりやすさと温かさに結実している。

 私も出版労連で労働相談に携わっているが、相談経験からも腑に落ちる点が多く、メンタルヘルスの理解、対応では受診の勧め方、睡眠の質、温かな無関心など多くを教えられた。

 本書を貫くのが「人間関係がいちばんの労働条件」であり、それをみんなの力で育んでいく志向である。そこから、「労使関係、“人間関係”の問題としてどう解決できるかを探っているとき、法律によって相手を屈服させることは、真の解決の妨げになることもあります」と裁判のデメリットにもふれるが、重要な指摘だ。

 パワハラの実態はひどく、被害者の傷は深い。加害者やそれを放置する会社への憤りは当然だし、事案によっては謝罪や償い、人事処分も必要になる場合もあるのだが、おそらくそこはゴールではない。厚労省・提言が「第一歩」だとすれば、本書は働く場で一人ひとりが大切にされる明日に向かって、気づきや相互理解を重ねながら「二歩目から」を歩いていくための道しるべである。

*1500円+税 注文は→合同出版HP


Created by staff01. Last modified on 2014-12-06 11:32:49 Copyright: Default

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