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香港オキュパイの現場を訪ねる〜「新しい運動の創造力」に触れて

          レイバーネット国際部・I(11/23)

僕が宿泊しているのは、オキュパイが行われている金鐘や旺角などの中心街ではなく、ずっと離れた郊外。地価や家賃も安いところ。地元の交通を知らないと不便ですが、バスやトラムの路線を知っていればオキュパイの場所までは、二階建てバスの二階から南国を思わせる景色などを眺めながらの小旅行気分が味わえます。この日は、労働問題についての国際会議を終えたばかりのNGOの方に中国の労働問題について話を聞いたあと、いよいよ旺角オキュパイの現場へ。

10月初めから旺角でテントを広げて参加している李さんが案内してくれました。オキュパイされている場所のすぐ近くにある社会運動系の書籍などを扱う「序言書店」で待ち合わせをして、さっそく案内してもらいました。すでに日も暮れているのですが、旺角は香港有数のショッピング街であり、また高級腕時計や宝石店、H&Mやユニクロなどが入るショッピングモールなどが集まっていることから、この日も人通りも多く、官庁街の金鐘とはまた違った町並みのど真ん中の目抜き通りのネイザン通りを数百メートルにわたってオキュパイがおこなわれていました。

イメージとしては、新橋から東京駅までのデモでとおる銀座の外堀通りの道路両面を2ブロック分くらいにテントやバリケードなどがずらっと並んでいる、という感じでしょうか。ROLEXの店のまえの道路には「旺角自習室」のテント。高校生くらいの人たちが勉強していました。

歩道はたくさんの買い物客が物珍しそうにカメラを構えたりして、想像していたような緊張感はまったくありません。「金鐘は官庁街・ビジネス街で、オキュパイまでは庶民には無縁のところでした。それにくらべてここは宝石店や装飾店などが立ち並ぶ一方で、いろんな人たちが行き交う雑多な街です。だから裏社会の人も含め、いろんな人たちが交わる場所です。住んでいるところがここから近いので私もここのオキュパイに参加しています」と、まず自分のテントに案内してくれました。

ショッピングなのか観光なのかわからないですが、行き交う人々と近いというのがここ旺角オキュパイの特徴かもしれません。緊張感はそれほどまありません。ただ、ネガティブな報道をする新聞社や政府の関係者などが写真を撮ることがあり、たんにオキュパイに参加していただけなのに中国への入境を拒否される人がでるなど、写真を撮られることにはすこし敏感になっている、と李さんが説明してくれました。

たしかに金鐘とはちがい「写真はご遠慮ください」という注意書きが描かれたテントがちらほら見えます。ということで、すこし気を遣いながらの写真撮影。もちろん写真撮影に積極的に応えてくれるパフォーマーもたくさんいます。絵を描く人、手づくりのグッズを配る人、Tシャツなどに雨傘ロゴをプリントしてくれる人、教会のテントでのミサ、必勝祈願の関帝廟、テントや傘に所狭しと書画で書かれたメッセージなどたくさんの表現があふれています。

目立つのは日本のアニメキャラを使ったポスターやメッセージ。「ナルトや風の谷のナウシカなど、日本のアニメは大好きです」と李さん。ルフィ、トトロ、ピカチュウなども「真の普通選挙を」と訴えていました。

雨傘運動のシンボルともなっている黄色いリボンを作って配っている若者たちがいました。「クイズに正解した人だけリボンをもらえます」と。さっそくチャレンジ。「では第一問。この黄色いリボンで私たちは何を求めていると思いますか?」「本当の普通選挙?」「正解。じゃあ第二問。ではそれを実現するために私たちが大切にしていることは?」「団結?」「はずれ」「希望?」「はずれ」「うーん・・・」と悩んでいると、李さんが「平和、ですよ」と耳打ちしてくれました。「平和!」「正解ー」。ということで革製のリボンの飾りをゲット。

オキュパイの最後尾のところから先頭のほうを眺めると、テントやモニュメント、「真の普通選挙を!」などが書かれた巨大な垂れ幕などを挟んで宝石店や装飾店の看板があちらこちらに並んでいます。「たくさん店がありますが、よくみると同じ名前の店がたくさんあるでしょう? この一帯はこのいくつかの有名店が幅を利かせているところなんです。こんなにたくさん店があっても、中国の金持ちがたくさんここで買い物をしていくんです。すごい利益です。それらは全部、このいくつかの小売大手の会社のものになります。」

「しかしオキュパイがはじまって気がつかされたのですが、ここは公共空間のはず。なのにいくつかの系列の店が幅を利かせてきたのです。しかしいまではたくさんの若者が自分のできることを自由にここで披露しています。しかもそれは社会的な訴えと一体なのです。」「ぼくが学生だった頃には、とてもいまのような事態を想像することはできませんでした。若者はとても利己的で消極的で、運動に参加するのはごく少数でした。それがいまではどうでしょう。参加するだけでなく、自分のできることをすすんでここで披露しているんです。」

やさしく話しかける李さんのことばには、極端な消費社会への疑問、その壁を突破して登場した新しい世代の登場に対する驚嘆と自信が感じられました。緊張感はあまりみられない、と書きましたが、李さんによると「すこし前も衝突があってけがをする人がでていて、緊張は続いているのですが、ずっとそれが続いているというわけでもなく、解放的な空気の中にあるのです。だけどマスコミは事件や衝突のことばかりしか取り上げてくれません」と。

オキュパイの最先頭は鉄柵や木材などで作られたバリケード。その先には警察官が10人ほど詰めています。以前はそのもう少し先までオキュパイしていたそうですが、警察の激しい攻撃で現在のところまで後退したとのこと。その最前線と交差する亜皆老街(アーガイル通り)の交差点付近のバリケードやテントなどが、今週にも強制撤去されるということで、この最前線はすこし緊張感が漂っていました。交差点周辺の構築物のうえには、大小さまざまなメディアの映像カメラが三脚で所狭しと並べられています。テントなどもいくつかありましたが撤去されてもいいように準備はしているとのこと。

「ですが、この一区画を撤去されたからといって、旺角のオキュパイ全体はぜんぜんかわらないですよ。メディアは撤去されることばかりを大々的に取り上げていますが、オキュパイ全体をみてほしいです」と李さん。たしかに通り沿いのバス停の掲示板には、所せましとメッセージやポスターが貼られています。「民主の壁ですね」と。

もちろんこのオキュパイ全体がこのままずっと存在し続けることはあり得ないでしょうが、政府が強硬的な手段に訴えたときに、市民がどれだけの抵抗を見せるかによって、次の戦術が決まってくるでしょう、とも。街頭のあちこちに「撤去されてもまたオキュパイしよう」とか「撤去されたら今度はセントラルのオキュパイで会おう」などのメッセージもみられます。

昨日(11/22)の夜に金鐘で「流動民主教室」をやっていた知り合いが、今日は旺角で「エコロジーと民主主義」について街頭での民主教室を主宰しているのにばったり。20人くらいの聴衆が真剣に話を聞いていました。「がんばってるね!」とエールを送りました。

李さんは出会う人みんなに「日本から応援にきてくれたんですよ」と紹介してくれる。「いや、観光ついでだったりするんですけどね、ごめんなさい」と心の中で思いながら、「日本でもたくさんの人たちが注目しています」と言うと「ありがとう。ぜひ本当の姿をつたえてください」と。

旺角では、空前の規模で拡大した新しい運動の創造力を感じました。今後の進展は予断を許さないですし、運動内部のさまざまな問題がこれからもまだまだ発生するかもしれませんが、香港でまかれたラディカルな民主主義の種が、ジャックと豆の木の豆の木のように、あるいは猿かに合戦の柿の木のようにすくすくと育つさまを、ほんのすこしですが体験できたのかな、と思います。

というよりも、今後もいろいろな機会に、いろいろなチャンネルでこの雨傘運動の行く末を伝えることで、李さんをはじめ、オキュパイに参加する香港の人々の運動をサポートしないといけないな、と思いました。香港の民主化は、中国全体の民主主義の発展にも大いに関係があることですし、それは日本を含む周辺に諸国の人々にとってもおおきな意味のあることだと思います。もちろんその逆もまた然りで、日本政治がこれ以上悪くならないようにすることが、何よりも大切なことだな、と思った次第です。

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レイバーフェスタにやってくる香港ゲストを紹介します

12月20日のレイバーフェスタ(東京・田町交通ビル6Fホール)では、香港のメンバーが来日します。以下のお二人です。当日は、映像・音楽をまじえて香港オキュパイ運動の報告をしていただきます。12.20レイバーフェスタ詳細

↓労組活動家のタムさん(左・自分たちのテント前で他のスタッフと)

↓大学生のマルコさん(メディア活動家・独立媒体オフィスにて)


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