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映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』と「人間の盾」に志願した友人 | ||||||
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映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』と「人間の盾」に志願した友人堀切さとみ2002年の暮れ。ブッシュは「大量破壊兵器の保持」を理由に、フセイン大統領を倒すと宣言した。イラクへ攻撃がリアルなものになる中、多くの人がアメリカ大使館前で連日抗議の声をあげていた。私はそこでMさんという女性ダンサーと出会った。大きな帽子をかぶり、猫のように細い目が笑うと余計に細くなる。何の気なしに言葉を交わし、一緒にお茶をのんだ。琵琶湖の近くで生まれ育った彼女は、数年前に舞踊を通じた文化交流のため、イラクに行ったことがあるのだという。別れ際に池袋駅の構内で無邪気に踊ってみせてくれた。そして「戦争が始まるようだったら、イラクに行くつもりだ」と言った。 年が明けるとMさんは本当に、人間の盾に志願してバグダッドに行ってしまった。ネット上に彼女のメッセージが載った。「人々の力によってブッシュは諦めると思うので、生きて帰れると思うからイラク行きを決めた」「人間の力を信じたい」彼女は親しい何人かに遺書まで託していた。自分より少し若い日本人女性の決断に、私は心が震えた。 しかし彼女の行為は少なからぬ人たちの反発にさらされた。ネット上には「あなた一人が言っても何にもならない。自己満足だ」云々。ジャーナリストでもない彼女に何が出来るのかと、ダンス教室の先生も心配していた。アラブの言葉もしゃべれなかったと思うが、ただ笑顔と安らぎを与える力がある人だった。
再会する日が来るのか。数か月間彼女の安否を気にしていた。何か手がかりがつかめればと立川市の集会に行ったら、ひょっこり彼女が現れた。「爆撃の直前まで、イラクの人たちは和やかだったよ」と変わらない笑顔を見せた。 Mさんは2005年に、私が一人暮らしを始めたアパートに転がりこんできた。1週間か10日だったか彼女は我がアパートにいて、もっと親交を深めればよかったのにその頃の私は疲れていて、何を話したか覚えていない。そしてある日きちんと布団をたたんで、彼女は出て行った。 今日(11月3日)ドキュメンタリー映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』を観た。Mさんが言っていたことを思い出した。バクダッドが死の海になる直前まで、市民はおおらかに街中でチェスに興じ、普通の生活を楽しんでいたのだ。 監督の綿井健陽さんはMさんと同じくらいの年齢だと思う。前作『リトルバーズ』も観たが、それ以上に10年後のイラクを描いた本作は圧巻だ。「リトルバーズの後、イラク情勢はさらに悪化した」。この10年、綿井さんはじっと、イラクから心を離さずにいたのだ。いくつものつらい現実を突き付けられるが、それ以上に感じるのは綿井さんとイラクの家族の間に築かれた信頼関係だった。綿井さんは「自分は男だから、女性よりも男性の方が話しやすかった」と言う。そのせいか、子どもの死を嘆く父親たちの姿がいつまでも心に残る。 2003年、Mさんもイラクで、彼女ならではの役目を果たしていただろう。Mさんは今どうしているのか。ふわふわと、ひらひらと、独特な表現活動を、今もどこかで続けているだろうか。 *『イラク チグリスに浮かぶ平和』は東京・ポレポレ東中野で上映中。 Created by staff01. Last modified on 2014-11-05 11:40:00 Copyright: Default |