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LNJ Logo 地検にあてた抗議声明「東電取締役らの不当な不起訴処分は許されない」
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東京地方検察庁 検事正 
伊丹 俊彦殿
福島地方検察庁 検事正
 山田 賀規殿

東電取締役らの不当な不起訴処分は許されない

2013年9月10日
東電株主代表訴訟 原告団

私たち、東電株主代表訴訟では、裁判において東電取締役らに対し、「津波は予
見可能であった」と主張・立証して闘っている。福島原発告訴団の被告 訴人で
ある勝俣恒久らをはじめとした東電関係者のほとんどは私たちの訴訟の被告である。
この裁判の過程で、東電テレビ会議の記録が保存され取締役会議事録等が開示さ
れるなど、被告らの過失が徐々に明らかになろうとしている。国会事故 調は、
原発事故は人災であると断じ、東電自身が過失を認めたことも広く報道されている。
東京地検は、数々の具体的な警告を得ていたにもかかわらず問題を先送りにし、
津波対策を何ら取らなかった東電及び被告訴人らを不起訴処分とした。
この度の福島原発告訴団の告訴事件に対する不起訴処分に関して次の点で抗議する。

過失は東電自身が認めている

世界を震撼させる原発事故を起こした東京電力に対し、家宅捜索等の強制捜査も
せずに不起訴処分にしたことは、国民感情から考えても納得がいくもの ではない。
例えば、食中毒事件を起こした飲食店には間髪を入れずに捜査に入り、関係書類
を押収し、営業停止に追い込む。
本件では、被告訴・告発人である法人としての東電自身が過失を認めているにも
関わらず、強制捜査もせずに不起訴処分にした。
任意の取り調べで、犯人が自らに不都合な供述をするというのだろうか。被告訴
人らが任意で提出した、彼らに都合のよい証拠のみによって証拠不十分 などと
判断するとは、事案の真相を明らかにすべき捜査機関としてあるまじき行為である。
昨年8月の告訴受理からの1年余もの間、検察庁は起訴をするつもりもなく、不
起訴理由をいかに説得的に書くかに終始したとしか思えない。適正に捜 査を行
い、事案の真相を明らかにし、犯人を罰し、被害者の悲しみと寄り添うという思
いはみじんも感じられない。
これは「馴れ合い捜査」「名ばかり捜査」に他ならず、検察庁の歴史に汚点を残
すものである。

司法の独立性

不起訴の発表を2020年オリンピック誘致が東京に決まったその日、国民がオ
リンピックの話題に浮かれているその日、更に新聞休刊日にこっそりと 発表し
た。この不当な不起訴処分を、ニュースの陰でこっそり行おうとしたもので恥ず
べき行為である。去る8月30日、東京電力の汚染水問題が衆院 経済産業委員
会で審議されようとした際「オリンピック誘致に不利 になる」として自民党が
先送りしたのと同様、時の政権の意向に従ったと判断せざるを得ず、司法の独立
性を疑わせる由々しき事態である。

告訴の政治利用

「不起訴」の正式発表の前にリークした朝日新聞、日経新聞、そして「不起訴」
の正式発表を伝えた時事通信、共同通信、東京新聞、毎日新聞、そして NHKもす
べての報道機関が「福島原発告訴団等が告訴している菅元首相ら不起訴処分」と
同様の見出しを打っている。
しかし、福島原発告訴団が告訴している中に菅元首相は含まれていない。
福島原発告訴団が告訴・告発しているのは、原発を推進して来た東電歴代取締
役、福島県による事故後の安全キャンペーンを担った学者たち33人そし て法
人としての東電である。また、福島原発告訴団と同様に作家の広瀬隆氏とルポラ
イターの明石昇二郎両氏も東京地検に告発していたが、その被告発 人は、東電
取締役と学者16人である。いずれの被告訴・告発人に、元首相の菅直人氏は
入っていない。
唯一、菅直人氏を告発しているのは「被災地とともに日本の復興を考える会」と
いう団体であるが、政治家など6人を告発しているものの、その活動内 容は
まったく不明である。
たしかに、福島第一原発事故による被害につき、告訴・告発は複数ある。
しかし、福島原発告訴団は、告訴後から10通以上の上申書を福島地検に提出し
続け、具体的な証拠を示し、東電幹部らの過失、被害について主張立証 してき
た唯一の市民団体であり、その告訴・告発人数も14716人で最大である。彼
ら、彼女らは、この事件の犯人は東電幹部ら、福島県による事故 後の安全キャ
ンペーンを担った学者たちであると告訴に至ったのである。
にもかかわらず、上述の報道は、菅直人氏が告訴されていることを利用し、あた
かも福島原発告訴団が菅直人元首相を筆頭とする被告訴人らを告訴して いると
いう印象を与え、多くの国民が誤解を招くよう誘導していると言わざるを得ない。
これは、14716人の告訴・告発人の思いを踏みにじるもので到底許されない。

不当目的の卑劣な移送

福島原発告訴団は、福島地方検察庁に対して告訴した。被災地、被災者に最も近
い福島地検であれば、巨悪と立ち向かい、被害者と共に泣く捜査・判断 をして
もらえるのではないか、そして、仮に不起訴処分となっても、日々被曝に苦しむ
福島の市民による検察審査会で判断してもらいたいと願ったから である。
にもかかわらず、決定の直前(数時間前)に東京地検に移送処分し、福島検察審
査会への申し立ての道を閉ざした。このように、自らの不起訴処分が福 島市民
の手によって検討されることから逃げることは、原発の過酷事故のために故郷を
追われ、全国に移住させられた福島県民のアイデンティティを踏 みにじる行為
で許しがたい卑劣な行為である。


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