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LNJ Logo 報告 : 第19回 ほしのいえ 講演とミニライブ〜誰も犠牲にならないために
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12月6日、「第19回 ほしのいえ 講演とミニライブ」が行なわれた。強風が吹きつける冬の夜。東京・荒川区町屋のムーブ町屋ホールを訪れた人々は、講演にじっくりと聞き入り、クリスマスソングを口ずさんで心をひとつにした。

「ほしのいえ」は、東京の山谷地区を中心に野宿者の支援を続けているボランティア団体。毎週火曜日の夜回り・炊き出しのほか、作業所での生活相談などに取り組む。

■自己中心の価値観を超えて

「シルベスタークワイヤー」が演奏するトーンチャイムとは、アルミ合金製のパイプを叩いて共鳴させる楽器で、やわらかく優しい音色が特徴。奏者一人が単音を担当、旋律を構成する。

リーダー・菅野真子さんの指揮で、ドイツ、イギリス、フランスのキャロルを披露。造詣深くウイットに富んだ菅野さんの語りに、会場がわく。

主催者の中村訓子さんがあいさつ。「毎年のコンサートでは、その時々のテーマを取り上げ、地域のさまざまな運動団体と共に作りあげていく。私たちだけでは実現できない」。

攻防が山場を迎えている江東区竪川河川敷公園の問題にも触れた。「私たちが住む町に、ブルーシートや野宿者が住んではいけないと、町はきれいでなければいけないと、なぜ思うようになったのか。それはエゴではないのか。同じ命をもらった人間としてすごく悲しくなる」。「自分さえ良ければいいという価値観を克服し、誰もが楽しく住みやすい町をどうやってつくっていくか。ゲストのメッセージを受け止めながら考えていきたい」。中村さんはゆっくりと、静かに問いかけた。

■痛恨の思い

講演者の一人目・稲葉剛さん(もやい代表理事)がステージにあがった。貧困問題にかかわって18年。過去にもこのコンサートに呼ばれている。新宿西口の段ボールハウスが撤去された当時。バブル経済が崩壊し、日雇い労働者が路上生活へと追いこまれた時期だ。 「3・11」以後、稲葉さんは痛恨の思いで過去の活動を振り返るという。福島原発でシュラウドにひび割れが見つかったとき、自分たちは懸命に被ばく労働への警告や安全対策を求めたが、結果的に大量の労働者が動員され、原発の延命を許すことになった。

原発は過疎が進む地方に造られ、大都心には造られない。他の公害と同様に、被害者への差別も激しく、不可視化されていく。その意味で「私たち自身が東電だった」という自覚を持つことが重要だ。そこからしか福島の人たちとはつながれない、と語った。

■生きかたが問われる

スライドを上映しながら話す稲葉さんは、「生活保護バッシング」にも言及。メディアが大きく報じた芸能人家族のケースをめぐって、世論の非難はさらに勢いを増した。だが、生保予算の99%は適正に使われている。復興関連予算や政党助成金のほうが、はるかに使途不明である。

申請すれば支給されるのに、受けていない人が450万人にも上る。なぜか。日本の制度の特徴として、持家や貯金があると受けられないこと。そして行政窓口の水際作戦。あれこれ難癖をつけて追い返す。その結果、犯罪へ走る、餓死するなど、申請者は悲劇へ追い込まれていく。

強いスティグマ(負の烙印)もある。福祉制度を使うことは恥であり、後ろめたいという意識が煽られている。ある国会議員はテレビで「生保受給は恥だと思え」と暴言を吐いた。 「私たち自身の貧困に対する眼差しを問い直すことが大切だ。施しではなく権利として社会保障を受ける。劣悪な仕事を拒否する余裕が持てれば、労働条件全体の向上にもつながる」。「今度のW選挙で問われるのは、東電の電気を使って首都圏に暮らす、私たち自身の、恥ずかしくない生きかただ」。稲葉さんは、きっぱりと締めくくった。

■これが原発事故だ

武藤類子さん(福島原発告訴団・写真下)が登壇。福島が置かれている厳しい現実を報告した。

福島では事故の後、重要な情報が隠され、安全キャンペーンが大々的に展開された。それによって多くの人が、本来する必要のない被ばくをした。

一年経つと「復興」が叫ばれた。子どもたちが、パレード、鼓笛隊、子供祭りなどに駆り出されて利用された。

今月、IAEAが閣僚会議を開くため郡山に来る。福島には60億円もかけて「環境創造センター」が設置されるという。国連安保理の傘下にあって、絶大な権力を持つ原子力推進機関・IAEAが常駐する。

そこでは、被災者を置き去りにした調査や研究、安全宣伝が行なわれるだろう。「チェルノブイリ事故後、事態を過小評価し、悲惨な健康被害の実態を隠ぺいして闇に葬ってきた。その張本人がIAEAだ」と、武藤さんは糾弾する。

「私たちは便利さと引き換えに原発を許し、存続させてきた。だからここで、一人ひとりが大切にされないという、この国のありかたを正していかねばならない。それが大人の責任ではないか」。

チェルノブイリの事故まで、原発についてはまったく無関心で危険性を知らなかった。大手広告代理店の戦略に乗って、「買わされている」自分を知った。その反省から里山の開墾を始めた。小屋を建て、退職金で喫茶店を開いた。そんな「どんぐりの森」に放射能が降り注いだ。豊かな自然の恵みが、汚染で食べられなくなった。原発事故とはこういうものだ。

「原発には誰かの犠牲が必ず要る。差別と犠牲の上に成り立つ原発をなくすにはどうするか。知恵を絞って一緒に考えていきたい」。武藤さんは最後まで、淡々と語り続けた。

岡大介さん(写真上)は、明治大正演歌、昭和歌謡も歌う異色のシンガーソングライター。さぞかし年配のベテラン演歌歌手かと思いきや、その若さと端正なスタイルに私は驚いた。澄んで伸びる歌声、抜群の歌唱力。すべてが新鮮だ。手作りの「カンカラ三線」で、「骨まで愛して」「東京節」「平成のんき節」など数曲を披露。風刺を利かせた歌詞にも品がある。

昨年に引き続き再び「誰も犠牲にならないために」をメインテーマに掲げた今年のコンサート。被災者の苦難を、野宿者の暮らしをなんとかしようという、発言者の切実な思いがあふれた。 

人間としての誇りを大切にし、「あげる、もらう」という関係を超えた、平(たい)らかな関係をめざす。地道に続くほしのいえの活動に、集った人々は温かい拍手を送っていた。(Y)


Created by staff01. Last modified on 2012-12-08 20:52:01 Copyright: Default

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