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謝花直美さん講演会〜体験者に向き合うために

11月23日、東京・新宿区のwam(女たちの戦争と平和資料館)で、ジャーナリスト・
謝花直美さん(写真)の講演会が開かれた。冷たい雨のなか集まった参加者で、会場
はいっぱいになった。

謝花さんは沖縄タイムスの記者として、沖縄戦や「集団自決」問題について精力的に
取材。数々の著作を世に送り出している。

この日の企画は、同館で開催中の特別展「軍隊は女性を守らない〜沖縄の日本軍慰安
所と米軍の性暴力」に伴う連続セミナーの4回目。「体験者に向き合い、伝えていく
こと」と題した。米兵による犯罪が頻発するさなか、人々の関心の高さをうかがわせ
た。

「東京の寒さに驚いた」と開口一番。「『集団自決』」は沖縄戦の問題のなかでも、
特に取材しにくい、一番遠いテーマだと思っていた」と打ち明けた。
島民の生活の場が、激しい戦闘に巻き込まれた。住民たちは、略奪や殺りくを繰り返
す日本軍の蛮行を目の当たりにした。米軍のスパイとの嫌疑をかけられ、あるいは避
難所に手榴弾を投げ込まれ、虐殺された。

死ぬための正装に使われるという「やまと帯」を木に結んで円をつくり、人々は車座
になって手榴弾を爆発させた。それでも死にきれないと石やナタや鎌を使って、家族
同士で殺し合った。

沖縄戦を特徴づけるこの被害は、「軍官民共生共死」という日本軍の絶対方針の下
で、必然的に起こった。軍命がなければ、集団自決は起きなかったはずだ、と謝花さ
んは指摘する。

2時間の持ち時間を早めに切り上げ、参加者の質問に的確に応えた。
神奈川県の高校教員は、修学旅行で生徒たちを沖縄に連れていくが、定番の案内コー
スに疑問を抱いている。子供たちに史実をどう理解させるのか、いつも悩んでいると
いう。

反原発の運動には若者が多いが、沖縄の問題となると少なくなるのはなぜか。さら
に、地元紙の編集方針と全国紙の記者の関心について。沖縄返還時の「独立論」につ
いてなど、多くの質問が会場から出された。

謝花さんは、静かに語った。
「沖縄では年齢に関係なく、家族全員が戦争に動員された。女の子は看護婦として働
かされた。そこが本土とは違う。生徒が最初から理解するのは無理。沖縄戦の特徴
を、今の自分の家族に置き換えてみればいい」。
私も彼女の著作「証言―沖縄『集団自決』」(岩波新書)をいち早く購入した。だが
あまりのリアリティに当時の光景が目に浮かび、最後まで読み切れずに途中で投げ出
したままだ。若い頃ならそんなことはなかった。年齢を重ねるたびに、臆病さが増し
たのだろうか。その反省も込めて、謝花さん本人の話を、ぜひ聞きたいと思ってい
た。

過酷な戦争体験は、話す側も聞く側も辛く苦しい。体験者にはそのトラウマから、事
実を語らない権利がある。しかしそれでは、後世に教訓が引き継がれない。
同館スタッフの丹羽雅代さんは、「体験者の沈黙と告白のせめぎ合いの中で、展示を
続けている」と集約した。この発言に、アクティビストとして、ジャーナリストとし
ての姿勢が示されている気がした。

Wamの一連のセミナーでは閉会後に、講師を囲んだ交流会を、同じ場所で用意してい
る。現地で基地の重圧に苦しむ人々は異口同音に、本土の人々の無関心を憤る。だが
この日、謝花さんは「本土」という言葉も、「ヤマト」という言葉も使わなかった。
批判の対象として口にしたのは「日本」という二文字だ。それは何を指すのか、誰を
指すのか。私は答えを見つけられないまま、会場を後にした。(Y)
追記 謝花直美さんは、2012年度の「やよりジャーナリスト賞」を受賞した。 同賞の贈呈式が12月1日土曜日午後1時30分から、 早稲田奉仕園AVACO内チャペルで行なわれる。

Created by staff01. Last modified on 2012-11-24 15:39:23 Copyright: Default

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