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神田香織の「ビリー・ホリディ物語」〜破天荒な講談に魅了(木下昌明) | ||||||
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神田香織の「ビリー・ホリディ物語」を聴きにいく(木下昌明) 破天荒な講談に魅了される きのう(2/27)神田香織の講談を見(聴き)に、門仲天井ホールにいった。会場に入って、これが〈女性人権活動奨励賞(やより賞)特別賞(大衆普及)記念公演〉と銘うった公演会と知った。 実は、わたしはこの公演の前座をつとめた高橋織丸とは長年の友人で、彼が定年後にはじめた講談をみる楽しみもあって出かけたのだ。講談を始めて3年目、演目は古典落語ものの一つだったが、その話しっぷりがなかなか堂にいっていて感心した。前口上でも観客を沸かせ、わたしはその成長ぶりにうれしくなった。いよいよ新作が楽しみになってきた。 そして、神田香織の「ビリー・ホリディ物語」。 講談といえば、わたしには古めかしい時代の古典芸の一つという固定観念があって、神田香織をみるまでは一度も足を運んだことがなかった。それが彼女の「チェルノブイリの祈り」や「哀しみの母子像」をみて驚き、かつ魅了された。わたしの抱いていた「講談」のイメージがふっとんでしまった。うーん、やるじゃないか、おぬし!(失礼) とくに「哀しみの母子像」の出だしの米軍飛行機事故の惨状を語るときのスピーディーな情景語りの展開は、まるでドキュメンタリーの映画でもみているように、耳できいているのに目で画面をみているような観があった。 こんどの「ビリー・ホリディ物語」ではピアノとのコラボレーションというか、のっけからマイクを片手に、彼女がジャズを歌いながらさっそうと登場してくるのだ。これだけで「えっ、これが講談なの?」と驚かされる(このときのKAZUKO BABAのピアノとも息がぴったり)。 神田香織の出し物は、およそ講談というイメージとかけ離れていて、この「ビリー」だってアメリカ人のジャズ歌手の半生を介して、そこでの社会問題を扱っている。ビリーは、悲惨な生い立ちから功なり名とげて有名歌手となるが、彼女は、黒人差別の告発の歌ともいうべき「奇妙な果実」――リンチで木に吊るされた黒人の歌――をうたう。抑圧されたものの悲しみと怒りを表現したビリーの歌声は、アメリカ中を圧倒した。 これを神田は、この門仲天井ホールで、歌うように語って観客(わたし)を圧倒した。 といっても、決して涙にくれるドラマではない。神田は、ビリーが生まれ育ったボルチモアも、神田が生まれ育った福島県いわき市も、国は変われど同じような地方だと、せりふをいわき市のずうずう弁で訳し直してみせ、どっと笑わせる。 また、時代背景も、その時の日本の歴史はこうだったと明かして、公民権運動前のビリーの時代を浮かび上がらせる。この視野の広さがいい。これこそ大衆芸術だ! それにしても、このミュージカル風とでもいいたい破天荒な講談に、わたしはすっかりみいられてしまった。カブキ芝居を誕生させた「出雲のおくに」を描いた花田清輝の『ものみな歌でおわる』を連想した。神田香織が現代版「いわきのおくに」にみえてきた――といえば大げさか。 *H.Shimaのラジオコラム516でも取り上げています。→こちら Created by staff01. Last modified on 2011-02-28 16:03:25 Copyright: Default |