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*以下「週刊金曜日」の協力をえて掲載します。

「週刊金曜日」人権とメディア1月21日号 山口正紀

日航「整理解雇」集団提訴
165人の不当解雇を擁護する全国紙社説

 昨年大晦日、日本航空を「整理解雇」されたパイロットと客室乗務員一六五人のうち一四六人が一月一九日、「解雇は違法で無効」として職場復帰などを求める集団訴訟を東京地裁に起こした。同日会見した稲盛和夫・日航会長は、《「申し訳ない気持ちでいっぱい。誠意をもって話をしていきたい」と述べた》(二〇日付『東京新聞』)という。

二〇日夜、インターネット放送『レイバーネットTV』は原告三人をゲストに、この提訴を特集した。日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)委員長・内田妙子さんは稲盛発言を「マスコミ向けポーズ」と批判した。「申し訳ない気持ち、と言われたそうですが、私たちを解雇した、その直後によくそんなコメントが出来るなと思います」

一年前の二〇一〇年一月一九日、日航は会社更生法適用を東京地裁に申請した。二月一日、会長に就任した稲盛氏は、企業再生支援機構が示した「一万六〇〇〇人削減」計画にふれ、「削減数を少なくすることを考えなくてはいけない」「京セラの五〇年の歴史で社員の首切りをしたことは一度もない」と述べた。

内田さんは「この一年、何度も会社と交渉しましたが、会長が出席されたのは一度だけ。その時、『整理解雇はしない』とおっしゃっていましたが…」と語った。「首切り=整理解雇」に慎重だったはずの稲盛会長は、いつから方向転換したのか。

日航と企業再生支援機構は八月三一日、〇宛沺察参円の公的資金注入当初三年計画だった「一万六〇〇〇人削減」の年度内実施9馥盂亜赤字四五路線の撤退――などの更生計画案を東京地裁に提出した。

会見した瀬戸英雄・企業再生支援委員長は「利用客の増加、貨物の好調、コスト削減の複合効果で、計画を上回る収益が実現している」と述べた(九月一日付『朝日新聞』)。再建は順調に進んでいた。

ところがその後、《JAL、解雇も検討/希望退職伸びず組合に打診》(九月二八日付『朝日』)などの記事が各紙に出始める。そして一一月一五日、日航が「パイロットと客室乗務員の一部を整理解雇する」と発表。以後、「整理解雇やむなし」とする社説が各紙に次々掲載された。

まず一一月一九日付『読売新聞』《日航整理解雇/労使対立を収拾し出直し急げ》と題した社説。

《巨額の公的資金を投入して再生を進める以上、リストラの痛みに耐えるしかあるまい》《「不当解雇」を主張する組合も、社内の混乱が続けば再建計画自体が頓挫しかねないことを理解しておかねばならない》

『読売』は、労働者がひたすらリストラを受忍すべきだと主張し、労働組合が「整理解雇」に反対することも非難した。

 続いて二一日付『日本経済新聞』に《日航の整理解雇/やむをえぬ》という社説が載った。

《人員削減は8月末に東京地裁に提出した更生計画案の根幹部分だ。実現できなければ更生計画案は裁判所の認可を受けにくくなり、金融機関との新たな融資の交渉も進められない。そうした状況を考えれば一定の痛みを覚悟し、会社の存続を優先するのは仕方がない側面もある》――整理解雇を受け入れなければ、更生計画案も認められなくなるぞ、という脅しだ。

それをもっと露骨に展開したのが、三〇日付『産経新聞』の《日航の更生計画/スト実施で認可は問題だ》と題した「主張」。

《日航の現状を見る限り、計画案がこのまま認可されることは許されまい。一部労組が人員整理に断固反対の立場を崩さず、ストライキを実施する方針を決めたため、更生計画自体が瓦解しかねないからだ》《日航は労組のゴネ得を許す労使なれ合いの体質もあって、何度も再建が頓挫し、今年1月に破綻した》

『産経』は、労働者の争議権を否定したばかりか、経営破綻の責任まで労組に押し付けた。

この三紙ほど露骨ではないが、他紙もそれに近い主張をした。

一二月二日付『東京』社説《JAL再建/航空政策も変えよう》は、《一部組合はストライキを構えて整理解雇の撤回を求めている。だが多額の公的資金を受けている状況では、組合の強硬姿勢は国民の理解を得にくいだろう》と組合を牽制した。

同三日付『朝日』社説《JAL更生計画/早期再建で国民に報いよ》も、《日航は破綻企業であり公的支援も受けている。希望退職者の募集だけで削減計画数に達しなければ、一定の整理解雇に踏み切らざるをえない状況だ》と、労組に妥協を求めた。

しかし、これらの社説が(意図的かどうかは別にして)、伝えなかった重要なことがある。

第一に、日航が「二五〇人整理解雇」を発表した一一月一五日の時点で、「希望退職」応募者数が当初、日航本体の削減目標としていた一五〇〇人を上回り、すでに一六〇〇人を超えていたこと(最終的に一七〇〇人以上)。それなのに、なぜ二五〇人もの整理解雇が必要なのか――。

第二に、二〇一〇年四月〜九月期の営業利益が当初計画の二五〇億円を大きく上回る一〇九六億円に達し、再建が順調に進んでいたこと。これも整理解雇の必要性を強く否定する。

第三に、整理解雇実施には厳密な四要件(/涌削減の必要性解雇回避努力の実行2鮓杼定基準の合理性げ鮓杣蠡海の妥当性)が必要であり(最高裁で確立した法理)、日航の整理解雇がこの要件を備えていないこと。たとえば、日航の解雇人選基準には、「五五歳以上の機長」「五三歳以上の客室乗務員」などILO条約に違反した年齢差別がある。「希望退職者」数、営業利益などから見ても、「人員削減の必要性」など四要件は全く充たされていなかった。

第四に、二兆三〇〇〇億円もの負債を作ったのはいったいだれなのか、という日航の経営破綻の原因。七〇〜八〇年代以降、天下り官僚多数を含む経営陣の放漫・乱脈経営は、巨額の損失(ドル先物予約で二二〇〇億円、ホテル投資での四〇〇億円など)を出してきた。そのうえ過大な需要予測に基づく過剰投資(二兆円も注ぎ込んだ大型機の大量購入)で損失を重ね、九〇年代以降の「規制緩和」による高収益路線の奪い合いで、不採算路線の赤字補填が不可能になった。これは自民党政権下の航空行政にも重大な責任があった。

この「放漫経営の責任」は、一九日の提訴記者会見でも内田さんが怒りを込めて指摘、説明した。だが、新聞もテレビもこれをほとんど報じなかった。

日航と企業再生支援機構は、当初三年とした大リストラ計画を前倒し実施し、希望退職者も目標を実現した。ではなぜ強引な「整理解雇」を行なったのか。

一連の経過が物語るのは、「会社再建」とは別の意図、闘う労働組合と活動家の排除だ。解雇された人の多くが、客室乗務員で作るCCU、パイロットで作る日本航空乗員組合という「非御用組合」のメンバーだった。

まさに、八〇年代の「国鉄分割民営化」攻撃と同じパターンではないか。当時、『読売』『産経』『朝日』の三紙が中心になって、「国鉄赤字」「職場荒廃・人員余剰」キャンペーンを展開し、その矛先を国労・総評に向けて、国鉄解体、不当解雇、労働者差別、総評解体を推し進めた。

今回の整理解雇は、企業再生支援機構=準国家機関がメディアを使い、「公的支援を受けた再建会社には労働法を適用しない」というモデル作りを企んだものだ。それが許されれば、国家的不当労働行為が日常化する。

この中で、ないがしろにされるのが、「国鉄解体」と同じ安全性・公共性。経験豊かなパイロットや乗務員を「年齢」で切り捨て、整備要員も切り詰める。その一方、採算性を理由に地方路線は次々廃止されていく……。

二〇日のレイバーネットTV。ジョニーHさんが「JAL不当解雇撤回応援歌」を披露した。

J(ジェット機買いすぎ)A(あわてて)L(リストラ)/J(人員削減)A(安全無視して)L(労組員だけクビにする)

ジョニーさん自身、不当解雇と闘う教育労働者だ。内田さんら三人も番組スタッフも声を合わせ、「勇気を出し合おう」と歌った。コメント役の私は胸が熱くなり、困ってしまった。(番組はアーカイブで視聴できる)

*写真は、レイバーネットTVでジョニーHさん(右)と声を合わせ、「不当解雇撤回応援歌」を歌う原告団の内田妙子さん(中央)たち(杭迫隆太さん撮影・提供)

レイバーネットTV・1月放送アーカイブ


Created by staff01. Last modified on 2011-02-10 10:29:40 Copyright: Default

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