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LNJ Logo 微罪逮捕国賠訴訟、高裁でも勝利判決
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運転免許証に記載された住所が、かつて住んでいた実家のままになっていたとして06年10月、神奈川県警に逮捕されたAさんと、その所属団体らが県と国を相手取り、損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が9日午後、東京高裁であった。民事820号法廷の鈴木健太裁判長は、原告・被告双方の控訴をいずれも棄却する、一審支持の原告勝利判決を言い渡した。

■事件の概要

2006年10月24日朝。小田原市に住むフリー編集者のAさんは、出勤のため自宅マンションの駐輪場に降りたところを、神奈川県警公安三課によって突然令状逮捕された。容疑は「公正証書原本不実記載等」(免状等不実記載)。ひと月前の運転免許証更新の際に、住民票がある鎌倉の実家の住所で申請したことがその理由だった。 この直後から7時間にもおよぶ家宅捜索が行なわれた。逮捕現場と免許証に記載された鎌倉の実家、所属する新左翼団体の東京と大阪の事務所の計5箇所が続けざまに捜索を受け、押収品の数は合計118点にも上った。

事件から2週間。警察の強引なやりかたに抗議する声明に、275人・39団体が賛同を寄せた。Aさんは小田原署に10日間勾留された後、不起訴処分で釈放された。

Aさんと捜索を受けた三者は同年12月、神奈川県と国に総額275万円の支払いを求めて横浜地裁に提訴。裁判は8回の公判を経て昨年10月に結審した。事件からちょうど2年が経っていた。

横浜地裁(三代川俊一郎裁判長)は原告らの訴えをほぼ受け入れ、被告神奈川県に対し総額55万円の賠償を命じる画期的な判決を下した。だが被告らはこの判決を不服として控訴。闘いの舞台は、市民運動にことごとく敵対してその名を馳せる東京高裁に移った。

■静寂のなかで

午後12時30分。控え室に支援者が集まり始める。法廷のドアは13時ちょうどに開かれた。向かって右側の原告席には4人が座ったが、左側の被告席に姿を見せたのは、代理人と思しき人物たった一人だけだった。

一人また一人と、音を立てずにドアが開いて、傍聴席が埋まっていく。誰ひとり口を開かない。開廷までの10分間は静寂が支配し、とても長く感じられた。

「主文、本件控訴をいずれも棄却する」――裁判長が言い渡すと、一拍の間をおいて、後方から「ヨシッ」という低いうなり声が聞こえた。傍聴人が次々と足早に席を立った。通路に出ると静かな笑い声が起こった。勝ったのだ。まさかの勝利判決を手にしたのだ。

「判決の瞬間は、やはり緊張するものだね」――原告を支えてきた内田雅敏弁護士(写真)の顔にも、ようやく笑みがこぼれた。裁判長が「ほ」というか、「げ」というか。主文読みあげの最初の一文字で、内容がわかると言う。「ほ」は「本件控訴棄却」で今回の勝利判決。「げ」は「原審(一審判決)破棄」の逆転敗訴だ。

これまで数多の新左翼事件に関わってきたが、法廷周辺に警備員が配置されている場合は、負けることが多いと内田さんは指摘する。支援者の質問に応え、「おそらく神奈川県は上告するだろう。最高裁でひっくり返される可能性も、ないではない」と唇を結んだ。

「麻生邸見学ツアー事件」をはじめ、微罪・別件逮捕の治安弾圧が吹き荒れる昨今。今回の裁判所の判断が、警察のやりたい放題にブレーキをかける結果になるか。9月12日夜には、判決を詳細に検討する報告集会が予定されている。(佐藤隆)  

※追記

今回判決を下した東京高裁・鈴木健太裁判長は、日本マクドナルドの「名ばかり管理職裁判」も担当。残業代など1000万円を店長に支払う和解を成立させている。


Created by staff01. Last modified on 2009-09-25 19:53:46 Copyright: Default

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