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LNJ Logo 【報告】パナソニック派遣社員解雇撤回訴訟
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黒鉄好@福島です。
パナソニック電工(旧松下電工)から解雇され、地位確認訴訟を起こした佐藤昌子さんの裁判が、いよいよ福島地裁郡山支部で始まりました。その第1回口頭弁論に行ってきましたので報告します。

訴状によれば、佐藤さんは1991年2月から松下電工福島住設建材営業所で働き始め、同年4月から松下グループ内の派遣会社である株式会社アロービジネスメイツ(ABM)へ移籍し、元の職場である松下電工福島住設建材営業所へ派遣される派遣社員となりました。労働契約書には、当時、派遣業務が認められていた16業種の一つである「事務用機器の操作」とされ、1996年、派遣業種が拡大し26業種となった後は「インテリアコーディネイター」とされていました。しかし、実際には「採用から一貫してショールームでの商品説明などを担当してきた」と主張しています。

松下電工は、「事務用機器操作」で佐藤さんを雇用しながら、派遣法で認められていなかったその他の業務をさせており、労働者派遣法に違反する違法派遣を行っていたのです。

1月9日午前11時から始まった口頭弁論には、20名の傍聴席を巡って40人が列を作りました。抽選の結果、私は法廷内には入れませんでしたが、集会での報告によれば、パナソニック電工など被告側は「佐藤さんを正社員として雇用した事実はない」などと、驚くべき主張をしてきました。だとすれば、ABM転籍前の2ヶ月間(91年2〜3月)、佐藤さんは誰に雇われ、誰に給与をもらっていたのか? 事実に反する全くおかしな主張です。

さらにパナソニック電工など被告側は、「1級建築士の資格を持つ佐藤さんが、CADを使用して設備機器類の設計を行うためパソコンを操作していたことのみをもって「業務内容が事務用機器の操作であり、違法派遣ではない」と主張していますが、これも全く認められない荒唐無稽なものです。このような主張が認められるならば、営業マンが営業活動を終えて帰社後、営業報告書を作れば「事務用機器の操作」、工事の現場監督が会社に帰って図面を作成すればそれも「事務用機器の操作」ということになります。改悪され、派遣業務の対象が原則自由となる前の旧派遣法の下でも、労働者をパソコンに触らせさえすれば事実上全業種に労働者派遣ができたことになってしまいます。
被告側の主張は、このように事実に反する主張と詭弁・強弁に満ちたもので、とうてい認められません。

報告集会では、原告側の鈴木宏一・主任弁護士から「淡々と事実を積み上げ、立証していく」との裁判方針が示されました。また、鈴木弁護士から「派遣労働者の契約は、派遣元と派遣先との“労働者供給事業契約”により決められ、解雇権濫用法理の適用もない。派遣法が“首切り法”として機能する現状では、派遣法廃止を求める闘いしかあり得ない」との力強い決意が示されました。

派遣法がここまでの悪法だということを、不勉強だった私は初めて知りました。派遣労働者の運命は、労働契約ではなく事業契約によって決められる。派遣先企業にとって、派遣労働者はあたかも商品のように「注文し、納品してもらう」ものであり、不要になったときはいつでも「廃棄、返品」できる。昨年末から続いている「派遣切り」にしても、経団連に加盟する企業の偉い経営者様はきっと「いらなくなったゴミを収集場に捨てて何が悪い」程度にしか思っていないのかもしれません。

今回、裁判闘争に立ち上がった佐藤さんは「失業によって今生活は困窮状態にあるが、(解雇によって自分と)同じような心の傷を受けた人の心の痛みを自分のことと捉えたいし、それを救うことができない社会がよい社会とは思えない。そのことを訴え、派遣法の廃絶に向けてがんばっていきたい」と決意表明しました。

弁護団からの報告と佐藤さんの決意表明の後、記者会見が行われました。

−−(NHK)訴訟を起こしてみて、今の心境は。
佐藤さん「地域の非正規の人たちのことを訴えながら裁判を闘っていきたい」

−−(朝日新聞)今、「派遣切り」が問題となっている中で、感じることは。
佐藤さん「これだけ派遣切りが問題になっている中で、派遣の裁判が起こらないことに大変だと思っているが、派遣法が労働者保護法になっていない現実の中で、立ち上がることができない現実があると思う。労働者を切り捨てやすい法律になってしまっている。私自身も、失業後すぐに仕事を始めないと生活ができない。そういうことがあって派遣の人が裁判を起こすことができない構造がある」

−−(朝日新聞)パナソニック側が「原告の仕事は事務用機器の操作」等と主張しているが、今後、どのような証拠で反論する計画か。
鈴木弁護士「先ほども申し上げたが、実際にやっていた業務内容をきちんと訴えていきたい」
宮城合同労組・星野委員長「パナソニック電工にはCADなどの業務を行う部署が別にある。彼女がやっていた業務がCADの操作だというのなら、なぜ彼女をそれと全く関係のないショールームに置いたのか。そのあたりの証拠を今後、固めていきたい」

−−(朝日新聞)今後、原告の同僚らに証言に立ってもらうことは考えていないのか。
鈴木弁護士「基本的には原告の証言だけで足りると考えているが、今後の訴訟の展開によってはあり得る」

−−(福島中央テレビ)……(質問内容が聞き取れず)
鈴木弁護士「被告側は、派遣の形をとっていれば職業安定法違反ではないのだというめちゃくちゃな主張をしている。中間搾取を禁じた職業安定法、労働基準法に違反しているなかで、そういう主張しかできていないということは、(被告側は)相当苦しい裁判だという感じがする」

この後、鈴木弁護士は「派遣法はやはりなくさなければならないと思っている。企業の利便性を優先した法律でしかないが、そういった使い勝手を優先した新自由主義的な政策が一気に破綻したのが最近の情勢だと思う。派遣法をなくして、企業は正規職員として雇わなければならない。その上で出た利益を株主に還元すればいい。これまでは株主がすべてだった。株主の利益のため搾取しなければならない。コストカットのために派遣だ、となった。そういう社会全体の仕組みを抜本的に変えるべき時に今、来ている。そのことを訴えていく」と、今後の方針を表明して、報告集会を終えました。

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黒鉄 好(旧・特急たから)aichi200410@yahoo.co.jp

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