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LNJ Logo 本紹介「読むドキュメンタリー映画2001〜2009」
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書評「読むドキュメンタリー映画 2001〜2009」楠山忠之 風塵社

最近、製作されるドキュメンタリー映画が増えている。秀作ばかりではないが、観た人の感想を後から聞くと、見逃したことを後悔することがよくある。最近は、DVDになって後から観ることができるのでうれしい。そんな時、この本が観る映画の指南役になりそうだ。

本書にはドキュメンタリー映画59本が解説され、資料として45本が紹介されている。硬派の映画、例えば「日本国憲法」「ひめゆり」から、「ザ・ストリップ 裸の文化史」という柔らかめの映画まで同じ土俵で解説される。

ガザ地区の難民キャンプに暮らす一人の女性を12年間にわたって取材した「ガーダ パレスチナの詩」(監督・古居みずえ)では、作品のストーリーなどを書いたあと「パレスチナ問題は遠い国の話ではない。日本も現実的には米軍の『被占領地』だ。(中略)私たちが本当に独立するには『沖縄解放』が成し遂げられなければならず、そのための闘いは、続いている」とパレスチナ問題を私たち自身の問題へと引きつける。また、トラック運転手の若者が組合に参加し、会社側と闘う姿を描いた「フツーの仕事がしたい」(監督・土屋トカチ)では、「労働者は組合をつくり、会社側に分断されない闘いをしなければ、労働環境は改善しない、と私は信じている」と自らの経験から映画への共感を示し「資本主義とか自由主義は、実は権力者や金儲け至上主義の企業経営者に都合の良いシステムを生み出してきた。職を失い、労働報酬が入らなくなれば、労働者のにとっては、飲めない泉と同じになる。気がつけば基本的人権も文化的生活も奪われてしまうのが現代だ」と広がる社会、経済格差への憂いを書く。

著者はフォトジャーナリストとして長い経歴を持つ。この本は「ドキュメンタリー映画の熱烈な一ファン」として書かれているが、本職で培った社会の不正義に対する鋭い感性はさすがだ。同じ映画を観ていても、こういう捉え方もあるのか、と読んでいて感じ入ることが多かった。

長倉徳生(フリーカメラマン)


Created by staff01. Last modified on 2009-10-27 13:31:38 Copyright: Default

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