米軍岩国基地の中で見たこと | |||||||
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坂井貴司です。
山口県岩国市にある米軍岩国基地が、今日5月5日、一般開放されました。 「MCASフレンドシップデー」という催しです。日米親善を深めるというのが目的 だそうです。 私はこれまで、岩国基地拡張反対デモに2回参加し、基地の外側から基地撤去 を叫びました。シュプレヒコールを上げながら、私はフェンスの向こう側に入っ て、基地の中を一度は見てみたいと思いました。それが今日かないました。 福岡(博多駅)から新幹線に乗って広島へ行き、JR山陽本線の普通列車に乗り 換えて岩国へ向かいました。方向的には逆戻りになりますけれど、各駅停車の 「こだま」号しか停車しない新幹線新岩国駅(しかも市内から離れています)を 利用するよりも、「のぞみ」号や「ひかり」号で、いったん広島へ行った方が早 い場合があります。 岩国行きの列車は満員でした。乗客のほとんどは岩国基地が目当てです。日本 人だけでなく外国人も多くいました。ポルトガル語や中国語、タガログ語、英語 が聞こえました。岩国駅に着くと、駅は基地へ行く観光客でごったがえしていま した。その数に驚きました。駅前の商店街は人であふれ、たくさんの出店が出て いました。 私は、 瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク http://www.geocities.jp/setouchi_net08/index.html が開催したフィールドワークに参加しました。 午前10時30分、岩国駅から徒歩で岩国基地へ向かいました。私が過去参加 したデモコースと同じ道です。 ジェット機の爆音が聞こえました。デモンストレーション飛行が始まっていま した。 過去のデモの時にはひっそりしていた基地正門前の商店街は、歩くのが困難な くらい人であふれていました。露天がずらりと並んでいました。 正門から基地に入りました。黄土色の迷彩服を着た米兵が荷物のチェックを行 っていました。しかし、そのチェックは拍子抜けするほど簡単でした。リュック サックやバッグの中をちらりと見て「OK」です。テロ対策のためにX線検査をす るだろうと思っていましたが、そんな厳重なものではありませんでした。 「住民投票を力にする会」 http://www5f.biglobe.ne.jp/~cosmos/maru/3.12.html の方が基地内の案内をしてくださいました。 最初に案内してくださったのが、展示してあるダグラスA-4「スカイホーク」 攻撃機でした。写真ではよく見たことのある攻撃機ですが、実物をみたのはこれ が初めてです。思ったよりも小さな飛行機でした。 「これはA−4攻撃機です。スカイホークとも呼ばれています。Aとは攻撃を意 味するアタックの頭文字です。 みなさん、小さいからだといって、この飛行機をバカにしてはいけません。約 10トンの爆弾やミサイルを搭載できます。沖縄で空母タイコンデロガから海中 に落ちた同じ型のスカイホークは、水爆が搭載できるものでした」 スカイホークは、ベトナム戦争ではF4ファントム戦闘機と並ぶ主力機として、 ベトナムの民衆の頭上に、ナパーム弾やボール爆弾の雨を降らせました。軽くて 頑丈、整備が簡単と言うことで世界中の軍隊に輸出されました。アメリカでは引 退しています。 次は、基地内で一番高い建物である住宅ビルです。 「あれは階級が低い軍人の家族向けの住宅ビルです。これは例の思いやり予算 で建てられました。向こうに見えるのが、将校の家族向けの住宅ビルです。一戸 あたり3000万円の予算がかかったということです。全部私たちの税金から出 た思いやり予算です。それから、白壁が建設されていますね。去年は無かったけ ど・・・」 一同、ため息がでました。どう見ても一戸あたり3000万円かかったような 建物には見えません。そして日本風の白壁が建てられていたことにも疑問を感じ ました。 アルファベットが書かれた標識を説明しました。 「GとかFとかの標識は、テロ対策のため、基地の敷地をアルファベットで区割 りしたことを表しています。なにかあった時、G地区へ行け、とか言います。岩 国基地は対テロ対策が西太平洋地区で一番進んでいると、表彰されたことがあり ます」 次は小型の大砲が置かれた建物に行きました。扉に4という数字が書いてあり ます。 「この建物は、危険度4の危険物を収納する倉庫です。一番危険度が高い1か ら低い4まであります。この建物にあるのは拳銃の弾丸ではないでしょうか。 もちろんこの基地には、危険度1のミサイルや爆弾を収納する倉庫があります。 滑走路の向こう側、海側の地下倉庫です。かつては核兵器もありました。危険度 1の倉庫は、基地住宅から一番遠い所にあります。アメリカ人の安全しか考えて いません。地元の日本人のことなぞ考えていないのです」 滑走路に向かいました。米軍や自衛隊の飛行機やヘリコプターがずらりと並ん でいます。その向こう側には数十台もの貸し切りバスが止まっていました。基地 目当ての観光ツアーバスです。 スマートなジェット戦闘機と、ズングリした攻撃機の前で止まりました。 「F18ホーネット戦闘攻撃機です。岩国基地の主力機です。みなさん、操縦席 を見てください。これは一人乗り、あれはは二人乗りです。今、二人乗りが配備 されています。攻撃能力が高い二人乗りが岩国基地に配備されたことは、基地強 化の現れです。これはアメリカ軍人向けの雑誌でも指摘されています。 それから、尾翼にZZと書いてありますね。あれは沖縄の嘉手納基地所属を表し ています。展示するために嘉手納基地から飛んできたものです。 このずんぐりした飛行機は、A-10サンダーボルト攻撃機です。機首についてい るガトリング砲で戦車などを攻撃します。別名を戦車殺しと言います。あのガト リング砲は劣化ウラン弾を使用するとのことです」 次に、機関銃を積んだトラックと軍用車の前に移動しました。車の前には長い 行列ができています。機関銃の台座に座って、銃を構えての記念撮影です。ポー ズを決めるのは皆、小学生以下のこどもたちでした。米兵と一緒に写っています。 親たちが撮影していました。 「人殺しの武器を子どもたちにさわらせて記念撮影です。教育に悪いことです。 ああやって武器に慣れさせています」 気持ちよい光景ではありませんでした。喜々として撮影する親たちの姿が不気 味でした。 次に管制塔の前に来ました。向こう側ではレーダーがクルクル回っているのが 見えました。 「この管制塔は岩国基地だけでなく、松山、山口宇部空港の空も管理していま す。中国地方西部の空は、アメリカ軍の管理下に置かれています。非常に屈辱的 なことです」 そして、地面が見えないほど人で埋まっている滑走路につきました。ちょうど、 F18戦闘攻撃のデモンストレーション飛行が始まる所でした。ここでフィール ドワークは終了ということでした。 無数のカメラが空を向く中、4機のF18が飛び立ちました。私の向かって右 側から左側へ飛んでいきます。 右側から小さな点が近づいてきます。それはあっという間に大きくなりました。 不思議なことに音が聞こえません。目の前を通ると、後ろから音が響きました。 「キュイーン、ズドドドドド、ドオーン!」 それは雷が響く音に似ていました。でも雷にはないすさまじい不愉快な音でし た。鼓膜が破れるかと思いました。耳を塞ぐ人がいました。初めて自分の耳で聞 く爆音です。全身に響きました。 岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会 http://www.k5.dion.ne.jp/~stop/iwakuni-kichi/ でその爆音を聞くことができますけれど、実際に聞いた爆音はすさまじいの一言 です。 「これはたまらん。毎日こんなのを聞かされたら死んでしまう!」 と思いました。 このデモンストレーション飛行は、対地攻撃の模擬戦でした。4機のF18は旋 回、急降下、急上昇、きりもみ飛行など行いました。その度に、耐えられない爆 音を聞きました。 後ろにあるやぐらは放送席で、英語と日本語で放送していました。日本語のア ナウンサーは、飛行機の性能とアメリカ軍パイロットの腕の良さを褒め称えまし た。しきりに「崇高な使命」を言いました。 これが終わると、プロペラ機のアクロバット飛行とパラシュート降下です。パ ラシュート降下するのは米陸軍の特殊部隊グリーンベレーの元隊員とのことでし た。プロペラ機とスポーツカーとの競争というのもありました。 デモンストレーション飛行が終わった後、私は展示されている飛行機を見まし た。岩国基地に駐留している海兵隊の他に、米海軍航空隊や陸軍のヘリコプター、 日本の陸海空自衛隊の飛行機がたくさん展示されていました。C130ハーキュ リーズ輸送機の中に入ることができました。中は狭いものでした。 米軍や自衛隊のパイロットたちが説明をしたり、記念写真を一緒に撮っていま した。皆、ニコニコしていました。特に米軍側の愛想の良さには感心しました。 飛行機の他に、岩国基地の軍人やその家族の模擬店も数多くありました。私は ホットドッグを買いました。日本人業者の露天も多くありました。 岩国基地のシンボルマークには、神社の鳥居が使われています。基地内のあち こちには朱塗りの鳥居が建っています。でも祠はありません。 ゴルフ場や「サクラ」と言う名の映画館もありました。料金は大人三ドル、子 ども一ドルでした。アメリカ国内の映画料金の半額以下です。 点呼の声が聞こえました。寄って見ると、警棒やプロテクター、盾などが地面 に並んでいます。その前で警備担当の憲兵(MP)が整列しています。なにか事が 起きたら出動するために装備していたのです。しかし、無事に終わったので 装備を外しました。緊張感は感じられませんでした。 16時で基地開放の終わりです。多くの人々が家路につきます。警備担当の米 兵が笑顔で握手したり。「また来てください」と話しかけています。実に「友好 的」な雰囲気でした。本当にイラクやアフガニスタンで戦争をしているのかと思 えないほどのんびりしていました。 こうして、1日だけの基地開放は終わりました。 行ってみて判ったのは、アメリカ軍機の騒音のひどさと、フェンスの外側と内 側には全く異なる世界があるということでした。騒音のひどさは体で判りました。 基地撤去は人間として当然の行為であると確信しました。そして徒歩で岩国駅へ 向かう間、私はほっとした気持ちになりました。いくら米兵や自衛隊隊員が笑顔 をふりまいても、軍事基地は殺人と破壊のためにある「不毛の存在」(佐木隆三) でしかないことが判ったからです。 現場に行ってみて初めて判ることがある、と判った一日でした。 Created by staff01. Last modified on 2008-05-12 22:56:47 Copyright: Default |