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LNJ Logo 賛同募集 : 中国・無錫松下電池のカドミウム被害問題
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稲垣です。

今年1月にカドミウム被害が発覚して労働者がストライキなどで抗議した、中国・無錫にある無錫松下電池の問題は現在も継続しているようです。この問題を中国国内だけの問題ではなく、中国に進出する日本の多国籍企業の問題として、日本国内でも何らかの取り組みが必要だということで、以下のような申し入れを松下電池/松下電器に行うことになりました。

つきましては、この問題に関心を寄せる日本の労働団体、消費者団体、市民団体、社会運動団体のみなさんとともに、申し入れを行ないたいと思っています。賛同団体を募集していますので、どうぞご協力ください。

詳細は下記、各団体への要請書、および申し入れ書をお読みください。

何か分からないことがあればわたしにメールをいただければお答え可能です。どうぞ、よろしくお願いします。

稲垣 豊

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要請書

関係団体各位

日ごろよりの奮闘に敬意を表します。

今回は、今年一月に中国・無錫にある無錫松下電池有限公司で発覚したカドミウム被害の実態解明と問題解決について、心ある日本の皆様にご支援を求める次第です。

2007年の正月休みが明けた一月四日、中国・無錫市にある松下電池の工場で、労働者たちがカドミウム汚染の恐れがある、ということで会社側に真相を求めて一週間に及ぶストライキを行いました。その後、会社側は再検査を行うことを約束し、現地報道でもこの問題が取り上げられることが少なくなり、事態は一時収束したかに思えました。

しかし、4月末に、年頭のストライキ当時に人事部副部長として労働者の対応に当たった中国人管理者が会社を辞めて当時の事件の経過を詳細に暴露したことで、現地では再び報道がこの問題を取り上げ始めました。

報道によると、ストライキに参加した労働者の多くは、カドミウム汚染などの拡大を恐れて職場を去っていきましたが、いまだに通院しながら正当な補償を求める労働者が、会社側と交渉を続けているとのことでした。報道からすると、会社側は労働者の要求に対してのらりくらりと時間の引き延ばしを行い、責任逃れに終始しているかのようです。

無錫松下電池有限公司は、松下電器産業(40%)と松下電池工業(60%)の出資による海外子会社であり、2001年7月に中国・無錫に進出、バッテリーパック、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などを生産しています。松下電池工業では1961年ナショナルタイ(株)の設立から2001年の無錫松下電池有限公司(パナソニックバッテリー無錫)の設立まで、全世界に22の海外拠点を展開しています。

とりわけ近年においては、1993年に上海、95年に安陽、珠海、そして01年の無錫と中国を中心とした生産体制を進めています。当然これらの海外進出の背景には進展する経済のグローバル化に対する松下電器産業をはじめとする松下グループの経営戦略があります。

今回、無錫松下電池で発生したカドミウム被害の責任は、現地法人のみに帰せられるわけにはいきません。日本本社はグローバル経営戦略における利潤だけでなく責任をも明確に引き受ける必要があると考えています。グローバル戦略の最先端で発生している日本資本による労災や労働者への抑圧は、そのもう一方の先端である日本国内における産業の空洞化や格差社会と一体のものです。

中国に進出する日本企業は約3万7000社を超え、投資実行額は約600億ドルに達しています。昨年、戦後初めて日米貿易額を超えて、日中貿易額が最大になりました。その70%は中国に進出した外資系企業との取引でした。日本資本にとっても、また中国政府にとっても、すでに両国の緊密な経済関係はその支配構造の中に組み込まれています。

同様に、松下電池の現地工場のある江蘇省無錫市は、中国の15の経済中心都市の一つであり、多くの日系企業が進出しています。日系企業は1081社、総投資額78.42億ドル、在留日本人は3000人、日本との貿易も05年に69.6億ドルにのぼり、同市最大の貿易パートナーになっています。

このような状況において、「良好な二国間関係」に水差し、日本企業の投資意欲を減退させるような中国労働者の要求は、中国現地の政府や公式の労働組合からも歓迎されないことは容易に想像ができます。日本資本の横暴に声を上げた現地の労働者たちを孤立無援のまま見過ごすことはできません。日本の中でしっかりと声をあげることが必要だと考えています。

中国に進出した日本企業が引き起こした問題に対するこのようなアプローチはおそらく今回が初めてのことになると思います。今後もみなさんのお力を借りながら、国境を越えた真の連帯にもとづく日中友好とアジア・太平洋地域の草の根労働者、市民による取組みを継続していきたいと思います。

グローバル化にともなう海外展開は、企業だけの専売特許ではありません。労働者、市民団体、消費者団体、社会運動団体の国境を越えた連帯、そしてなにより生産拠点の労働者たちの団結をこそが、経済のグローバル化をすすめる多国籍企業によって引き起こされているさまざまな問題を解決する本当の力になるでしょう。ぜひ各団体のご支援を承りたく、ここに要請書を送らせていただいた次第です。

添付しました申し入れ文書に賛同いただける団体は、7月23日(月)までに下記までご連絡をください。7月末に松下電池および松下電器本社(大阪府門真市)に対する申し入れを予定していますのでそちらにも参加していただける団体の方はその旨をお書きになっていただければ、こちらから日時、場所などをおってお知らせさせていただきます。

■ 賛同申し込み先
アジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会
FAX 06−6352−9630(ゼネラルユニオン)
メール apwsljp@jca.apc.org

下記事項を記入してください。
団体名:
担当者:
連絡先:

■ アジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会
東京都台東区上野1-1-12 新広小路ビル4F 共同センター・労働情報 気付
FAX 03-3837-2544  Eメール:apwsljp@jca.apc.org
ウェブサイト http://www.jca.apc.org/apwsljp/
関西連絡所 大阪市 北区 天満1-6-8 六甲天満ビル 201 ゼネラルユニオン気付 
FAX 06-6352-9630

※APWSLはアジア太平洋の16カ国・地域にネットワークを持つ草の根労働者の組織です。

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■ 資料
1月ストライキの報道 http://chinanow.blog28.fc2.com/blog-entry-30.html
5月内部告発の報道 http://chinanow.blog28.fc2.com/blog-entry-31.html

松下電池工業株式会社Matsushita Battery Industrial Co.,Ltd.
本社: 〒570-8511大阪府守口市松下町1番1号 
TEL(06)6991-1141
代表者: 取締役社長 近藤 正嗣
設立: 1979年(昭和54年) 1月16日 [ 松下電器産業(株)より分離・独立 ]
事業内容: 一次電池、二次電池をはじめ、充電器、電池応用機器・部材などの生産・販売。

資本金: 105 億円
従業員数: 約2,100名(別に国内・海外関係会社 約17,000名)
国内関係会社:
・辻中電化工業株式会社
・朝日乾電池株式会社
・ナショナルバッテリーエンジニアリング株式会社
・パナソニックストレージバッテリー株式会社
・パナソニックバッテリーエレクトロード株式会社

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【申し入れ文書】

松下電器産業株式会社 代表取締役社長 大坪 文雄 様
松下電池工業株式会社 取締役社長 近藤 正嗣 様

わたしたちは無錫松下電池有限公司において発生したカドミウム問題に関心を寄せる日本の労働団体、市民団体、消費者団体などからなるネットワークです。

■ カドミウム被害の実態の開示を求めます

今年1月、日本のマスコミ報道で中国・無錫にある「無錫松下電池有限公司」でカドミウム被害を懸念する労働者1000人がストライキに突入し操業が1週間停止した、というニュースが流れました。日本側の報道では「誤解だ」という会社側の主張のみが一方的に取り上げられていましたが、現地メディアでは、会社側が「誤解」を招くような対応をとり続けてきたことなどが報道されていました。

4月末、無錫松下電池有限公司の元人事部副部長という人物が、1月のカドミウム事件の詳しい経過を自らのブログ上に掲載し、中国現地のメディアも再びこの問題をクローズアップしたことで、1月のカドミウム事件に至るまでの、そしてその後の労働者に対する会社側の不誠実な対応が明らかになってきました。

この元人事部副部長によると、カドミウムを取り扱うラインの労働者の定期健康診断の結果、10名の労働者がカドミウム含有量が基準を上回っていたにもかかわらず、全員合格として発表することを強要されたといいます。それまでに行われた定期健康診断においても、本当の診断結果を明らかせず、その結果、カドミウムに侵されていることを知らないまま職場を去ったり、結婚して子どもを出産した労働者もいたそうです。検査結果を歪めて伝えたという点だけをとっても中国の関連法規(職業病防止治療法32条)などに違反する重大な違法行為です。

無錫松下電池有限公司において、なぜカドミウム被害が広がったのかという理由と被害者数や被害の実態を明らかにすることを求めます。

■ 労働者の要求と会社側の対応を明らかにすることを求めます

5月に入り、現地メディアは、勇気を出して当時の実態を告発した元人事部長だけでなく、カドミウム基準オーバーと診断された労働者たちへの取材などを通じて、いまだ無錫松下電池有限公司が、被災した労働者に対して納得のいく補償や謝罪を行っていないことが明らかになりました。

現地報道によると、無錫松下電池有限公司は、被災労働者に対して、わずかばかりの手当てや形だけの慰問など以外の正式な補償には一切応じようとはしていません。いやなら辞めてしまえ、と言わんばかりの対応です。しかしカドミウムは永久に労働者の身体を蝕み続けます。いま日本でも問題になっているアスベスト問題と同様の問題が、将来の中国において発生しない保障はどこにもありません。

無錫松下電池有限公司が、カドミウム被害の拡大を防止するためにどのような対策を採られたのか明らかにすることを求めます。また、カドミウムの被害を受けた労働者およびその家族からどのような要求が出ているのか、そしてそれらの要求に対して同社がどのような対応をとられたのかを明らかにするように求めます。

■ 日本本社の責任の明確化を求めます

無錫松下電池有限公司は、松下電器産業(40%)と松下電池工業(60%)の出資による海外子会社であり、2001年7月に中国・無錫に進出、2002年1月から電動工具用のニカド電池の生産を開始しています。松下電池工業では1961年ナショナルタイ(株)の設立から2001年の無錫松下電池有限公司(パナソニックバッテリー無錫)の設立まで、全世界に22の海外拠点を展開しています。

グローバル経営戦略の最先端で発生したカドミウム被害について、親会社である御社の責任は重大です。今回のカドミウム被害の発覚を受けて、御社が無錫松下電池有限公司に対してどのような指導をなされたのかを明らかにすることを求めます。

また、無錫松下電池有限公司がカドミウム被害に遭ったすべての労働者に対して、被害を放置し、うその検査結果を報告してきたことについて謝罪し、被害者全員との誠実な話し合いの上で被害者自身が納得する補償を行い、今後の事故防止措置を徹底するよう、親会社である御社が指導することを強く求めます。

2007年7月●日
賛同団体一同

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