本文の先頭へ
LNJ Logo フランス鉄道民営化の問題
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item nomore-sud
Status: published
View


●ノーモア尼崎事故キャンペーン・国際シンポ資料

フランス――民営化は刻々と進行中!

SUD−RAIL、ミッシェル・デマルス

ヨーロッパや世界中の国々と同様、フランスでも鉄道輸送の民営化が進んでいます。たしかに民営化の方式は、少しほかと違うかもしれません。しかし、フランスでは、かなり早い時期からはじまっています。

フランス国有鉄道(SNCF、以下「フランス国鉄」に省略)は、民間会社の相次ぐ倒産を受けて、1937年に創設されました。しかし、1950年代以来、子会社がつくられ、かつて潰れた民間会社の所有者が、子会社の株主として、しばしば取締役会の多数派を占めるようになりました。これらの子会社は、当然ながら、高い収益率の見込めるセクターに集中しました。その結果、親会社のフランス国鉄が赤字経営なのに、子会社の方は黒字を重ねるという事態がうまれたのです。「損失は国有化し、利益は民営化する」というこの原則は、その後も何段階かにわたって実施されました。こうして、増大する鉄道輸送のニーズに応えて、フランス国鉄が本格的な公共サービスに成長していく一方で、その解体が刻々と進められてきたのです。

たとえば、駅の閉鎖や路線の廃止、停車駅の削減や列車の廃止が、つねに国鉄の赤字を理由に強行されました。また1970年代には、民間企業の経営基準を公共サービス部門の運営にも適用するべきだ、との答申が首相に提出されました。収益性の重視、財政支出のバランスの確保、業種別の経営などです。こうして乗客は「顧客」(クライアント)とみなされるようになりました。また貧富の格差を問わず、全国一律の公共サービスを保障するための運賃調整システムも、時代遅れの制度とみなされるようになりました。この新しい経営方式は、まもなくセクターごとに始まるフランス国鉄の解体を先取りするものでした。さらに同じ頃、「経済地域」(という行政区分)の創設を受けて、各駅停車の旅客車はこれらの地域に移管させられました。

近年の欧州共同体は、いまの支配的な自由主義路線を歩みつつあります。そして、「自由競争」の名の下に、その行政機関や指令を通じて、この民営化の流れを加速させています。こうして、フランスの鉄道網は、国鉄の赤字の一部とともに「フランス鉄道網」(RFF)という名の新設会社に売却され、インフラ部分の所有権を失ったフランス国鉄は、この会社に鉄道の使用料を支払わなければならなくなったのです。またこの四月一日以来、貨物列車部門は、民間会社との競争にさらされることになりました。新規参入予定は今のところ六社あり、なかにはアルセラー社のように、フランス国鉄の従来の顧客だった会社もあります。ほかにも、これから鉄道輸送会社としての申請書類や安全免許を国に提出する会社もあります。たとえば、建設業と公共事業を専門とし、毎年三〇〇万トンの輸送の発注者であるコラ社などです。

そして、いま審議中の指令が発令されれば、いよいよ明日は旅客車部門の番になるでしょう。たとえば、地方快速列車(TER)は、すでに「経済地域」の管轄に属しており、フランス国鉄はサービスの提供者にすぎません。したがって、市場開放を迫るEUの圧力による、旅客車部門における民間企業の参入は、このあたりから開始されるでしょう。(イギリスで暴利をむさぼっているコネックス社のように)、すでに参入の準備を進めている企業もあります。

子会社化、権限の地域分割化、インフラ部門と営業部門の分割、業種別の経営。要約すれば、これらの手段が、収益性の高い業種を民営化し、赤字部門の業種を国や自治体に押しつけるために、一貫して利用されている方法なのです。公共の利益を犠牲にして(石油ロビーや自動車産業、建築業界や公共事業産業などの)一部の業界を潤している、このような政策が公共サービスを破壊し、不平等を拡大させているのです。その被害は甚大です。最も貧しい住民の生活は破壊され、人員の大幅削減により雇用環境は悪化し、労働条件の改悪、運転手を含む、鉄道労働者の職業訓練期間の短縮などにより安全性は低下します。また自動車による赤字路線の代替は、排気ガスの増大による自然環境の悪化、さらには将来の石油資源の枯渇がもたらすエネルギー危機の誘引にもなるでしょう。

ヨーロッパでは、もちろんほかにも、イギリスやスペイン、イタリアなどの諸国が、同じ政策による同じ問題に直面しています。鉄道員の国際的な連帯による全ヨーロッパ規模のストも打ちましたが、いまのところ、EUの自由主義路線を変更させるには至っておりません。もっと有効に働きかけるためには、さらに運動を強化し、いくつものハードルを乗り越える必要があるでしょう。さまざまな連携がまだまだ模索されなければなりません。シュッド・ライユは、他の労働組合とともに全ヨーロッパ・レベルの集会に参加しつつ、この道を模索してきました。2005年にはダカールに赴き、西アフリカの鉄道労働者と議論し、将来の展望を語り合いました。そして、今日は日本の皆さんと議論し意見を交わすために、こうしてやって参りました。


Created by staff01 and Staff. Last modified on 2006-04-22 23:55:29 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について