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 JR総連の四茂野といいます。WTO閣僚会議への抗議行動で逮捕・勾留された14人の公訴取り下げを求め、香港民衆同盟(HKPA)が呼びかけた国際ミッションの一員として8日から香港に行っていました。取り急ぎ、11日の法廷の模様をお伝えします。

 11日の16時半頃だったでしょうか、11人の公訴を取り下げる決定が下された瞬間、觀塘裁判所の大法廷に大きな拍手が湧きました。起訴するに足る証拠が無いというのが取り下げの理由です。今回の大量逮捕がいかにでたらめだったかを検察自らが明らかにした瞬間でした。休廷となり廊下に出てきた被告団メンバーを支援者と記者が取り囲みあちこちに輪ができます。日本人のN君は現地の記者の質問に「うれしさも半分です。仲間の三人がまだ残っていますから」と硬い表情で答えていました。

 14時半過ぎからはじまった予審法廷の傍聴席は、赤い鉢巻姿の支援者で立錐の余地なく埋めつくされ、外の廊下にも入れなかった支援者が待機していました。傍聴者の多くは、前日から24時間のハンストで連帯を表明してきた地元の人たちで、なかには女子高校生もいます。日本と違い、傍聴者数に制限がなく、拍手や野次で退廷させらることもありません。「リリース ナウ」「ダウンダウンWTO」のシュプレヒコールがたびたび起きます。

 その中で被告団・弁護士と検察側とのつばぜり合いが続きました。たびたび休廷となり、そのたびに双方で打ち合わせが行われます。11人の公訴取り下げの後は、残る3人の扱いが焦点となりました。当初、無届集会(Unauthorized Assembly)で起訴するなら罪を認めようという考えもあったようですが、検察側が韓国の2人の農民について暴力行為があったとして非合法集会(Illegal assembly)で起訴することを譲らないため、結局裁判で争うことにしました。暴力行為の証拠は面通しした警察官の証言だけというおそまつなもので、実際2人は言われるような行為はしておらず、裁判では間違いなく勝てると判断したようです。2月6日に再度予審尋問を行い、3月1日から本裁判を開始すること、保釈金の支払いを条件に3人の帰国を認めることを確認し、この日の予審は閉廷となりました。なお検察が暴力行為の立証をあきらめた韓国公共連盟ヤン・ギョンギュ委員長(民主労総副委員長)は無届集会で起訴されることになります。

 すでに暗くなった裁判所の外で、支援者と報道陣が待ち構えるなか、手続きを終えた被告団が姿を現すと、歓声と拍手が湧きおこりました。3人が不当に起訴される点では許せない決定ですが、韓国人にとって大事な旧正月を家族とともに故郷で迎えることが確定し、うれしさは隠し切れません。被告団と支援者は、一ヶ月になろうとする長い闘いが、ひとつの節目を迎えたことを喜び合いました。

 私が現地に着いた8日の時点では、11日にどのような決定が出されるか、皆大きな不安を抱いていました。しかし、行動をつみあげるなかで次第に展望が開けてきたことを感じます。多くの人の様々な努力が成果をあげた、最近にない勇気の湧く出来事だったと思います。行動に参加して、今回の成果に結びついた要因をいくつか感じましたので、書き留めておきます。

 第一は、被告団がしっかり団結し、無期限ハンストという困難な闘いをやりとげたことです。農民と労働組合が一体となり、日本人のN君を暖かく包み、香港の人々に感銘を与えた韓国の仲間たちの闘志と思いやりには頭が下がりました。いつの間にか、香港の人たちも韓国の闘争歌を覚え、韓国語のシュプレヒコールをしていました。あわせて、民主労働党国会議員3人、民主労総委員長や全農会長、カトリック農民協会会長を含む派遣団が、各方面への働きかけに奔走したことも印象的でした。

 第二は、国際的な支援の広がりです。ウォルデン・ベロー氏や国際労働組織、国際人権組織の代表などからなる国際ミッションが、現地で立法院議員や公安委員会などへの要請を行い、記者会見で積極的に世論に訴えただけでなく、9日には各国の中国大使館に対して要請・抗議行動が世界中で行われました(10日にはJR総連の代表が東京の中国大使館で公使と会見して釈放を求め、公使は本国政府に意向を伝えることを約束しました)。また10日にはブリュッセルで開かれていたGUF(国際産業別労働組合組織の集合体)の総会で「香港における反WTO抗議者への司法による迫害に関する決議」が採択され、香港政府に公訴の取り下げを求めるとともに、国際ミッションへの連帯を表明しました。

 第三は、世論を動かした香港における運動の展開です。香港民衆同盟(HKPA)を軸に、労組、立法院議員、宗教者、一般市民が一体となって運動を盛り上げました。香港島と九龍を結ぶフェリー乗り場での被告団のハンストを中心に、デモや集会、署名、カンパ、記者会見などが積み上げられ、これらが新聞やテレビで連日報道されるなか、10日には香港市民120人が参加する24時間のハンストが始まり、世論を被告団寄りにつくりかえてきました。HKPA代表のエリザベス・タン(彼女は韓国農民の家族の訴えに涙を流す人情家でした)や立法院議員でもある香港労働総同盟(HKCTU)リー書記長など多くの人々の献身的な活躍が、香港から世界にひろがる運動の盛り上がりを支えたことは言うまでもありません。

 最後にもうひとつ感想です。今回の一連の行動の中では香港警察本部前や香港政府庁舎前での集会もありました。そうしたことが当たり前に認められていて、申し入れ書も代表が出てきて受け取ります。法廷は誰でも自由に傍聴でき、シュプレヒコールをやっても退廷を迫られることもありません。もちろん鉢巻をしたまま傍聴できます。フェリー乗り場や裁判所前にテントを張ってハンストをやることもできます。警察官は肩賞に各自の番号をつけており、違法行為があれば誰がやったかを特定できます。今回の弾圧は許しがたいことですが、それと比べてもはるかに抑圧的な某国の状況について、行動に参加しながら考えざるを得ませんでした。


Created by Staff. Last modified on 2006-01-13 10:33:08 Copyright: Default

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