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トロント・ヨーク地区労働組合評議会における執行委員会声明

(2001年10月4日)

「われわれは今非常に危険な時期にある。世界の危機に直面しているのだ」

 9月11日、世界貿易センター、国防省およびペンシルバニアに飛行機が激突し、6300人以上の市民が犠牲となるという信じられない光景をわれわれは目撃した。罪のない市民に向けられたテロ攻撃に当評議会は言葉を失った。われわれは、他の皆と共にこのような行為に対して断固糾弾する立場を取る。

 われわれは数多くの仲間を9月11日に失った。世界貿易センタービルでは、HERE(国際ホテル・レストラン従業員バーテンダー労働組合)、SEIU(サービス従業員国際組合)、AFSCME(州・郡・市職員同盟)の組合員が数多く犠牲になった。国防省では、組合に加入している民間人の連邦職員が軍人と共に亡くなっている。被害に遭った3機の飛行機では、パイロット・乗務員組合(Pilots and Flight Attendants Associations)のメンバー3名が乗客をかばって死亡した。同様に、数え切れないほどの組合員以外の人びとが、飛行機が世界貿易センターに突っ込むという恐怖から逃れようとしながら命を落としたのである。また、救助作業においては、消防士、救急隊員、警察官、建設職人などの緊急要員が、救出活動のために自らの命を冒し、亡くなっている。

 9月11日以降、世界はいろいろな意味で悪い方向に向かっている。第一に、テロ後、イスラム系および見てわかる少数民族コミュニティーに対する人種差別的攻撃が発生してわれわれに衝撃を与えている。モスク、シーク教寺院、ヒンズー教寺院は放火や破壊の被害に遭い、カナダ全土で職場や学校における人種差別的な攻撃が発生しているとの報告が出されている。

 イスラム系コミュニティーの居住地となっているトロント市内のフレミンドン・パークでは、ドンミルズのバスに乗ることは恐怖であると住民の間で感じられている。多様性や人種差別反対の指導を受けているにも関わらず、少数民族メンバーが人種差別的嫌がらせや誹謗の対象になっているという懸念すべき報告が加盟ローカル労組内から出されている状況だ。こうしたメンバーは、テロリストの疑惑をかけられて仲間から村八分扱いをされていることさえあるのだ。このようなことは決して容認されるべきことではない。われわれは絶えず注意してこうした傾向に立ち向かう必要がある。組合メンバーは、人種差別に「NO」を示すリーダーでなければならないのだ。

 第二に、ブッシュ政権に火をつけられたことで、世界大戦の脅威はもはや現実のものとなった。米国政府はこの数週間でテロ行為に対する国際対応を固めてきている。ブッシュ大統領は、国際的な対応と「聖戦」を比較しているが、非常に危うい一発触発の状況を救うことにはなっていない。ブッシュ大統領はさらに、ブッシュ政権は、米国と「共に行動」しない国を好ましく見ない旨のスピーチを議会で行った。元人質であるテリー・ウエイト氏は、今回の米国の対応について、世界を「二極化するもの」としている。この危機的な状態がエスカレートして細菌・化学戦争に発展するのではないかという大変な危惧をわれわれ皆が抱いているのである。

 今こそわれわれは9月11日に行われた残忍な行為の原因について立ち止まって考えるべきである。原因は複雑である。ここまで怒りと不満が中東で募ることとなった元々の火種は、アラブ世界で植民地政策が終焉を迎えた時代まで遡ることができる。悪化の一途をたどるイスラエルとパレスチナの状況も、今回の事件の要因となっている。さらに、米国の外交政策は、世界の他の地域と同様に中東においても消えない「遺産」を残してきたという事実がある。代議員たちは、米国軍と擁護された領土権侵害が原因で、世界中でどれ程の民間人の命が失われてきたかということを思い出すべきだ。ベトナムとカンボジアだけでも400万人である。そして今中東において、米国の外交政策が原因で罪のない何千人もの人びとが命を落とすのをわれわれは目の当たりにしている。

 過去には、現在テロ活動の最前線にいる人間の多くに米国が軍事訓練を行う契機となったのは東西の冷戦であった。CIAは、当時のソビエトと戦うため、中東の民族主義者、原理主義者、右翼のリーダー達に対する支援として何百万ドルも投入したのである。また、パレスチナの人びとの権利を理解し認識することを米国が怠ってきたことで、アラブ世界に米国はダブルスタンダードを持ち込んでいるという見解が長期に渡り植え付けることとなった。労働団体はこの危機に際してどう反応しているのだろうか。

 カナダは、テロとの戦いにおいて冷静で論理的な意見を表明する国であるべきだ。カナダにおける労働団体は、米国外交政策から独立した強い立場を取り続けるよう先頭に立ってクレティエン政権に対して要請していかなければならない。新民主党のアレクサ・マッドナフ氏は、平和を求めて下院で闘ってきた。9月11日以降発生している危機的状況に対する対処法として、他の解決策を探し出す責任がわれわれにはある。軍事行動による対応では、暴力と闘争の悪循環を世界規模で加速させることになる。同様に、軍事行動は、あまりにも多くの社会的・経済的不公正の原因となっている経済的統合という世界的な企業による計画を推進させる機会を提供することになるのである。

 代議員は、世界的不況が9月11日のテロ発生よりも6ヶ月以上前から始まっていたことを十分認識している。この状況を、世界中の労働者の権利をさらに侵害する言い訳として企業が利用するようなことを許してはならない。さらに、われわれは犠牲者たちを無視することはできないのである。われわれは全員、尊い命が奪われたことについて悲嘆に暮れている。愛する家族を失った遺族の方々を思うと胸が張り裂ける思いである。今回の事件発生後の心理的、経済的余波の対応に各コミュニティーが苦しんでいることはわかっている。仕事を失い、医療保険までも失った多くの家族が受ける経済的損失は計り知れない。ニューヨークタイムズ紙によれば、世界貿易センターおよび周辺のビルの倒壊で、ホテルの部屋やオフィスの清掃に従事していた人びと3500人以上が職を失った。

 当評議会は、資金その他の面からあらゆる手段でこうした人びとを援助していくべきである。救助作業に携わった消防員、カナダ公務員労働組合(CUPE、Canadian Union of Public Employees)、オンタリオ公務員労働組合(OPSEU、Ontario Public Service Employees' Union)、建設職種組合(the Construction Trade)の活動をわれわれは大変誇りに思う。今後はさらに一層の努力が必要となるだろう。

 タリバンを恐れ、世界大戦の脅威からアフガニスタンを逃れている数多くの難民を支援する方策を見出す必要がある。

 最後に、自分達の民主的権利を大切にしなければならない。われわれの意見を集約して訴える権利を、徐々に強まる軍国主義によって潰されるようなことは許されないのである。平和的な反対運動やピケットラインを阻止する機会として政府と警察がこの状況を利用するようなことがあってはならない。さらに、われわれが自由に動いてコミュニケーションする権利を国が妨害するようなことは一切許されるものではない。検閲は、いかなるものであれ反対するべきだ。「ハーパース・マガジン」の編集者であるジョン・マッカーサーは、米国の中東外交について批判したため、米国で主要メディアにアクセスすることを拒否されている。9月11日以来、カナダのマッケンジー・インスティテュート(Mackenzie Institute)のような団体は、反対意見を弾圧し抑圧するためにCSIS(戦略・国際問題研究所)への資金援助を増やす必要性を検討している。これに対してわれわれは全員で強く反発していかなければならないのである。不法移民防止用に新しい警察力を組織するというハリス政権の提案にも反対すべきだ。この計画は、移民に対する反発と人種差別的な態度を増大させるだけのものでしかない。そうした人種差別的対策は、数多くの移民コミュニティー、特にアラブ系やイスラム系のコミュニティーを恐怖に陥れてしまう。人権に対して与えられる制限は、労働運動と社会的公正に対する直接的な攻撃なのだ。

 われわれは、今回のような困難な時期を過去に乗り越えてきた。社会的・経済的公正を伴う世界平和という目標を見失ってはならない。

 以上より、当労働委員会は以下の決議を行う。

1) 徐々に強まる戦争の機運に抵抗するべく協力して対処するよう、カナダ労働者組合評議会(CLC、Canadian Labour Congress)およびオンタリオ労働組合連盟(OFL、Ontario Federation of Labour)に呼びかける。

2) 戦争の脅威に反対すべく団結し、世界平和を推進し、一切の人種差別に反対し、カナダ人一人一人の人権を擁護すべく、地区傘下組織(MNSJ)やトロント軍縮ネットワーク(Toronto Disarmament Network)、カナダ平和同盟(Canadian Peace Alliance)といった幅広い組織や平和団体と協力する。

3) 特に加盟組織と協力を深め、いかなる人種差別的攻撃に対しても明確に反対を表明し、人種差別に対して「NO」の態度を示すよう組合メンバーに一層の指導を行う。

4) 家族・個人に対する経済的支援の一助となるよう、ニューヨークのAFL-CIO(米労働総同盟産業別組合会議)に資金援助を行い、各地の組合から資金を送るようさらに呼びかける。

5) アフガニスタンからパキスタンに避難している難民を支援している救助機関に資金援助を行う。

6) 企業のグローバル化に反対して集結すべく、11月9日の「労働組合世界行動の日(Global Unions Day of Action)」を支援する。

7) 不法移民防止用警察力組織というハリス政権の提案に反対・阻止の目的で、コミュニティーや人権擁護団体らと積極的に協力する。

8) 11月のオンタリオ労働組合連盟の大会(OFL Convention)で以下の決議を表明する。

 opeiu 343  11月のオンタリオ労働組合連盟の大会(OFL Convention)に提出する決議(案)

 以下を決議する。

1. オンタリオ労働組合連盟(OFL)は、平和運動に参加する加盟組織およびコミュニティーと協力し、徐々に強まる世界的な戦争の流れに対抗すべく団結する。

2. カナダが独自の外交政策を維持するだけでなく米国の外交政策に明確に反対し、大量破壊兵器の開発の停止を求めていくよう、オンタリオの連邦議会自由党(Liberal)代議士を対象とするロビー活動をオンタリオ労働連合会議(OFL)は調整する。

3. オンタリオ労働組合連盟(OFL)は、加盟組織および当組合コミュニティーと協力し、いかなる人種差別についても明白に反対を表明し、人種差別に対して「NO」の態度を示すようメンバーに一層の指導を行う。

4. オンタリオ労働組合連盟(OFL)は、家族や個人に経済的支援を行うべくニューヨークのAFL-CIO(米労働総同盟産業別組合会議)に対してさらなる資金援助を行い、特に絶望的な状態にあるアフガニスタン難民への支援をさらに強めていく。

(翻訳 国際部 渡辺治子)


Created byStaff. Created on 2001-10-27 17:58:36 / Last modified on 2005-09-05 02:58:29 Copyright: Default

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