本文の先頭へ
LNJ Logo 労働運動関係の話/世界社会フォーラム報告その3
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 20040201m
Status: published
View

会員関連サイト

more...

安田です。

 レイバーネットの旗を立てて参加したからには、労働運動関連もいろいろ見 てきました。今回は労働運動関連の話を書きます。

 会場で目だったのは、インドの労組のデモでした。  連日、鳴り物入りで「ZindaBad! ZindaBad!」と叫びながらデモをやってま した。「じんだーばぁ、じんだーばぁ」と聞こえます。  その辺にいたインド人に意味を聞いたら「we will win or we won...」とか 長々と説明してくれましたが、帰って辞書を引いたら「バンザイ」という意味 だそうです。確かに日本語でも「バンザイ」って、英語で説明するとめんどく さい。この変形なのか、「MundaBad!」というのもありました。「WSF ZindaBad! Bush MundaBad!」とかやります。意味は聞きませんでしたが、聞かなくても明 らかにZindaBadの反対だってことはわかります。  ちなみに、彼らは各地からの動員らしく、「何だかお金もらえて飯も食えるっ てーから来たさ」みたいな感じです。あまり英語も話さず、外国人がうろうろ している会場の一角でかたまってたのがちょっと寂しい。労働者の連帯ったっ て、寒い日本でキーボードを叩いて日銭を稼いでいるぼくと、暑いインドでほ こりまみれになって肉体労働で日銭を稼いでいる彼らと。地べたに座り込んで カレーを手で食べている彼らと欧米からの参加者の間には、何となく、見えな い壁のようなものがありました。  ちなみに会場には、もちろんインド人は多くて、おおざっぱな印象では七割 ぐらいがインド人。しかし、セッションの会場内と外では、比率が逆転します。 セッション会場の中は、あまり動員組は入ってこず、労組の幹部みたいな人を はじめ、インド人が四に対して、外国人が六ぐらいか、それよりインド人が少 ない感じです。まあ、これはセッションによっても違いますし、インド人で埋っ てるところもあれば、白人ばっかりのところもあったので、何とも言えません。

 で、労働関連のセッションでは、大きめのWSF主催のやつを中心にいくつか 聞いてみたのですが、これは選択を間違ったなあ、という感じでした。大きな 会場で「新自由主義に対抗する労働運動」みたいなセッションは、いろいろ偉 そうな人が出てきて「こんなに労働者は悲惨な状況に追いやられている…だか ら全世界の労働者は団結しよう」みたいな発言をするわけですが、なんとなく 「ま、そりゃそうだ」という感じでありました。  むしろ、個別の民営化の問題だとか、児童労働だとか、非公式部門の労働だ とか、そういうあたりの具体的なテーマを選んで聞けばよかったのですが、時 間の関係であまり出られませんでした。ちょっと残念ではあります。  ところでインドの労組のマークには、鎌とハンマーを図案化したものが、な んとなく昔なつかしい雰囲気をかもしだしています。「もうひとつの世界は可 能だ!」を合言葉にするWSFですが、ここに「もうひとつの世界は社会主義だ!」 と続けるグループが少なくありません。インドはしばらく前、社会主義的な政 策を取っていた(今でも結構社会主義的と言えるかもしれない)からか、労組 にも親社会主義的な傾向は強いようです。とゆーか、労組ってそういうもんか な。日本にいると、あまり労組は社会主義を擁護する発言をしないし、ぼくも 個人的には旧ソ連型の社会主義ってのは、なんだかなー、と思っていたりする 軟派だったりするものでして…。  また、極左系のグループは、ムンバイ・レジスタンスという、WSFとは別の イベントを開催していたようです。このへん、よく事情がわかりません。要す るに欧米のファンドなどによって運営され、欧米のNGOや団体などによって主 催されるフォーラムの多いWSFは、結局、欧米の資本主義の影響から自由では ない、というような主張らしく(他にもあるみたいですが)、それは確かにもっ ともではあります。ただ、わざわざ割るようなことをしなくても、というよう な気もしますが、WSFは政党が参加する場ではないということから、左翼系の 政党が別途、イベントを開催したのかもしれません。  両者の間で議論があったとも聞きますが、それなりの理由もいきさつもある のでしょうから、まあ、「大きな運動を組織していくのって、いろいろ難しい んだよね」と考えておくことにします。

 さて新自由主義的なグローバリゼーションに対抗するというWSF、労働運動 関連のテーマとしても、やはり世界化の負の側面に焦点をあてたものがたくさ んありました。  雇用という点では、従来の安定的な雇用がどんどん削減され、不安定な非正 規雇用が増えていること、従来の労働運動があまり組織してこなかった非正規 労働者や非公式な分野で働く労働者が、WSFでは「主役」でした。たとえば日 本で言えば、フリーターだとか、不法在留外国人労働者だとか、先日話題になっ た持ち込みトラックの運転手だとかといったような労働が広がり、そして彼ら の権利がほとんど守られていない、といったような状況があるわけですが、こ うした傾向が世界的に広がっています。むしろ、日本はまだマシかもしれない。  日経連とかに言わせりゃ、これから日本は「世界化」の波に積極的に乗って いこうということのようですが、日本の労働者はその世界化の波に飲み込まれ ていくでしょう。  さらに、労働運動の視野を農民運動や民衆運動、そしてその他のさまざまな 運動と連結させていかなければならないというような話もありました。たとえ ば日本の農民は今後、FTAで農業を放棄して都市に流入してくるでしょう。農 業にかじりつく農民は、「大規模で効率的な」農業を行う農業企業に土地を売 り渡し、そこで「土地無し農民」化するでしょう。利益のために環境を破壊す る企業、企業利益のために公共性を踏みにじる企業、そんな企業の活動に対し て、一握りの正規職で組織された既存の労働組合には限界があります。  「じゃ、どうする」という具体的な話までは、残念ながら聞けませんでした。 既存の労働組合は、そのような「波」を認識して対応していくことになるので しょうし、労働組合がすくいきれない部分は、労働団体や市民団体、NGO、NPO などがカバーしていくことになるのでしょう。いずれにしても、労働運動も世 界化の大きなうねりの中で、大きく変わっていかざるを得ないのだと思います。

 ところで、話は前後しますが、この辺の人はあまり書きそうもないグループ について。会場で目だっていたもうひとつの一群、JR総連の組合員たちが数百 人規模でしょうか、足軽に扮して会場を練り歩いておりました。何度かデモも やっていたようで、労働組合が企画したデモには、連合の旗の後ろにJR 総連 の旗、そして数百人の足軽たち…。かなりの存在感がありました。  ある大きなフォーラムの会場で、隣に座っていたインドの労働組合の幹部と いう人と話をしたのですが、彼は「韓国と日本の労働運動は、たいへんすばら しい。わたしたちは日本の労働運動に学びたい」と言ってました。  ちなみにJR総連は、多国籍資本に対抗する、みたいなワークショップをやっ ていて、「コカ・コーラは住民の飲み水を奪ってコーラを売り付ける。水はな いのにコーラだけがある」みたいなことをやってるグループだとか、韓国の公 共労組だとか、いくつかのグループと一緒になかなか立派なワークショップを やってました。内容は面白そうだったのですが、他に聞きたいセッションがあっ たのでちょっと覗いただけ。  連合も数人の人が来ていて、労働者の権利みたいなワークショップをやって ました。  基本的に、日本からのグループが主催しているセッションはあまり聞きにい きませんでした。日本のグループの話は日本でも聞けるから、ここでは日本で は聞けない話を、と思っていたのですが、後になってちょっと失敗だったかな とも思います。日本での話を海外の参加者が聞くと、どんな発言が出てくるの か、やはり参加すべきだったかも、と思ってます。もっとも、どんな反応だっ たのかについても日本に帰ってから本人たちから聞けるわけですから、それで よかったのかもしれません。

*レイバーネット日本・メーリングリストより


Created byStaff. Created on 2004-02-01 00:27:36 / Last modified on 2005-09-05 02:59:35 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について