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JR福知山線脱線・転覆事故に関する 国労西日本本部の当面の対策要求

2005年5月

国鉄労働組合西日本本部

JR福知山線脱線・転覆事故に関する国労西日本本部の当面の対策要求について

2005年5月9日

国鉄労働組合西日本本部

4月25日、福知山線、尼崎・塚口駅間において、「あってはならない痛ましい事故」が起きました。この事故で107名の尊い人命が奪われ460名が負傷者されました。国労として、JRに働く労働者で結成している労働組合として、亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに負傷された方々の1日も早い回復を願っています。

今回の事故について様々な角度から報道等がなされていますが、最終的には国土交通省及び航空・鉄道事故調査委員会、警察当局の捜査等によって直接的な原因の究明がなされると思います。

今回の事故発生後の不手際な会社の対応、JR内で発覚した極めて残念な諸行動、そして一部組合による無責任な批判の繰り返し、このような状況を見たときに公共交通機関で働く労働者で組織する労働組合として、このような重大な事故は二度と起こしてはならない、その決意のもと、当面以下の対策を講ずるよう会社、政府・国土交通省等に対して改善するよう求め運動を展開していきたいと考えています。

I.今回の事故の背後要因について

事故の直接的原因は今後、航空・鉄道事故調査委員会及び警察当局等で究明されますが、今回の事故の背後要因として以下のことが考えられます。

(1)企業としての責任問題

(2)政府及び国土交通省の責任問題

(3)チェック体制の問題

以下、細部について述べます。

II.JR西日本の企業としての責任問題

JR西日本会社は、鉄道会社として利用者・国民の命と財産を安全に運ぶことが使命でありながら会社発足後、信楽高原鉄道事故、塚本〜尼崎間人身事故、そして今回の事故と重大事故を何回も繰り返し、その教訓が生かされてこなかった点に、企業としての極めて重大な責任があります。よって問題点と国労としての改善すべき考え方を述べます。

「具体的な問題点及び改善に向けての考え方について」

1.安全に対する基本理念について

国鉄時代の「安全綱領」(職員管理規程、安全確保に関する規程)は「安全は、輸送業務の最大の使命である。」から始まり当時の国鉄と職員が一体となって安全のために何をなすべきか明確に位置付けていました。しかし、JR発足後「安全行動指針」となり企業の責任の果たす役割より社員に求めた行動内容に変更となり、私たちも批判を繰り返してきました。近年の事故の発生状況から本年4月より「安全憲章」に変更し、国鉄時代の「安全綱領」に近い内容にした矢先の事故であり、そういう意味では、この理念が定着していない事が多くの事象からいえます。よって、この理念を会社トップから全社員及び関連会社社員まで安全思想として定着させる教育が必要であります。

(2)今回の事故車両に2名の社員が乗車し、事故後、人命救助をせずに勤務つきました。また、連絡を受けた係長が職場に来るよう命じたことが発覚しました。極めて残念でなりません。いかにJRになってこの間の労務管理、企業体質がこのような情けない状況を作ってしまったのか、労働組合としても反省せざるをえません。このような状況を見たときに、国鉄時代の規程を参考にし、その位置付けを明確にした規程類の改正と緊急に全社員に対する教育を施していく必要性があります。

2.企業体質の改善について

(1)営利優先からの脱却について

今回の事故で、ATS−P形の投資額の推移等からJR西日本の営利優先の経営体質が問題となっています。JR西日本は、他の本州各社と比べて経営基盤が貧弱とはいえ、安全優先の設備投資を行なっていく必要性があります。そのために長期債務の返済計画の見直し、新規事業に対する投資の見直しなども含め改善していくよう求めていきます。

(2)「命令と服従」の体質からの脱却について

国鉄の分割・民営化によって、私たち国鉄労働組合は多くの不当差別等を受けてきました。現在、JR西日本に関係する紛争は、一部を除いて和解しています。しかし、この労務政策によって職場に「命令と服従」の体質が定着しています。おかしいことはおかしい、悪いことは悪いといえる職場環境にするために、この体質を改善する必要があり、そのためには人権無視、不当な命令などに対して明確に対処する体制が求められています。国鉄時代の規程では、上司の不当な命令について懲戒の対象としていました。JR西日本の規程上も明確にする必要があります。

(3)事実隠蔽体質の改善

JR内のこれまでの事故から事実隠蔽の体質があります。各支社、各主幹部毎にこの体質があります。そのために事実発覚後の対応のまずさが生じています。このような体質を根本的に改善する必要があります。

3.ダイヤ問題、回復運転について

(1)ダイヤについて

過密ダイヤの問題について検討を行なっていきます。今後のダイヤ改正等を考えて余裕時間の設定を求めていく。同時に車種の性能と運転時分について見直しを求めていきます。

(2)回復運転について

列車が遅れた場合に、指令員が「回復運転に努めてください」との連絡を行なっているが、運転士にプレッシャーをかけるこのような行為の中止を求めていきます。また、回復運転に関する規程等については「安全と認められる速度の範囲内で回復運転することができる。」に改正することを求めていきます。

4.事故防止のためのダブルチェック体制の確立について

(1)近年、JR西日本の事故で、重大事故に至る直前で防いだ事故がいくつかあります。今回の事故を見るとき、ダブルチェックの不足が目に付きます。その原因として、機械化に頼りすぎる面が多くあります。そのためにソフト・ハードの二重の保安対策及び必要な要員の確保を求めていきます。

(2)乗務員が危険、異常、疑念を感じた時は、躊躇なく列車を停止させる手配を行なうこと。また、運転再開にあたって、100%安全を確保した後、行うことを求めていきます。

5.再教育等について

今回の事故についてマスコミ等でミス・事故を起こした場合の社員教育及びプレッシャーについて報じられています。このことは、背後要因の一つであり、国労は事故等を起こした場合の再教育について、以下の考え方で対処することを求めていきます。

(1)基本的考え方について

マスコミ等で報じられている事故を起こした場合の、いわゆる「日勤教育」について国労は否定をしません。その理由は、私たちは公共交通機関で働く労働者であり、私たちの仕事は国民・利用者の命と財産を安全に運ぶことである以上、ミス・事故を起こした事実に基づき再発防止のために教育を行う必要があるからです。一部で起きている事象が全てと報じられるとするなら大きな過ちを犯してしまいます。不幸にして事故を起こした場合の乗務員の再教育について、これまでも会社と何度となく交渉を繰り返し改善を行なってきました。しかし、現在でも、一部現場でイジメ等があることは事実であり、国労は以下のことを求めていきます。

(2)国労として改善を求める内容

事故後の再教育について、JR西日本には複数の労働組合があり、考え方の違いがあります。よって、国労は、この問題を整理するために以下のことを求めていきます。

  1. 労使による専門委員会を設置し教育内容等の基準を作成すること。
  2. 再教育を行うにあたっての基本的スタンス

A 「責任追及」型を絶滅し「原因究明」に力点をおくこと。

B 事情聴取については、事故に至った顛末のみとすること。

C 教育は再発防止のための運転技能に関する教育のみとすること。

D 教育期間は最短とすること。

事故が不幸にして起きた場合の再発防止に関する権限は現場長であるために様々な問題がバラバラに生じてしまう。よって以上のスタンスにたって、再発防止のための教育を行うこと、そのために再発防止教育要領等を作成し、基準と考え方を明確にすること、国労はこれまでの努力で一定の規制を行ってきましたが、このことによって、現場長対応に対する規制が出来ます。また、ミス・事故をおこした社員が、納得性をもって受け入れられることとなります。

(3)「いじめ」の根絶について

「いじめ」は如何なる理由があろうとも行ってはなりません、国労は「イジメのない明るい職場作り」を目指して交渉を強化してきました。イジメの根絶を目指して引き続き闘っていきます。そのために命令と服従の是正はもちろん、1イジメは行なってはならない。このことをしっかり社員に教育すること。2イジメがあった場合、社内で「パワーハラスメント対策委員会(仮称)」など労使で救済・再発防止対策を講ずることを求めていきます。このことの改善がないと事実は事実として言える、悪いことは悪いといえる、風通しの良い職場風土を作りが出来ないことは明らかです。

6乗務員の養成について

乗務員の養成期間について、様々な意見が出されています。養成のための教育期間、教育内容、乗務員の選任等について検討をして行きます。

7指令員等について

近年、指令に係わる事故が多発していますが、この背景には、社員としての職務経験年数、熟練度等の問題があります。よって、養成期間の見直しや担当線区の特情を熟知した者の配置を求めていきます。

8危機管理体制について

今回の事故で、あらためて、JR西日本の危機管理体制が問われています。よって、全ての事象の把握後見直し、再編を行う必要がある。

9ニューマンエラー防止について

ヒューマンエラー防止のために職場環境・労働環境等を見直す必要があります。特に、運転士にプレッシャーをかけている裏面添乗の中止を求めていきます。

10契約社員化の見直しについて

現在計画している、車掌の契約社員化について再考を求めます。

11緊急に求める設備改善について

今回の事故で考えられることは、たとえ一人の労働者によるミスであっても、そのミスが原因で重大事故に至ってはなりません。人間はミスをするから莫大な金を投資して保安装置を設置します。この基本的考え方をもとに、保安装置を含めて二重の措置を講ずる必要が急速に求められています。よって国労として以下のことを求めていきます。

(1)ATS―P形の設置について

今回、事故のあった福知山線にはATS―P形は設置されていませんでした。ATS―P形とは列車の速度を常にチェックし、スピードオーバーしてもブレーキをかける装置で、今回の事故等を防ぐことができます。現在、福知山線の運転再開の条件として工事が進められていますが、他の線区でも導入を求めていきます。

(2)脱線防止ガードレールの設置について

今回の事故の原因は、せり上がり脱線でない可能性がありますが、例えせり上がりが生じたとしても車輪をレールから外に脱線させないために脱線防止ガードの設置を求めていきます。地下鉄日比谷線脱線事故で、せり上がりの原理が究明されて国土交通省の指導等がありますが、義務化まで至っていません。JR西日本では、曲線半径250m未満の箇所は整備されていますが、曲線半径250m以上の曲線に対して設置を求めていきます。当面の措置として、曲線半径300m以下で今回のように住宅密集地並びに住宅接近地等の二次災害が生ずるおそれのある箇所を重点的に設置することを求めていきます。

(3)車両の車体フレームの強度化について

1991年5月14日発生した信楽高原鉄道のSKR200形車両(27.5t)今回事故の207系車両(26t)いずれもステンレス製軽量車両であり安価でスピードアップを目的として製造されたものです。列車が脱線・転覆することを予定して製造されていないために、今回のように痛ましい事故となっています。前項で要求する保安設備等があるが、踏切事故等、様々なことを想定し車体フレームの強度を強化し、不幸にして事故が生じても、お客様の安全を確保するために改良を求めていきます。

III.国及び国土交通省の責任問題について

(1)規制緩和の問題点について

最近、交通機関に関する事故が多発しています。その背景には、政府の行政改革委員会答申に基づく「規制緩和」があるといえます。JR西日本でも、この規制緩和の関係で、保守検査周期の延伸などが行なわれてきました。鉄道に関する問題でいえば「性能規定化の体系」と称して 1.鉄道事業者の技術的自由度を高め、また、新技術の導入や線区の個別事情への柔軟な対応を可能にする。2.鉄道事業者は省令などに適合する範囲内で、解釈基準、あるいは解説などを参考にしながら、個別の実情を反映した詳細な「実施基準」を策定し、これに基づき施設、車両の設計、運転取扱いなどを行う。として省令を改正し、実質的に企業任せの状況を作っています。これでは安全は確保できないこととなってしまいます。

(2)安全の基準は国の命令で

以上のように、車両の設計も会社独自で行うこととなります。また、近年の事故を見るとき、京福電鉄正面衝突事故、土佐くろしお鉄道の事故など、これらはいずれもATSの不設置から生じています。問題は安全を確保するための基準は政府・国土交通省が定め、命令によって絶対条件を課せる仕組みを作ることです。この命令で、経営困難な企業については政府が補助を行なってでも実施する体制を作ることであり、このことを政府に求めていきます。

IV.チェック体制の問題について

JRの最大の使命は安全確保である。しかし、今回のような重大事故を起こしてしまいました。労働組合としても、企業の社会的責任を果たすよう厳しくチェックを行なっていればと反省しています。よって、以下のチェック体制の強化を求めていきます。

(1)事故の再発防止対策は労使協議で

事故防止対策のために、具体的対策について労働組合の協力が必要であります。現在、全組合参加の「労使安全会議」は本社に設置されていますが今後、具体的事故対策等については本社・支社で労使協議によってより具体化していくよう求めます。

(2)社外の専門家を入れた「JR西日本安全対策委員会(仮称)」を設置し、JR内の事故内容、対策等に対する検証及び提言をいただくことを求めていきます。

(3)安全衛生委員会の委員について各組合の代表参加を求めていきます。

V.決意として

国労は、これまでも安全輸送確保のために様々な運動を展開してきました。今回の事故によって亡くなられた方々、負傷された方々の悲痛な気持ちを考えた時「安全の国労」という方針のもと、より一層気を引き締めて、JR西日本が本当の意味で「生まれ変わる」よう、労働組合としてチェック機能を行い、襟を正すよう闘いを取り組んで行きます。

以上

原文(PDF)


Created bystaff0 and Staff. Created on 2005-05-13 01:33:46 / Last modified on 2005-09-05 03:16:59 Copyright: Default

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