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名古屋コラム

郵政首切り20年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 パソコン超初心者の楽しみ方

 

[1] 「私のインターネット体験」という題の原稿依頼が、「レイバーネット」からきた。ただちに「インターネット勉強中で忙しいので断固拒否」と返答しようとしたが、よく見ると依頼主は松原明ティーチャー。わざわざ郵政共同センター(4・28ネット、郵政全労協、伝送便などの共同事務所)まで、インターネットを教えに押掛けてきた、イヤ、オミ足をお運びいただいた、とても有り難いティーチャーなのだ。なるほど、ボクなんかにはとうてい真似できないあの親切は、こういう時に「断固拒否」とは非常に言いづらい関係性づくりも兼ねていたわけなのだ!

 この「ビデオプレス」の人たち、4・28闘争のビデオも作ってくれたしなあ・・・。免職者なんていうのは、だいたい、周りの皆に何らかの支援を受けて生き長らえられている訳で、「断固拒否」などとは、どなた様にもなかなか言えない、弱い弱い立場にある可哀相な人なのだ。

 それで依頼通り「超初心者の苦労話」など千字程で仕方なく書いたのだが、書いてみれば、書き足りない事がゴチャマンと湧き出てくるのだった!

 

[2] そもそもが、インターネットを始めた動機が不純だった。より良い通信手段を得たいとか友達の輪を広げたいとか、そういう本来の筋からは外れたもので、チットはパソコンに触れるようになっていないと世の中の動きからとり残されてしまうという恐怖感からだった。それでもボクの場合、5〜6年も前から「やらねば、やらねば」とずっと思い続けていたにもかかわらず、何年間もこの恐怖感に打ち勝ち続けて、ずっとインターネットとは無縁だった。

 実際にパソコンの前に座るようになるためには、もう一つの不純な動機がプラスされる必要があった。実際に、明日、皆で船出しようというのに、天気予報も敵戦艦の配置も何も知らなければ乗船資格が無いという、土壇場に追い込まれる必要があった。

 「がんばれ国労闘争団」(http://www1.jca.apc.org/ouen/)というホームページに、お節介な「ナントカプレス」の人たちが協力していて、これを見ておかないと、風雲急を告げた国鉄闘争連帯に支障をきたすのだった。以前ならチラシ類に目を通しておけば、何とか情報音痴にならずにすんだものを、全くお節介な人たちだ。昨年5月30日の国労本部による「JRに法的責任はない」承諾以降、「4党合意N0!働く者の人権は譲らない行動ネットワーク」などが船出したが、この「行動ネット」は物凄い人手不足で、一人一人が勝手に天気予報や敵戦艦の動き等の情報をリアルタイムで得ていないと、風雲急に着いていけなくなっていた。

 ついでにいうと、「がんばれ国労闘争団」は、必見になってしまったにもかかわらず、36闘争団のなかで見ている団はすごく少ないという話だ。これを見てれば、本部の嘘などすぐ見破れたのに、とても残念だ。残念だ。残念だ。ボクがホームページを見るためにどんなに苦労したか、この苦労が共有されてなくて、とても残念だ。

 

[3] ホームページを見るためには、まず、パソコンを立上げなければならない。「何だ、こりゃあ!」である。ワープロならば立上げのスイッチは一つだが、パソコンにはそれらしきスイッチが三つも四つもある。ずっと昔にワープロ代わりにちょっとだけパソコンをいじったことがあるが、その時は確か、こんなにいっぱいスイッチはなかったはずだ。「人に断りもなくスイッチを増やすとは何たることか!」である。

 ここで仕方なく、マニュアル本を開いてみる、というほどボクは暇ではない。パソコンは郵政共同センターに一台あり、誰か立上げ方を知っている仲間が来るのを、じっと待ったのだった。じっと待つぐらいには、暇なのだった。この超初心者の時期、「目」学問よりも「耳」学問の方がはるかに有効だと、ボクは確信する(もっとも、もっぱら「耳」学問のみで「目」学問の経験はゼロなので、両方を比較して確信したわけではないが)。

 この時期の最大のアドバイスは「スイッチやキーや、いくら間違えたって、パソコンはそうそう壊れやしないさ」という、お気楽な仲間のお気楽な言葉だった。これはもう、金縛りにあっていた体が一気に全面解放されたようなもので、恐る恐る動かしていた指先が大胆に力強く荒っぽくなる。「でも、もしもパソコンが壊れてしまったら・・・そう!それはボクの責任ではない!あのお気楽なアドバイスをしたあのお気楽な奴の責任だ!」てなわけで、以降、どんどん、お気楽に失敗を繰り返したのだった。

 こうして、ホームページを初めて見れたときの感動! だが、わずか1年ほど前なのに、もう既にこの感動が薄れてしまっている。これはもったいない。この世知辛い世の中、そうそう感動できることが転がっている訳もなく、あの感動をいつまでもいつまでも大切にしようと決意する、ボクなのであった。

 

[4] 昨年11月、新たな「災難」が降りかかってきた。毎月、投稿文を郵九労と郵近労豊中の機関紙に掲載してもらっているが、それまでFAXと郵便で送っていた原稿をEメール送信にしてほしいとの要望が、郵九労から寄せられた。八王子の自宅で打ったワープロ原稿をフロッピーに登録し、2時間近くかけて千代田区の郵政共同センターへ運んで、パソコンに読込ませてから、Eメール送信をする。なんとなく、本来のEメールのメリットを台無しにしているような不合理さが付きまとう。とはいえこの機を逃したら、またいつまでもEメールと縁遠い生活になるだろうとの恐怖心が、ボクを突き動かした。

 締切り当日やっと原稿を仕上げ、夜遅く自宅を出る。ところが、パソコンがフロッピーを読込んでくれない。パソコンが悪いのか、フロッピーが悪いのか、ボクが悪いのか・・・判らない。真夜中、30分かけて「労働情報」の事務所へ歩いて行き、何台もあるパソコンを勝手に使わせてもらうが、一台も読み込んではくれない。これで、パソコン犯人説は打ち消され、フロッピーかボクかのどちらかが悪いのだと判明するが、それが一体何になろう。「このままでは締切に間に合わない!」との危機感が襲う・・・そして実際、間に合わなかった(後に、2HDは駄目で2DDフロッピーなら読込むことが解った。しかし事はそう単純でもなく、ワープロとパソコンそれぞれの会社・機種・年代等々で色々と「相性」があるらしく、これについては、「労働情報」の浜さんというプロが熱心に説明してくれたが、聞くそばから忘れた)。

 メール送信にも苦労した。まずAさんからやり方を教えてもらう。次の日、教えてもらった通りにやっているはずなのに、意地悪なパソコンがストライキなどするので居合わせたBさんに質問すると、全く違ったやり方を教えてくれる。A方式をマスターしてからB方式を教わるなら、それは進化・向上となるのだが、この場合、A方式とB方式とが頭の中で乱闘を開始し、ボクの脳ミソの容量をオーバーする。それでさらに次の日、居合わせたCさんに尋ねると、また全く違ったC方式を教えてくれるのだった。この時点で、ボクが「キレ」なかったのは、称賛に値するのではないだろうか?!

 そもそも、メールには何通りもやり方があるものなのだとの基礎知識というのか、パソコンという生き物に接する際の心構えというのか、丁度、犬猫に接するときや草花を育てるときの基本的な対応の仕方みたいのを、最初にお教え頂いておく方がベターだと思われるのだ。

 

[5] ホームページ、メール送信と、何とかヨタヨタと歩んできたボクを襲った第3の「不幸」は、レイバーネットだった。今年になって、誰かさんが押掛けてきた、イヤ、オミ足をお運び頂いたことは冒頭に述べたとおりだ。

 この時たくさんの事を教わり、それをたくさんメモ書きしたのだが、教訓として言えることは、それらはすぐ、自分で実際に、アアダ・コウダと試してみなければ駄目ということだ。一週間たって、メモ書きを見ながらやろうとしてもチンプンカンプン・・・ティーチャー、御免なさい。   

 こうして自立せぬまま、「エッセイ欄(前述のメール投稿文)」や「4・28ネット物販」をレイバーネットに載せてもらっているが、ただただ、松原ティーチャーへメール送信しているだけで、カタログ写真を添付してもらえるなど人様の手をわずらわせる事が続いている。一方的に貢献してもらっているだけだが、ここでの教訓は、「心苦しい」などのイッチョマエの想いは一人前になってからと棚上げしておいて、超初心者の特権をフル活用し、人様の手をわずらわせ放題・迷惑かけ放題でも、パソコンをいじり続けるのが肝心という事だ(わずらわされる方の人をよく選ばないと怒鳴られるので、要注意)。

 

[6] いかに多くの失敗を繰り返すかが、パソコンと早く仲良くなるうえでの鍵だと思う。免職者のボクは、どんな大失敗をしたってもう首切りされることはないので、安心して失敗を連発できる。これは免職者の特権だ。

 誰もが多少の経験はあると思うが、パソコンが言うことを聞かない時に、「このオタンコナス」等と悪態をついてパソコンに悪者の烙印を押したり(後に烙印をあわてて烙印を消すことが多い)、逆に、自分はなんて不向きな人間なんだろうと自己否定に消沈したり(消沈が深ければ深いだけ、たまに大成功したときの喜びは絶大だ)、または、ウイルスか何かが悪さをしているんじゃないかと第3者のせいにして疑心暗鬼を膨らませたり(後に「ウイルスさん、疑ったりして御免なさい」と謝ることが多い)・・・感情の起伏は激しく、極端から極端へと移り変り、不断に蓄積していくストレスを例外的に味わう歓喜で忘却してしまう・・・こういう、八つぁん熊さんの世界を、皆、多少は体験したのではないだろうか? それとも、ボクだけなのだろうか?

 こういう、とりとめのないといえばとりとめもない話を語り合う場を、超初心者と初心者とは、欲すると思う。これらが既に遠い過去となってしまった熟達者や、またはパソコンに一切縁のない人々は、こんなとりとめのない話には付き合ってはくれない。少なくとも、共感をもって聞くには距離のある所に住んでいる。まるでゲームのように、こんなにもすぐ地獄か天国かの結果を現わし、そして久方ぶりに脳ミソにフル回転を余儀なくさせるパソコン体験、これを語り合う相手は、残念ながらこの世には、超初心者と初心者以外にはたぶんいないのだ。

 ボクの場合は事務所のパソコンだったので、出入りする多くの仲間からチョコチョコ教わることができた。他の人に比べて百倍くらい恵まれていたと思う。また、ティーチャーのなかでも、大先生・普通の先生・初心者先生と多様であることが判るのは数カ月経てからで、超初心者の時には全員が絶対的権威の大先生に見えている。この大先生から初心者先生まで、郵政内外のすべてのティーチャーに、面と向ってお礼を言うのはお互い気恥ずかしくメール送信で述べるのが便利だが、メール送信するのも面倒臭いので、この場を借りてお礼を済ませちゃいたいと思うボクなのであった。

 最後に、インターネットと郵便制度との通信手段としての比較、例えば、安全確実性や公共性、もしくは、熟練解体を進め労基法違反を横行させる郵政職場とインターネット関連労働者との労働条件の違い等々、深く鋭く分析しようと思っていたが(?)、このとりとめのない超初心者体験原稿に時間を取られて(?)、果たせなかったことを残念に(?)思う。

2001年8月 名古屋哲一(4・28免職者)

郵政九州労組・郵政近畿労組大阪北「機関紙8月末号」掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:41:16 / Last modified on 2005-09-29 06:44:54 Copyright: Default

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