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郵政首切り25年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 切り捨てられるのは冥王星だけではない

 「スイキン地カモクドッテンカイメイ」。8月24日、太陽系惑星が76年ぶりに9個から8個に減った。国際天文学連合が「古代ギリシャ以来数千年ぶりに惑星という言葉を定義」したからだ。遊星とも迷星とも呼ばれ親しまれてきたのは土星までらしく(天王星以遠は望遠鏡や万有引力の計算などで見つかった)、それらの「惑星」は果たして「惑う星」なのか「惑わせる星」なのか、みたいなことはさておいて、とにかく冥王星は「新分類の矮惑星(仮称)に決定!」ということにあいなった。

 ボクを含む世界人口60数億人のたぶん99%にとっては「辺境の星が如何に扱われようとどうってことない」であるだろう。だけれども、この一週間前の報道では「新定義によって惑星は9個から12個に、将来は数十個に増えそうだ」となっていたのだから、8個に限定されたことはめでたいことだった。

 何故めでたいかというと、情緒的でも科学的でもなく不純な2つの動機からなのだが、「12個も覚えるのはイヤだ、数十個なんて絶対に覚えられない」からだった・・・もっとも覚えなかったからといって「どうってことない」のではあるが。それと、「またもや米合衆国の大国ゴリ押しが通ってしまうのか」という悔しさを味わう事なくすんだからだった。米国人が発見した唯一の冥王星を「惑星」として留めておくための新定義により、惑星の数が増えるなんてイヤだったからだ。

冥王星の「格下げ」により占星術の業界は大騒ぎとのことだ。これは占星術がいかにデタラメかを示している。だが他方、占いのごときモノを批判すべき科学者の業界も、科学的見地からではなく政治力によって12個なのか8個なのかとスッタモンダしたわけで、でかいツラはできない。宇宙のロマンにそぐわない地上の醜い争い。

 ついでに言うと「冥王星は他の惑星とは違って、月よりも小さく、氷で出来ていて、公転軌道面も傾いていて、周辺に小天体が千個以上も90年代以降に観測され、軌道上に同程度の大きさの天体もある」滅茶苦茶な星だということを初めて知ったのだが、知らなかったからといって「どうってことない」のでもあった。

*       *       *

 遊星関連の辺境の天体は「どうってことない」のではあるが、郵政関連の「辺境の地」切捨ては「どうってことある」のだった。民営化マッシグラ郵政当局による過疎地の更なる過疎化・悪辣非道については、改めて論ずる気も起きないほどだが、ボクを含む日本人口1億3千万人のたぶん99%にとっては、これらの地域が日常普段の意識からすっぽり抜け落ちて「辺境の地」化されていることは大きな問題だ。

 全国4696の集配郵便局中1048局で集配・簡保・郵貯の外務業務を廃止、窓口サービスも土・日と時間外を廃止。この過疎地をターゲットとした郵便局再編計画が6月末に発表されて以降、各地で自治体反対決議などがあげられている。儲けにならない過疎地、しかし所によっては既に鉄道も銀行も農協も早々と撤退し、郵便局で働く人々が地域の手となり足となり耳となりネットワークを支えているこのような地域でこそ、郵政事業の公共性が都会の何十倍もの必要性を有しているのに。

 東京では5局、西多摩郡檜原村、伊豆諸島の利島、御蔵島、青ヶ島、68年返還の小笠原島がターゲット。東京で生まれ育ったボクだが、恥ずかしながらこれらの地名のほとんどは、学校の教科書にも新聞記事にも会話の中にもほぼ完璧に出てきたことはなく、気にとめることはなかった。そのように意識構造が形成されている。

 「東京区分地図(昭文社)」を開いてみる。山間の檜原村は、山手線内(4区〜8区)よりも広いのに半ページだけだ。ちなみに山手線内の小さな一つの区=千代田区は、江戸城が真ん中に4分の1以上も占めているのに3ページも使い、且つ「生意気」なことに霞ヶ関周辺だの丸の内周辺だのといった6つの詳細図(各2〜3ページ)にも顔を出している。

 伊豆諸島と小笠原群島は、何と、ゼロページだ。小笠原群島の南部にある硫黄島(「玉砕を強いられた島」)は都心から1250キロも離れており、この海域を入れた面積は、沖縄など台湾に達する南西諸島に近い広大さなのに、「どうってことない」とすっぽりと抜け落とされていた。岩礁や丘や湾の位置と名前、それらは利潤至上社会では「丸ビル」「帝国ホテル」記載と較べ「どうってことない」ものなのだろうか?

名古屋哲一(郵政4・28免職者)

「郵政ユニオン九州地本機関紙」及び「大阪・吹田千里支部機関紙」にも掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


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