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Document 20110502takasi
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第13回・避難所のなかのコミュニティー

●さ お り◎ オッチャン、4月の末に、新宿の歌舞伎町で、駆け込み寺みたいな避難小屋がつくら れたってテレビのニュースをみたけど、犯罪防止のために、地元の商店街のオジサンたちがつくった って。オジサンたちが、歌舞伎町を「秩序ある歓楽街」にしようと、大勢で街をねり歩いている映像 も映されていたけど、なんか「自警団」みたいで、ゾーッとしちゃった。

★オッチャン◇ へー、「秩序ある歓楽街づくり」とはおかしいね。歓楽街へ行くのは、猥雑としたコ ミュニティーと接したいからなのに。歌舞伎町だからなおおかしい。「歌舞伎」は〈常軌をはずれ る〉という意味の動詞「かぶく」が名詞化した言葉なんだ。だから江戸時代に、ある種の歌舞伎は風 俗取締りの対象となり弾圧された。それはそうと、歌舞伎町のすぐ隣にはコリアンタウンが広がって いて、日韓民衆の新しいコミュニティーがつくられつつあるよね。そこへも「秩序」が押し付けられ たら、韓流ファンならずとも面白くないね。

●さ お り◎ わたしもそのコリアンタウンにはときどき行くよ。若い子や、中年のオバチャンたち が、楽しそうに食事や買い物をしていて、とてもいい雰囲気よ。だから気になってネットで調べてみ たの。そしたら政府は、2005年6月に「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」というのをつくっ て、札幌のススキノや福岡の中洲などの歓楽街再生に向けた取りくみを進めているんだって。それも 、「新宿の歌舞伎町は、全国に先駆けて官民一体となった環境浄化作戦に乗り出しており、モデルケ ースにと期待されている」ってことまで書いてあって驚いちゃった。

★オッチャン◇ うん、震災にかこつけた「自粛」が功を奏する地盤は、だいぶ前から着々とつくられ てるんだね……。それで思いだしたけど、福島第一原発のすぐ南西にある富岡町の住人へのアンケー ト調査があってね。放射線汚染をさけて50キロほど離れた三春町の避難所で暮らしている富岡町の人 たちに「仮設住宅ができたら申し込みますか」という質問に25%の人が「申し込まない」と答えたそ うだ。また、そのうちの31%の人が「いまのまま避難所にいたい」といっている。このアンケートの 結果について三春町の55歳の住職がこんな感想を述べている。「〈大勢いっしょではつらいに違いな い〉というのは、都市生活者の思い込みです。同じ不安をもつ人たちといっしょにいたいということ に加え、一カ月のあいだに新たなコミュニティーができたともいえます。あまり社交的でなかった若 者が驚くほど人と話すようになり……」とね。ということは、政府や自治体のお仕着せの仮設住宅で は、コミュニティーは生まれないということなんじゃないかな。

●さ お り◎ それ、おもしろいね。仮設住宅の建設が遅れている、ということばかりが報道されて いるけれど、こういう被災者の仮設住宅への不安な気持も考えなくては。

★オッチャン◇ 原発事故という最悪の事態がつづくなかで、避難所の人たちのなかに「新たなコミュ ニティー」ができるとは、皮肉といえば皮肉だけれど、思ってもいなかったことだね。この住職は「 復興も住宅も被災者の気持をくみ取り、コミュニティーを生かす形でやらなければなりません」とも いっている。じっさいにはとても困難なことだと思うけれど、ここから始まれば民主的な話し合いに よる「復興」へと向かう可能性があるように思う。これは、東京電力が金をばらまいて、自治体や住 民の口を封じてきたことと対極の成りゆきだからね。

【2011/05/02 通算17回目/転載・引用・援用など、すべて自由】


Created bystaff01. Created on 2011-05-02 11:35:53 / Last modified on 2011-05-02 20:39:06 Copyright: Default

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