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第9回・「ビリー・ホリデイ物語」と「公民権運動」

●さ お り◎ オッチャン、このあいだ講談を聴きにいってきたの。とっても良かったわ。

★オッチャン◇ ふーん、渋い趣味をもってたんだね。

●さ お り◎ 講談といっても社会派講談師で神田香織っていう人の「ビリー・ホリデイ物語」という公演なの。ジャズ・ピアニストのKAZUKO BABAさんとの共演で、ジャズを歌いながら語るの。

★オッチャン◇ へー、そりゃあ面白そうだね。

●さ お り◎ 神田香織は、ビリーの悲劇的な半生を面白おかしく演じていて、かえって黒人差別の残酷さがよく伝わってきたわ。リンチで木に吊るされた黒人を歌った「奇妙な果実」というプロテクトソングを、ピアノをバックに朗読したり、……涙が出ちゃった。神田さんはビリーの「奇妙な果実」を紹介するときに「公民権運動の前の公民権運動」といっていたけれど、「公民権運動」ってどんな運動だったの?

★オッチャン◇ ローザ・パークスという黒人女性が、バスの座席に座っていたら「白人に席をゆずれ」といわれても立たなかったことで逮捕された事件をきっかけに起きたモントゴメリーでのバス・ボイコットから始まった運動で、1955年から1964年の公民権法制定までの10年間の人種差別反対闘争のことをいっているんだ。この運動はね、その後に起きたベトナム反戦運動や学生運動、ウーマンリブ運動の原点といってもいい。もし「公民権運動」がなかったらオバマ大統領も存在しなかったろうね。

●さ お り◎ へえ、すごい運動だったのね。実際の活動はどんものだったの?

★オッチャン◇ 「非暴力直接行動」っていわれていたけれど、人種差別や人種隔離をしている施設やレストランなどでの座り込み、乗車拒否や不買運動などのボイコット、集団行進といった抵抗運動や抗議行動をくり返し起こしていったんだ。一種の大衆ストライキのたたかいなんだ。

●さ お り◎ どんな人たちがやってたの?

★オッチャン◇ 主に南部の貧しい黒人たち。マーチン・ルーサー・キング牧師がリーダーになって、白人のスタッフもいたんだよ。そこが彼の運動家としてのすぐれたところで、白人の参加を拒み暴力に走る傾向にあった「ブラック・パワー運動」とは一線を画していた。キング牧師は「ブラック・パワー」というスローガンは、黒人の「平等」よりも黒人の「支配」を訴えている印象を与えるし、「ホワイト・パワー」への反動であって、失望の叫びであると、これを批判したんだ。キング牧師は、マハトマ・ガンジーの希望と非暴力の運動を公民権運動に採り入れ、白人との統一行動をずっと訴えていたんだよ。

●さ お り◎ 非暴力の運動って長い歴史があるのね。

★オッチャン◇ キング牧師は、1967年の『黒人の進む道』という本で「非暴力もまたパワーであるが、それはパワーの正しい、よい使用方法である。建設的にそれは、黒人ばかりでなく白人も救うことができる」といっている。これが遺作となってしまったが……。「われわれはどこへ行くのか」のなかでキング牧師は、ちかごろ議論が高まっている「ベーシック・インカム(無条件給付の基本所得)」を提案しているんだ。それを実践しようとしたのが1968年の『貧者の行進』というワシントンをめざす行進で、キング牧師を中心に準備されていったんだ。ところが4月4日に南部の街メンフィスで凶弾に斃れた。ベーシック・インカム要求を旗印に、黒人と白人貧困層とが手をつなぐことこそ体制がもっとも恐れるところだったんだね。

●さ お り◎ へえ、キング牧師ってすごかったのね……。ね、こんど神田香織の次の公演「フラガール物語」が5月15日にあるんだけど、オッチャンいっしょに行かない?

【2011/03/06 通算13回目/転載・引用・援用など、すべて自由】


Created bystaff01. Created on 2011-03-07 12:08:49 / Last modified on 2011-03-07 12:12:38 Copyright: Default

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